日本囲碁規約
1989(平成元)年4月10日制定


目次

日本囲碁規約・目次

 日本棋院理事長 朝田静夫 関西棋院理事長 橋本宇太郎 … 4
 前文 囲碁規約改定委員会委員長    吉国一郎 ………………… 6
I 日本囲碁規約(全文) ………………………………………………… 11
II 日本囲碁規約逐条解説 ………………………………………………… 16
   第一条(対局) …………… 16  第八条(地) ……………… 30
   第二条(着手) …………… 17  第九条(終局) …………… 31
   第三条(着点) …………… 18  第十条(勝敗の決定) …… 33
   第四条(石の存在) ……… 20  第十一条(投了) ………… 36
   第五条(取り) …………… 21  第十二条(無勝負) ……… 36
   第六条(劫) ……………… 23  第十三条(両負け) ……… 37
   第七条(死活) …………… 24  第十四条(反則負け) …… 38
III 死活確認例 ……………………………………………………………… 39
IV 日本囲碁規約改定の概要 ……………………………………………… 52





財団法人日本棋院 理事長 朝田 静夫
財団法人関西棋院 理事長 橋本宇太郎

 平成元年の四月に四十年振りに日本囲碁規約の大改定が実現されたことは誠に意義深く、関係者の一人としてご同慶の至りであります。

 昨年は国際化元年と云われた位、囲碁の国際化が急進展した年で、世界囲碁選手権戦・富士通杯、IBM早碁オープン戦、日中囲碁名人戦、同天元戦等、新しい国際棋戦が始まった他、世界アマチュア囲碁選手権戦も第十回目を迎え、参加国も三十六ヶ国の多きに達しました。

 終戦後間もない昭和二十四年十月に、時の日本棋院理事長津島寿一氏と元副総裁の大倉喜七郎氏の両先輩が、世界に囲碁を普及するには、囲碁規約の設定が是非必要との認識に立ち、戦後日本棋院復興の記念として囲碁規約制定委員会(委員長下村宏氏)を設け、日本で初めての成分法を完成されました。

 爾来四十年両先輩の先見性は見事に実証されたわけですが、国際試合の急激な増加と共に日本囲碁規約の合理化、理論的明確化の要請が関係者の間で強く呼ばれるようになりました。

 この時期に、両院にとって誠に幸いであったのは、日本棋院相談役、関西棋院名誉顧問に吉国一郎元法制局長官がおられたことです。

 両院の懇請で囲碁規約改定委員会の委員長を快くお引き受けいただき、大変な難事業を二年間に亘り十四回の委員会を主宰され、見事に纒めあげられたことに対し、深甚な敬意と謝意を表する次第です。

 この新日本囲碁規約を両院棋士が遵守し、国の内外に普及すべきことは論を俟ちませんが、広く囲碁界のご理解を得て一般にも採用されることを期待してやみません。同時に国際囲碁連盟ルール委員会が国際ルールの統一を推進していく上で、この合理的な新規約が大きな役割を果たすことを信ずるものであります。

  平成元年 四月



前文



前文

    日本囲碁規約改定の経過について

囲碁規約改定委員会 委員長 吉国 一郎

 現行の日本囲碁ルールは、私も参画して制定された昭和二十四年十月の日本棋院囲碁規約に基づいて運用実施されているが、同規約によって決定できない死活等については、日本棋院判例により、また判例のないものについては、日本棋院、関西棋院審査会の審査を経て、それぞれ判定することになっている。

 しかし乍ら、現行日本ルールが徳川時代以来の慣習として認められてきたものを成文化した為、理論面での明確性が必ずしも充分と云えない処から、しばしばトラブルが発生しているのが現状である。

 特に最近の囲碁の国際化と共に国際試合が急増している事から、合理性を追求する欧米囲碁愛好家の納得性が得られるルールの確立が急務となってきたこと、及び地とハマを中心とする日本ルールと石の生存権を基本とした盤上の石数と地の和で勝敗を決する中国ルールや台湾ルール等との統一の問題も発生してきている。

 以上の背景から囲碁規約改定準備委員会が昭和六二年一月設置された。改定試案作成の基本方針として、(1)日本の伝統的な対局方法を遵守する。(2)日本ルールに潜在的に含まれている合理性の理論化と明確化。(3)世界に通用する囲碁ルールの追求。(4)新たに今までの対局方法での有力な改定意見があれば別案として作成する。ただし、基本は日本の囲碁方法の範囲とすることが定められた。

