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再帰代名詞 refleksivo

再帰代名詞 si のはたらき

上の文は、主語の li と 目的語の lin が同一人物か別の人物かはっきりしない。このようなとき lin の代わりに再帰代名詞の sin(自分を)を使うことで同一人物であることをはっきりさせることができる。

つまり、主語が3人称または一般人称 oni の場合、文中で再び主語を指す人称代名詞を使う時は再帰代名詞を使う、ということになる。主語が1人称または2人称の場合は再帰代名詞でなく1人称または2人称の代名詞をそのまま使う。

再帰代名詞は主語を指し示すのだから、

下の文は誤りである。

その他に再帰代名詞の難しい点として、1) 従属節ではその節内の主語を示す、2) 修飾句や動詞句(不定詞句)の中ではその範囲の意味上の主語を示すということがある。

再帰代名詞の注意すべき使用例

Li kaj sia amiko ...

上の見出しはある文の主語であるが、これは間違いで、Li kaj lia amiko と書くのが常識的に言って正しいと思われる。しかし、主語の中で sia や si を使ってはならないと明文化されているわけでもない。Ekercaro に主語の中で "Li kaj lia ..." と使われている例文があるわけでもない。つまり、この規則は暗黙に共有されているルールである。

Li kaj lia amiko 以外にも Li kaj la amiko とか Li kaj ties amiko とも表現できるとしている学習サイトやディスカッションでの投稿を見たことがあるが、個人的にはそれらがより誤解を生じにくいとは思わない。

最初の Li(代名詞)は基本的に文脈照応的に使われるので、これまでの文脈の中に登場した人物を指すのは、ほぼ共有されている常識であろう。

la 〜 は下のように体の一部や家族・親族・持ち物などを指すときにはしばしば、主語についてのそれであることが多い。

しかし、la amiko が必ずしも主語の友人を指すとは限らない。

また、文脈照応的に使われる li と 外界照応的に使われる ties(所有指示詞?/指示形容詞)を並べて、Li kaj ties amiko と表現するのも、やや筋悪だと思う。

Ekercaro に、主語の中で "Li kaj lia" という表現は無いが、

という例文がある。つまり代名詞とその所有格が連続して出てくる場合、2度目に出てくる lia は前方照応(この場合直前の li を指す)と捉えるのが常識的だと思える。

主語が複数形の場合

どこかの記事で、(これを書いた人の説明によると)この文は Ili batis sin mem(彼らはそれぞれに自分自身を殴った)という意味になり、「お互いに殴り合った」という意味にはならない。その意味を表すには、

などとしなければならない、というような記事を読んだ覚えがあるが、Zamenhof の諺に、

というのがある。この場合の sin はあきらかに「互いを」という意味である。

正確に「互いを」と「それぞれに」を区別するには reciproke(相互に)とか unu la alian(一方が他方を)とか respektive(それぞれ)とかが必要だろうが、いつもいつもくっつけるのは面倒くさい。mem を付けてみても、意味がクリアになるようにも思えない。(sin が何を指しているのかはっきりしないのに、それに mem を付ければはっきりするというのは変な理屈だ)。

どの言語でも、再帰代名詞は難しいのだろうと想像する。

従属節

ĉu 節の中の sin はその節の主語 la infanoj を指す。

ke 節の中の sian は ke 節の主語 ŝi つまり(常識的には)Masako を指す。

関係詞節の中の sin は その節の主語 kiu すなわち先行詞の viro を指す。

分詞修飾句

prezentita al li を prezentita al si とすると意味をなさなくなる。この部分は seĝo に係る受動分詞修飾句で、この範囲の意味上の主語は seĝo である。 prezentita al si とすると「椅子に勧められた椅子」という意味になってしまう。「Masao に勧められた椅子」の意味にするためには al li としなければならない。

Masao sidiĝis sur la seĝo prezentita al li. = Masao sidiĝis sur la seĝo, kiu estis prezentita al li.

