7 新ルール試案の解説

6.3 手入れ問題例(1)

第6-5-1図の如く黒51で劫をとったとき、黒は劫材が多いからbの点につがずに頑張ることができる。従って黒はa点に手入れが不要ではないかとの問題を生ずる。

第6-5-1図

昭和の初期に本因坊秀哉と久保松勝喜代八段との間に議論が戦わされたことがある。

本因坊秀哉の考え方はbへ劫をツグ必要なく当然aに手入れ不要という考え方であり、その後は秀哉の意見が日本棋院の内規のようになっていたが、先にも述べた呉・岩本問題、呉・高川一手劫問題以後現在の日本棋院の規定では劫材の数は無関係に黒はaとb点に手入れを必要とすることになっている。

従って第6-5-1図は現行日本棋院ルールによれば持碁となり、秀哉の考え方に従えば黒2目勝となる。

台湾ルールによれば第6-5-2図の如くなる。

第6-5-2図

黒51 手止り
白52 パス
黒53 ... 黒55
白56 パス
黒57 パス
終局

黒の得点は 石数28+地14 計42
白の得点は 石数25+地14 計39

となるが、最初のパスを白が行っているので1/2目ルールにより、黒42-1/2、白39+1/2となり黒2目勝となる。

新ルール試案Iによれば第6-5-3図の如くなる。

第6-5-3図

白52 パス
黒53 パス
仮終局
白54 ... 黒57
白58 パス
黒59 パス
終局

白52パス、続いて黒53パスで仮終局。以下着手を継続すれば第6-5-3図となり、結果は黒2目勝となって、台湾式ルールの場合と一致する。またこれは秀哉の裁定とも一致する。

中国式ルールIIでは台湾式の譜と同じとなるが1/2目ルールがないため、黒3目勝となる。