 準備委員会は幹事の酒井猛九段の試案をタタキ台として六回の討議の末、改定試案を六二年三月二十六日完成した。本試案は六二年四月から五月にかけて、東京、関西、中部の棋士総会に諮られた結果、改定委員会を設置して、更に精緻化、合理性を徹底した委員会案を作成することになった。

 囲碁規約改定委員会は、六十三年一月から八回討議を重ね、平成元年二月二十一日委員会最終案(本案)を纒めた。本案は途中段階で六十三年四月、六月、平成元年三月の三回、東京、関西、中部の各棋士総会で検討が加えられた他、六十三年五月十八日国際囲碁連盟ルール委員会に日本案として参考提案され、欧米の好評を博した。

 本案は平成元年三月十日の理事会に上程可決された後、四月四日の評議委員会に於て最終的に決議された。関西棋院に於ても、同様の経過を経て三月二十八日の棋士総会で採択を決定した。

 以上の事からお分かり頂けるように、今回の日本囲碁規約の改定は、もっぱら日本囲碁のルール面の合理性を確立、明確化する為の改定で、中国ルール、台湾ルール等との統一は国際囲碁連盟ルール委員会に任せたものと云える。

 又今回の改定は、現行日本棋院囲碁規約七十条、付属規定十条、四判例の内、ルールに関する規定の改定と、重要な囲碁用語の定義に絞り込み、マナー規定、用具、手合割(含む込碁)、競技実行方法(含む競技時間)等は他の規定などで定めることとした。

 新ルールは、日本の囲碁の特色である感性の豊かさをいささかも損なうことなく、合理性の追求と個別、例外規定を排した普遍的かつ簡素な条文から成る品位の高い規約であると自負している。また、一般囲碁愛好家にとってもルールの理解が容易であり、従来ともすれば生じたトラブルの余地も解消し、今まで通りの手法で囲碁を楽しむことができるものと信じる次第である。

 いずれにせよ、永い歴史と伝統を有する日本の囲碁が、今回の改定でその合理性が確立された事は囲碁ファンの一人として誠に喜ばしい限りであるが、知能的競技として芸術的価値の極めて高い文化資産を、世界に又未来永劫に伝える為、このルールと共に、礼儀、品位が遵守され、良識と相互信頼の元に対局するという日本囲碁の精神が広く囲碁界に普及されることを切望してやまない。

 最後に起草者の酒井九段始め各委員(末尾記載)及び日本棋院、関西棋院の棋士各位並びに関係者一同のご努力ご協力に対し深甚の謝意を表して私の前書きとする。


  〈囲碁規約改定委員会名簿〉

 委員長 吉国一郎

 委員(日本棋院)加納嘉徳九段 工藤紀夫九段 酒井猛九段(幹事)
         大枝雄介八段 西条雅孝八段 藤田梧郎六段
         信田成仁五段 畠秀史五段

 委員(関西棋院)宮本直毅九段  (事務局 最勝時哲也 早川文康)

 平成元年 四月



全文



 I 日本囲碁規約(全文)

平成元年四月十日
財団法人 日本棋院
財団法人 関西棋院
(平成元年五月十五日実施)

 財団法人日本棋院及び財団法人関西棋院は、昭和二十四年十月に制定した日本棋院囲碁規約を改定することとし、ここに日本囲碁規約を制定する。この規約は対局者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならない。


第一条
(対局)

 囲碁は、「地」の多少を争うことを目的として、競技開始から第九条の「対局の停止」、までの間、両者の技芸を盤上で競うものであり、「終局」までの間着手することを「対局」という。


第二条
(着手)

 対局する両者は、一方が黒石を相手方が白石をもって相互に一つずつ着手することができる。


第三条
(着点)

 盤上は、縦横一九路、その交点三百六十一であり、石は、第四条に合致して盤上に存在できる限り、交点のうちの空いている点(以下「空点」という)のすべてに着手できる。着手した点を「着点」という。


第四条
(石の存在)

 着手の完了後、一方の石は、その路上に隣接して空点を有する限り、盤上のその着点に存在するものとし、そのような空点のない石は、盤上に存在することができない。


第五条
(取り)

 一方の着手により、相手方の石が前条に基づき盤上に存在することができなくなった場合は、相手方のその石のすべてを取り上げるものとし、これを「ハマ」という。この場合、石を取り上げた時点をもって着手の完了とする。


第六条
(劫)

 交互に相手方の石一個を取り返し得る形を「劫」という。劫を取られた方は、次の着手でその劫を取り返すことはできない。


第七条
(死活)

 1、相手方の着手により取られない石、又は取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石は「活き石」という。活き石以外の石は「死に石」という。
 2、第九条の「対局の停止」後での死活確認の際における同一の劫での取り返しは、行うことができない。ただし、劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は、新たにその劫を取ることができる。