この例文はアカデミオが推奨する表現である。

常識的に考えて、「男が男の前に立っている」ということは物理的にあり得ないので、「彼女の前に立っている」という意味である。つまり、最初の文の ŝi も次の文の si も主語の ŝi を指している。

アカデミオは文の構造を下のように捉えるよう推奨しているのであろう。

つまり、最初の文の antaŭ ŝi は目的語 viron の叙述語の一部であり(目的語 viron の状態 staranta を補足説明している)。したがって viro から見た第三者を指す。つまり 主語の Ŝi のことである。次の文の antaŭ si は述語動詞 ekvidis に係る adjekto(状況語)だから、ekvidi する人(主語の Ŝi)の言い換えである。

これはいかにも難しく、語順を変えるとか、関係詞節もしくは ke 節を使うとかしないと、すぐに理解できるものではなさそうである。

al sia domo は Petro に係る修飾句ではなく、述語動詞に係って移動先を表す文の要素(述語動詞に係る状況語)である。つまり sia は文全体の主語に代わるもので「Karlo の」という意味である。

amanta sian patron tiel profunde は 分詞修飾句ではなく目的語 Helenon の叙述語(目的格補語)であるが、ami しているのは Heleno だから sian patron は 「Heleno の父を」という意味である。

Mi trovis ŝin amanta sian patron tiel profunde. = Mi trovis ke ŝi estas amanta sian patron tiel profunde.

不定詞句

pentri sin は vidis の内容を説明する不定詞句であり(vidi 〜on 〜i , aŭdi 〜on 〜i などのように知覚を表す動詞とともに使って知覚対象の動きや状態を表す)、この不定詞句の意味上の主語(pentri の行為者)は vidis の目的語の viro である。したがって pentri sin の sin はviro を指す。

Ŝi vidis viron pentri sin. = Ŝi vidis, ke viro pentras sin.

vesti sin pli bele は petis の内容を補足説明する不定詞句であり(peti, ordoni, devigi など他者に影響を及ぼす動詞とともに使って、他者の行為を表す)、petis の対象は patrino なので、この句の意味上の主語つまり vesti(着せる)の行為者は patrino になる。つまり vesti sin の sin は「お母さん」のことである。

La knabino petis la patrinon vesti sin pli bele. = La knabino petis la patrinon, ke ŝi(la patrino) vestu sin(la patrinon) pli bele.

この場合、ŝin は patrino からみた第三者なので、la knabino を指す。

La knabino petis la patrinon vesti ŝin pli bele. = La knabino petis la patrinon, ke ŝi(la patrino) vestu ŝin(la knabinon) pli bele.

注目すべきこととして、他者の行為を表すはずの不定詞であっても、その「他者」が明示されておらず、(それが誰であるかが)重要でない場合、その不定詞にかかる再帰代名詞は文全体の主語を指す(Se la senca subjekto de I-verbo ne ĉeestas en la frazo, kaj se ĝi tute ne estas grava, oni normale lasas al si reprezenti la subjekton de la ĉefverbo)PMEG に説明がある

前の文は「使用人をやらせた」と明記されているので voki の意味上の主語は servisto になる。したがって「王様の医者」は servisto から見た第三者、つまり lian kuraciston となっている。しかし後者は「誰をやらせた」か全く触れていないため「王様の医者を」が sian kuraciston となっている。どちらも王様の医者という意味である。

これに従って文を読んだり作ったりするのはとても難しいと思われる。PMEG もこれは強制的なものではないと書いている(Normale oni do ne konsideras la sencan subjekton de I-verbo, se ĝi ne ĉeestas en la frazo, sed tio ne estas deviga. 普通、不定詞の意味上の主語が明記されていない場合、それについて考慮しないが、これは強制ではない)。実際 Zamenhof の文にも以下のようなものがある。

行為や動作を表す名詞にかかる句

行為や動作を示す名詞とともに再帰代名詞が現れる場合、その行為や動作の主体を判断する必要がある。

al si は fido という行為を表す名詞に係る修飾句であり、fido が誰に対して向けられているかを表している。ŝia fido とあるから、fido する行為の主体は ŝi であり al si とあるから行為の主体に向けられたものである。つまり al si は Heleno のことではなく自分を信頼している「彼女」という意味になる。

