5 新ルール案の思想

5.6 セキの地及び一方ダメを得点としないためのルール

冒頭(囲碁ルール試案)に各種ルールの一覧表を示した。その中の日本式IIがセキの地及び一方ダメを得点とならないようにしたものである。

私は勿論セキの地や一方ダメも得点となる日本式I案を推奨するのだが、日本の慣習法ではそれを得点としない立場に立っていた。従ってもしこの立場に立って厳密なルールの成文化を行ったらどの様になるのかを参考のために示したものである。

セキの地も一方ダメもセキに附随するものであり、従ってセキの定義を行わなければならない。ここで終局の状態で一方の連続打着によっても除去できない状態の石を活石と定義し、そうでない石を非活石と定義すれば活石と非活石は終局の状態では完全に定義し得る。この非活石が通常のセキ石の概念と一致する。

セキの地や一方ダメへの打着が得点となるのは仮終局後に行なわれたときであり、しかも終局のときに盤上に存在するものに限られるから、“非活石で仮終局後に打着された石の数を得点より減ずる”というルールの追加によって目的が達せられる。ここで注意すべきは仮終局の状態でセキを定義していないことである。それは通常概念で仮終局のときセキ或は一方ダメでも終局までに変化して活石となることがあり得ることである。

日本式I及びIIを比較すれば明らかな如くセキの地や一方ダメを得点としたくないために追加しなければならないルールの存在が不自然に思われるに違いない。仮終局後に大きな変化をする場合には実際上にも終局のときに非活石のうち仮終局後に打着された石を数えるのも容易でない例があり得る。従って囲碁のルールの美しさという観点からだけでなく実用的にも不便であると云えよう。

更に中国式II及び台湾式ルールと対比しても、この点のために大きく相違を生ずることは、国際的なルール設定のためにも大きな障害となる。従って私は“日本式I”案を提案したいのである。