第八条
(地)

 一方のみの活き石で囲んだ空点を「目」といい、目以外の空点を「駄目」という。駄目を有する活き石を「セキ石」といい、セキ石以外の活き石の目を「地」という。地の一点を「一目」という。


第九条
(終局)

 1、一方が着手を放棄し、次いで相手方も放棄した時点で「対局の停止」となる。

 2、対局の停止後、双方が石の死活及び地を確認し、合意することにより対局は終了する。これを「終局」という。

 3、対局の停止後、一方が対局の再開を要請した場合は、相手方は先着する権利を有し、これに応じなければならない。


第十条
(勝敗の
決定)

 1、終局の合意の後、地の中の相手方の死に石はそのまま取り上げ、ハマに加える。
 2、ハマをもって相手方の地を埋め、双方の地の目数を比較して、その多い方を勝ちとする。同数の場合は引き分けとし、これを「持碁」という。
 3、勝敗に関し、一方が異議を唱えた場合は、双方は対局の再現等により、勝敗を再確認しなければならない。
 4、双方が勝敗を確認した後にあっては、いかなることがあっても、この勝敗を変えることはできない。


第十一条
(投了)

 対局の途中でも、自らの負けを申し出て対局を終えることができる。これを「投了」という。その相手方を「中押勝」という。


第十二条
(無勝負)

 対局中に同一局面反復の状態を生じた場合において、双方が同意した時は無勝負とする。


第十三条
(両負け)

 1、第九条の対局停止後、対局者が有効な着手を発見し、その着手が勝敗にかかわるため終局に合意できない場合には両負けとする。
 2、対局中に盤上の石が移動し、かつ対局が進行した場合は、移動した石を元の着点に戻して続行する。この場合において対局者が合意できない場合は、両負けとする。


第十四条
(反則負け)

 一方が以上の規則に反した場合は、双方が勝敗を確認する前であれば、その時点で負けとなる。



*日本囲碁規約逐条解説については、次ページをご覧ください。


日本囲碁規約



日本囲碁規約逐条解説
1989(平成元)年4月10日


 II 日本囲碁規約(ルール)逐条解説

財団法人日本棋院
財団法人関西棋院

財団法人日本棋院及び財団法人関西棋院は、昭和二十四年十月に制定した日本棋院囲碁規約を改定することとし、ここに日本囲碁規約を制定する。この規約は対局者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならない。



第一条



第一条(対局)
囲碁は、「地」の多少を争うことを目的として、競技開始から第九条の「対局の停止」までの間、両者の技芸を盤上で競うものであり、「終局」までの間着手することを「対局」という。

〈解説〉
 対局の範囲は、対局の再開をしないかぎり、対局者双方が続いて着手放棄(通称パス)した「対局の停止」までである。(詳しくは、第二、九、十条参照)



第二条



第二条(着手)
対局する両者は、一方が黒石を相手方が白石をもって交互に一つずつ着手することができる。

〈解説〉
 1 交互着手は権利である。
 2 着手放棄(パス)は、放棄者の対局停止宣言であり、続いて相手方もパスした場合は「対局の停止」となり、次の着手を行うことはできない。(第九条1項参照)



第三条



第三条(着点)
盤上は、縦横十九路、その交点三百六十一であり、石は第四条に合致して盤上に存在できる限り、交点のうちの空いている点(以下「空点」という)のすべてに着手できる。着手した点を「着点」という。

〈解説〉
1 盤上
 専門棋士間のルールなので十九路盤とした。初心者間等の九路盤ほか、あるいは将来二十一路盤等を対局者間で合意の上使用することはもちろん可能である。
2 交点、空点、着点
 参考図1の①と置けるような点を「交点」といい、三百六十一ある。  石の置かれていない交点を「空点」といい、①のように石が置かれた交点を「着点」という。


      横路
縦    1 2 3 4 5 6 7 8 910111213141516171819
路  1┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
   2├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤参
   3├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤考
   4├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼①┼┼┤図
   5├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤1
   6├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
   7├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
   8├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
   9├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  10├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  11├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  12├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  13├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  14├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  15├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  16├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  17├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  18├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
  19└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

3 第四条に合致しないため、着手できない空点
 着手することにより、隣接する空点のない自らの石を生じ、結果として存在できなくなるような着手はできない。
 参考図2 黒は×の点に着手できない。
 (注) 黒はAに着手しても空点を有することになるので、この場合は着手可能である。

