7 新ルール試案の解説

6.9 セキくづれ劫

第6-14-1図は黒からはセキにすることもできるし、場合によっては劫にすることも可能である。従ってもし白にとって消すことのできない劫材が存在する場合すなわちセキや隅の曲四目等が存在する場合には問題を生ずる。

第6-14-1図

更に注意すべきは、第6-14-1図のaは台湾式と新ルール案Iでは、それをセキとする場合は当然黒の1目の得点となることである。慣習法ではセキの地は得点としないから、それとは1目の差を生ずる。

第6-14-2図の如く、第6-14-1図の形と隅の曲四目が共存するときは、勿論白は隅の曲四目を打着によって解決しなければならず、しかも左下の黒からの劫材を消せないので、振変りとなる事がある。又左下を黒から劫をしかける場合もある。第6-14-3図の如く、この場合は白から消すことのできない劫材がある場合には、黒から劫にする可能性も残されている。従ってこの様な場合は当然打着によって解決しなければならないが、これが慣習法の終局後に生ずることがあり得るので問題となる。

第6-14-2図

第6-14-2図

日本棋院の改正案では、終局後打着を進めて解決した後、その終局としたところにまで戻すとしてある。終局後に大きな振変りがあって勝敗が決まるのに、それを確認して終局のところまで戻すのもまったく不自然である上に、又戻さないものとするならば、終局としたところが、終局ではないことを示していることになり、いずれにしてもルールとしてはまったく不自然というべきで、囲碁のルールとしての簡素な美しさと合理性を失うものとして全く賛成し得ないものというべきである。

第6-14-4図を打着による解決で示そう。

第6-14-4図(47-48)

第6-14-5図(49-54)

49パス 50パス(仮終局)
52またはパス(P)
53パス 54パス(終局)

第6-14-4図は慣習法では左下は黒がセキとすれば、ジゴである。しかし新ルール案Iでは黒1目勝となる(1-七の点が黒の得点となることを示している)。

台湾式でも同様黒1目勝となることをたしかめられたい。