Heleno miris lian fidon al si. = Heleno miris ŝian fidon, kiu direktiĝas al si.

al ŝi は helpo に係る修飾句で helpo が誰に対して向けられているかを示している。ŝian helpon とあるから helpo する行為の主体は ŝi で、 al ŝi とあるから ŝi にとって第3者の ŝi に向けられたものである。つまり al ŝi の ŝi は主語の Eva を指す。

Eva ĉiam dankas ŝian helpon al ŝi. = Eva ĉiam dankas ŝian helpon, kiu direktiĝas al ŝi.

de Karlo pri ĉiuj siaj problemoj という前置詞句は plendado に係る修飾句である。plendado の行為者は Karlo である。したがって siaj problemoj の siaj は 「Karlo の」という意味である。

その他の修飾句

faman pro siaj belaj pentraĵoj の siaj は 文の主語 ili を受けているのでなく、この句の範囲内の主語を指し示す。この句は muzeon に係る修飾句であり、したがってこの句内の主語は ili ではなく muzeo である。つまり sia は「彼らの」という意味ではなく「その美術館所有の」という意味である。

Ili vizitis muzeon faman pro siaj belaj pentraĵoj. = Ili vizitis muzeon, kiu estas fama pro siaj belaj pentraĵoj.

kun sia pafilo en la mano は soldaton に係る修飾句(suplemento) であり、sia はこの句の被修飾語を受けている。つまり kun sia pafilo の sia は 「彼女の」ではなく「兵士の」という意味になる。

Ŝi vidis soldaton kun sia pafilo en la mano. = Ŝi vidis soldaton, kiu estas kun sia pafilo en la mano.

apud sia direktilo は direktilisto に係る修飾句(suplemento) であり、sia はこの句の被修飾語を受けている。したがって sia direktilo の sia は「皆の」ではなく「操縦士の」という意味になる。

Ĉiuj dormis, krom la direktilisto apud sia direktilo. = Ĉiuj dormis, krom la direktilisto, kiu estas apud sia direktilo.

kiel や ol が導く節

kiel や ol は従属節を導く接続詞だが、従属節内の暗黙に了解できる語句はしばしば省略される。kiel や ol は接続詞なので、それ以降は句ではなく節である。したがって節の中の主語に再帰代名詞を使うことはできない。

kiel 以下は従属節なので、主語は sia fratino とは言えず ŝia fratino となる。

Ŝi estas tiel saĝa kiel ŝia fratino. = Ŝi estas tiel saĝa, kiel ŝia fratino estas saĝa.

kiel 節の主語は省略されており、主節の主語と同じである。つまり sin mem の sin は 「Heleno 自信を」という意味である。

Heleno amas lin kiel sin mem. = Heleno amas lin, kiel ŝi amas sin mem.

lia frato は ol が導く従属節の主語であるから再帰代名詞は使えない。lia は主節の主語を指していると捉えるのが自然である。

Li estas pli alta ol lia frato. = Li estas pli alta ol lia frato estas (alta).

ol 節の主語は省略されており、主節の主語と同じである。つまり sin mem の sin は 「彼女自身を」という意味であ

Ŝi amas lin pli ol sin mem. = Ŝi amas lin pli ol ŝi amas sin mem.

主語を受けない再帰代名詞

一般的事実を表現する文において、sia が主語の中で使われることがある。

この場合 sia は「固有の」といった形容詞な意味を表し、特定の人に言及する所有代名詞としての意味は失われている。

その他、慣用句や合成語の一部として特定の主語を指し示さないことがある。

参照サイト:(例文をお借りしたものがあります)

http://www.akademio-de-esperanto.org/aktoj/aktoj2/rekomendoj.html#prilarefleksivo
https://bertilow.com/pmeg/gramatiko/pronomoj/si/kompleksaj_frazoj.html
http://plaza.harmonix.ne.jp/~sakat/si2.htm
https://blog.goo.ne.jp/esperakira/e/4da32c63288c7d644e3307fe07b36be9
https://blog.goo.ne.jp/esperakira/e/06691a2bc4369ab8c5c1302e16707798
https://lernu.net/ja/gramatiko/pronomoj


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