┌┬┬┬┬┬┬  ×●○┬┬┬○×●○┬┬○×○┬┬○×
├┼┼┼┼┼┼  ●○┼┼┼┼┼○○┼┼┼┼○┼┼┼┼○
├┼┼┼┼┼┼注 ○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤参
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤考
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤図
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤2
●●●●┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼●┼┼  ├┼┼┼○┼┼┼┼┼┼○○○┼┼┼┼┤
├●○○●┼┼  ├┼┼○×○┼┼┼┼○●×●○┼┼┼┤
●┼●○●┼┼  ├┼┼┼○┼┼┼┼┼┼○○○┼┼┼┼┤
○●○○●┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼●┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●●┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼○●○┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼○●×●○┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼○●○┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴  └┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘



第四条



第四条(石の存在)
着手の完了後一方の石は、その路上に隣接して空点を有する限り、盤上のその着点に存在するものとし、そのような空点のない石は、盤上に存在することができない

〈解説〉
 盤上に存在できない石


 参考図3の白石(注:白石は○、黒石は●)は、隣接した路上に空点がないので、盤上に存在できない。

○○●┬┬┬●○○●┬┬●○●┬┬●○
○●┼┼┼┼┼●●┼┼┼┼●┼┼┼┼●
●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤参
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤考
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤図
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤3
●●┼┼┼┼┼●●┼┼┼┼┼●┼┼┼┤
○○●┼┼┼●○○●┼┼┼●○●┼┼┤
○○●┼┼┼┼●●┼┼┼┼┼●┼┼┼┤
●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┤
├┼┼┼┼●○●┼┼┼┼┼●○●┼┼┤
├┼┼┼●○○○●┼┼┼┼●○●┼┼┤
├┼┼┼┼●○○●┼┼┼┼●○●┼┼┤
├┼┼┼┼┼●●┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘



第五条



第五条(取り)
一方の着手により、相手方の石が前条に基づき盤上に存在することができなくなった場合は、相手方のその石のすべてを取り上げるものとし、これを「ハマ」という。この場合石を取り上げた時点をもって着手の完了とする。

〈解説〉
 取り上げられる石
参考図4 〈1〉〜〈5〉の黒1により、白石はその路上に隣接した空点がなくなるので盤上に存在できず、黒は白石のすべてを取りあげねばならない。取り上げた時点で着手完了となる。


(参考図4)

┌┬┬┬┬┬〈1〉  ○1┬┬┬┬〈2〉  ┌┬●○1┬〈3〉
├┼┼┼┼┼     ●┼┼┼┼┼     ├┼┼●┼┼
├┼┼●┼┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼●○1┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼┼●┼┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
┌┬┬┬┬┬〈4〉  ┌●○○1┬〈5〉  1△●┬┬┬〈6〉
├┼┼┼┼┼     ├●○●┼┼     △●┼┼┼┼
├┼┼●┼┼     ├┼●┼┼┼     ●┼┼┼┼┼
├┼●○●┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼●○●┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼┼1┼┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼
┌┬┬┬┬┬┬┬┬〈7〉  ┌○1△●●●┬┬┬┬〈8〉
├┼┼┼┼┼┼┼┼     ├○●△△△△●○┼┼
├┼┼○●●○┼┼     ├○○●●●●○┼┼┼
├┼┼●△△●┼┼     ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼●△1△●┼┼     ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼●△△△●┼┼     ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼●●●●┼┼┼     ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼     ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
(注)  〈6〉〜〈8〉 △を取り上げた時点で着手が完了し、空点が生じるので、第四条により黒1の着手は可能である。



第六条



第六条(劫)
交互に相手方の石一個を取り返し得る形を「劫」という。劫を取られた方は、次の着手でその劫を取り返すことはできない。

〈解説〉
 1 交互に相手方の石一個を取り返し得る形

 参考図5〈1〉 黒1で白△を取ることができるが、白もまた黒1を取り返し得る形である。

2 次の着手で取り返すことができない
 参考図5 〈2〉 前図黒1の後、白は一回以上他の箇所に着手した後でなければ4の点に打って黒を取り返すことはできない。
 この目的のための、他の箇所への着手を「劫立て」という。
 3 「劫立て」をしないで、次の着手で取り返すと第十四条の反則負けとなる。

 参考図5〈1〉   参考図5〈2〉
1△●┬┬┬┬┬  ●4●┬┬┬┬┬
○●●┼┼┼┼┼  ○●●┼┼┼┼┼
├○┼┼┼┼┼┼  ├○┼┼┼┼┼┼ 白2、黒3他の箇所
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼●○┼┼  ├┼┼┼●○┼┼
├┼┼●△1○┼  ├┼┼●4●○┼
├┼┼┼●○┼┼  ├┼┼┼●○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
○○┼┼┼┼┼┼  ○○┼┼┼┼┼┼
1○┼┼┼┼┼┼  ●○┼┼┼┼┼┼
△●┼┼┼┼┼┼  4●┼┼┼┼┼┼
●●┼┼┼┼┼┼  ●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
└┴┴┴┴┴┴┴  └┴┴┴┴┴┴┴



第七条



第七条(死活)
 1 相手方の着手により取られない石、又は取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石は「活き石」という。活き石以外の石は「死に石」という。

〈解説〉
 1 相手方の着手により取られない「活き石」

 参考図6 〈1〉〜〈4〉までのすべての黒白の石は「活き石」

 (参考図6)
   〈1〉          〈2〉
○●┬●┬●○┬┬┬  ┌┬┬┬●○┬┬┬┬
○●●●●●○┼┼┼  ●●●●●○┼┼┼┼
○○○○○○○┼┼┼  ○○○○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

   〈3〉          〈4〉
┌┬●┬●○○┬┬┬  ┌○○○┬●○┬┬┬
├●○●●●○○┼┼  ●●●●●●○┼┼┼
●○○○○●●○┼┼  ○○○○○○○┼┼┼
├●○┼○●●○┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●○┼○●○┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
○●●○○○●○┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
○○●●●●●○┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├○○○○○○┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼


2 取られても、新たに相手方に取られない石を生じうる「活き石」
 参考図7〈1〉〜〈3〉の黒一子、二子、一子は、白の着手により取られるが、それにより次の着手で白石を取ることができ、新たに白に取られない石を生じうるので「活き石」。「打って返し」の例。


3 「死に石」
 参考図7 〈1〉〜〈3〉の白二子、一子、四子は、すべて「死に石」。

 (参考図7)
 〈1〉     〈2〉      〈3〉
┌●○○┬┬  ●●○○┬┬┬  ┌┬┬┬┬┬┬┬┬
○○●○┼┼  ○┼●○┼┼┼  ├┼●●●●○┼┼
●●●┼┼┼  ●●●┼┼┼┼  ├●○○┼●○┼┼
├┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├●○○●○┼┼┼
├┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├●●●○○┼┼┼
├┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼


 参考図8 〈1〉〜〈3〉の黒石のすべては「死に石」。

 (参考図8)
 〈1〉        〈2〉
┌○○┬●○┬┬┬┬┬●┬●┬●○┬
●○○●●○┼┼┼┼○○●●●●○┼
●●●●○○┼┼┼┼┼┼○○○○○┼
○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├○●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├○●┼●○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├○●●┼●┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├○┼○●●┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼○┼┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
  〈3〉



第七条−2



第七条−2 第九条の「対局の停止」後での、死活確認の際における同一の劫での取り返しは、行うことができない。ただし劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は、新たにその劫を取ることができる。

〈解説〉
 劫がらみの石の死活規定である。

 1 同一の劫での取り返しはできない。
 対局の停止とともに、劫の取り返しは停止となり、たとえ「両劫ゼキ」など無限の劫立てがあっても、それを利用して劫を取り返すことはできない。

参考図9〈1〉 本劫の手入れ
 (1) 黒は劫立てが多いためAへ手入れせず、このままで終局を主張した場合どうかという問題である。
 (2) 結論はこのままで終局となれば、黒・白ともに「死に石」である。(詳しくは死活例9、44頁参照)

●○A●○┬┬
├●●●○┼┼(参考図9)
●●○○○┼┼  〈1〉
○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼

 (3) 〈2〉の白一子は黒にAに打たれれば取られるから「死に石」であることは明らかであるが、黒七子が「死に石」である理由は〈2〉〈3〉の白1〜3による。

●○A●○┬┬  ┌○③●○┬┬
①●●●○┼┼  ○●●●○┼┼
●●○○○┼┼  ●●○○○┼┼ 
○○○┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼ 
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼ 
 〈2〉      〈3〉
黒2パス(同一の劫での取り返しはできない)

2 着手放棄後は新たに劫が取れる
 劫を取られても、着手放棄(通称パス)を行った後は、対局の再現と同じになり、新たな劫取りとして可能となる。

参考図10〈1〉 一手ヨセ劫
 (1) 黒がAに手入れをせずに終局できるか否かの問題である。
 (2) 結論は、白が実戦で劫争いをしないかぎり、このままで終局となれば、白一子は「死に石」、黒八子は「活き石」で、黒はAの手入れ不要である。

(参考図10)〈1〉
●○A┬●○┬┬
├●●●●○┼┼
●●○○○○┼┼
○○○┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

 (3) 黒八子が「活き石」である理由は、〈2〉〜〈4〉の白1以下黒6による。黒4の劫取りは、黒2のパス後なので可。

 〈2〉      〈3〉(2パス)   〈4〉(5パス)
●○┬┬●○┬┬  4○③┬●○┬┬  ●○○6●○┬┬
①●●●●○┼┼  ○●●●●○┼┼  ├●●●●○┼┼
●●○○○○┼┼  ●●○○○○┼┼  ●●○○○○┼┼
○○○┼┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼


3 取り返す劫のそれぞれにつき、着手放棄が必要
 取り返しとなる劫が二個以上ある場合は、どの劫で着手するのか指定しなければならない。

参考図11〈1〉 「一手ヨセ劫」と「両劫ゼキ」の併存
 (1)上隅、下隅の形が盤上に併存した場合、上隅の「一手ヨセ劫」のAに黒は手入れをせずに終局できるか否かの問題である。
 (2)結論はこのまま終局になれば、たとえ下隅の「両劫ゼキ」があっても、上隅の白1子は「死に石」で、黒八子は「活き石」であり、下隅は「両劫ゼキ」に変わりなく、したがって黒はAに手入れする必要はない。


(参考図11)〈1〉
●○A┬●○┬┬┬
├●●●●○┼┼┼
●●○○○○┼┼┼
○○○┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●●●┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼
●○┼○●┼┼┼┼
├●○○●●┼┼┼
●●●○○●┼┼┼
└●○┴○●┴┴┴


 (3)その理由は〈2〉〜〈4〉の白1から黒12による。〈3〉の黒4の新たな劫取りは、すでに黒2で同一の劫での着手放棄後なので可能。

〈2〉        〈3〉(2上隅パス)    〈4〉(7上隅パス)
●○┬┬●○┬┬┬      4○③┬●○┬┬┬       ●○○8●○┬┬┬
①●●●●○┼┼┼      ○●●●●○┼┼┼       ├●●●●○┼┼┼
●●○○○○┼┼┼      ●●○○○○┼┼┼       ●●○○○○┼┼┼
○○○┼┼┼┼┼┼      ○○○┼┼┼┼┼┼       ○○○┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼      ├┼┼┼┼┼┼┼┼       ├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼      ├┼┼┼┼┼┼┼┼       ├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼      ├┼┼┼┼┼┼┼┼       ├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼      ├┼┼┼┼┼┼┼┼       ├┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●●●┼┼┼┼      ●●●●●┼┼┼┼       ●●●●●┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼      ○○○○●┼┼┼┼       ○○○○●┼┼┼┼
●○┼○●┼┼┼┼      ●○┼○●┼┼┼┼       12○┼○●┼┼┼┼
├●○○●●┼┼┼      ⑤●○○●●┼┼┼       ○●○○●●┼┼┼
●●●○○●┼┼┼      ●●●○○●┼┼┼       ●●●○○●┼┼┼
└●○┴○●┴┴┴      └●○6○●┴┴┴       └●⑪●○●┴┴┴
                        (9下隅パス 10下隅パス)



第八条



第八条(地)
一方のみの活き石で囲んだ空点を「目」といい、目以外の空点を「駄目」という。駄目を有する活き石を「セキ石」といい、セキ石以外の活き石の目を「地」という。地の一点を「一目」という。

〈解説〉
 「地」の基本的な考えは、“完全に独立した活き石の目が地であり、駄目を有することによって活き石となるセキ石は独立した活き石でないから、その目は地にならない”ということである。


1 目と地
 参考図12 a〜dは目であり、黒の独立した活き石の中の目なので地である。

 (参考図12)
abcd●○┬┬
●●●●●○┼┼
○○○○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

2 セキ石と駄目
 参考図13 aは駄目。黒十二子と白五子は駄目を有する活き石なので地でセキ石。  ×はセキ石の中の目なので地にならない。

 (参考図13)
○×○●●●○┬
○○○●×●○┼
a●●●●○○┼
●●●○○○┼┼
○○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

両劫ゼキ
 参考図14 a、bは、一方のみの活き石で囲んだ空点でないから駄目。黒六子と白十二子は駄目を有する石なのでセキ石。
(詳しくは死活例25参照)

 (参考図14)
┌●b●○●┬┬
●●●○○●┼┼
○●○┼○●┼┼
a○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

3 「地」の確定のための駄目詰め
 参考図15 このままの状態では、黒白ともに駄目aを有する「活き石」なのでセキ石となってしまい、黒白の目は地にならない。黒白が目を地にするためにはaへの着手が必要。

 (参考図15)
○○●●┬┬●○┬
○●●┼●●●○┼
○○●●○○○○┼
○○a●○┼┼┼┼
├○●●○┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼


第九条−1



第九条−1(終局)
一方が着手を放棄し、次いで相手方も放棄した時点で、「対局の停止」となる。

〈解説〉
 着手の放棄(いわゆるパス)は対局停止宣言であるが、次いで相手方も着手放棄した場合は対局の停止となる。双方が着手放棄の意志表示をした時点が、対局の停止時点である。



第九条−2



第九条−2
対局の停止後、双方が石の死活及び地を確認し、合意することにより対局は終了する。これを「終局」という。

〈解説〉
 1 「駄目詰め」、「手入れ」は必要着手

 石の死活及び地を確認するためには、第八条により終局までに「駄目詰め」及び「手入れ」を行わなければならない。
2 対局停止後での「駄目詰め」、「手入れ」は規定外
 「駄目詰め」及び「手入れ」を、対局者の合意により、対局停止後適宜に行う場合は、それらは規定上の着手に該当しない。



第九条−3



第九条−3
対局の停止後、一方が対局の再開を要請した場合は、相手方は先着する権利を有し、これに応じなければならない。

〈解説〉
 1 “対局の再開の要請”

 対局の停止状態が解除され、競技再開となる。

2 “相手方に先着する権利あり”
 (1) 対局を再開する場合は、停止期間中に規定外の着手があれば、それらを無効として再開することができる。
 (2) 対局再開を要請した相手側から打ちはじめる。
 (3) “これに応じなければならない”
     要請された相手方が着手の必要性を認めない時は、パスで応じて差し支えない。



第十条−1



第十条−1(勝敗の決定)
終局の合意の後、地の中の相手方の死に石はそのまま取り上げハマに加える。

〈解説〉
 地の中の相手方の死に石は第五条の方法で、すべてを囲んでから取り上げる必要はなく、着手せずにそのまま取り上げることができる。

1 終局後そのまま取り上げられる石
 参考図16 白一子は黒の地の中の死に石なので、黒は終局後そのまま白一子を取り上げることができる。

 (参考図16)
┌┬┬┬●○┬┬
├┼┼○●○┼┼
●●●●●○┼┼
○○○○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

2 終局後そのまま取り上げられない石
 参考図17 △の黒二子は「死に石」であるが、白石はセキ石なので中の目は地でなく、したがって終局後でも白は黒二子をそのまま取り上げられない。(注)白は終局までにaに打って黒二子を取りあげ、黒放り込み白はその黒一子を取ることができる。

 (参考図17)
┌●○▲○●┬
●┼○▲○●┼
○○○a○●┼
●●○○○●┼
├●●●●●┼
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼


第十条−2



第十条−2
ハマをもって相手方の地を埋め、双方の地の目数を比較して、その多い方を勝ちとする。同数の場合は引き分けとし、これを「持碁」という。

〈解説〉
 ハマが相手方の地を上回る場合は、上まわったハマを自分の地の目数に加算して計算する。



第十条−3



第十条−3
勝敗に関し、一方が異議を唱えた場合は、双方は対局の再現等により、勝敗を再確認しなければならない。

〈解説〉
 最初から打ち直すなど、再確認することが義務であって、再確認を拒絶することはできない。



第十条−4



第十条−4
双方が勝敗を確認した後にあっては、いかなることがあっても、この勝負を変えることはできない。

〈解説〉
 たとえば、“「取り石」の一部が発見された”あるいは連続着手、劫立てをしない劫の取り返しなど、違反着手が棋譜で発見された(勝敗確認前であれば、違反着手はその時点で負け……第十四条)などの事実があっても、勝敗確認後はその事実を主張して勝敗を変えることはできない。
 以上、第一条、二条、九条、十条を図示すると下の通りとなる。




 ┌-−−−−−−−対局(着手)−−−−−−−−−−−┐
 |                         |
 |           パス パス         |
 ↓             |           ↓
競技開始 ← 技芸を競う → 対局の停止 ← 石の死活、→ 終局 ← 死石取上 → 勝敗 
     (交互着手)         地確認        地埋め   決定 
                                  (対局再開可)        目数比較
                                      合意             (地作り)



第十一条



第十一条(投了)
対局の途中でも、自らの負けを申し出て対局を終えることができる。これを「投了」という。その相手方を「中押勝」という。

〈解説〉「中押勝」--ちゅうおしがち。



第十二条



第十二条(無勝負)
対局中に同一局面反復の状態を生じた場合において、双方が同意した時は無勝負とする。

〈解説〉
 1 同一局面反復の事例

 三劫以上、循環劫、長生などで生じうる。

 (参考図18)
┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬
●●●●●●●┼┼┼
○○○○○○●┼┼┼
├○1○●○●┼┼┼(三劫)
○●○●┼●○┼┼┼
●●●●●●○┼┼┼
○○○○○○○┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬
●●●●●●●●●┼
○○○○○○○○●┼
├○1┼○●●○●┼(循環劫)
○●○○●┼┼●○┼
●●●●●●●●○┼
○○○○○○○○○┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

┌○1●┬○●┬┬┬
●○○○●●○○┼┼
●●●●●○┼┼┼┼(長生)
○○○○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

2 “双方が同意したときに無勝負”
 反復した回数の確認の困難さを考え、双方が同意した時点で無勝負とする。



第十三条−1



第十三条−1(両負け)
第九条の対局停止後、対局者が有効な着手を発見し、その着手が勝敗にかかわるため終局に合意できない場合は両負けとする。

〈解説〉
 双方が着手放棄後有効着手を発見し、相手方に先着されると負けになる場合などで、ともに対局の再開も要請せず、終局についても合意しないときは両負けとなる。

 (参考図19)
 〈1〉        〈2〉
┌┬┬●○┬┬┬┬┬●○┬a┬○●┬
├a●●○┼┼┼┼┼●○┼┼○○●┼
├●┼●○┼┼┼┼┼●○○○○●●┼
●●●○○┼┼┼┼┼●●●●●┼┼┼
○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

 参考図19 〈1〉、〈2〉の状態で「対局の停止」となった後、双方がともにaが有効着手であることを発見し、相手方に先着されると負けになるため、ともに対局の再開を要請せず、終局についても合意しない場合は、両負けとなる。



第十三条−2



第十三条−2
対局中に盤上の石が移動し、かつ対局が進行した場合は、移動した石を元の着点に戻して続行する。この場合において対局者が合意できない場合は、両負けとする。

〈解説〉
 元の着点に石を戻すことを対局者が合意できないとき、あるいは元の着点にすでに石が存在、または存在できない石になるなど、規約上元へ戻すことが不可能は場合は、両対局者に責任ありという事で両負けとなる。



第十四条



第十四条(反則負け)
一方が以上の規則に反した場合は、双方が勝敗を確認する前であれは、その時点で負けとなる。

〈解説〉
 反則着手があった場合は、勝敗確認前であればいかなる場合も、反則着手時点で負けとなる。
 (注)勝敗確認後に発見された場合は、第十条--4により勝敗はかわらない。


死活確認例

 III 死活確認例

 以下の死活例の「活き死に」の判定は、例図の状態で「対局の停止」となり、死活確認した場合の判定結果であって、終局前に実戦で解決することを妨げるものでない。




死活例1

1 第七条第1項関係

死活例1 「取らず三目」

a●●○┬
○●●○┼ 死活例1
●○○○┼
●●●┼┼
├┼┼┼┼

黒の四子、白の一子はともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。

(1) 黒四子の「活き石」の理由
 1図、2図、黒は四子を取られても、それにより取られない石2が生じうる。

1図     2図
①●●○┬  ○┬┬○┬
○●●○┼  ○2┼○┼
●○○○┼  ●○○○┼
●●●┼┼  ●●●┼┼
├┼┼┼┼  ├┼┼┼┼

(2) 白一子の「活き石」の理由
 3図、4図、5図、白一子は取られても、それにより取られない石④、⑥を生じうる。

 3図     4図     5図    (結果図)
1●●○┬  ●●●○┬  5④⑥○┬  ●○○○┬
○●●○┼  ②●●○┼  ○3┼○┼  ├●┼○┼
●○○○┼  ●○○○┼  ●○○○┼  ●○○○┼
●●●┼┼  ●●●┼┼  ●●●┼┼  ●●●┼┼
├┼┼┼┼  ├┼┼┼┼  ├┼┼┼┼  ├┼┼┼┼

死活例2

死活例2 手入れ不要
 黒の二子、白の八子はともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。黒はaに打ち込こむ手入れ不要である。
黒二子の「活き石」の理由
 1図、黒二子は取られるが、取られない石2、4が生じうる。

 死活例2        1図
┌●○┬○●┬┬  ③●○4○●┬┬
●┼○a○●┼┼  ●①○2○●┼┼
○○○○●●┼┼  ○○○○●●┼┼
●●●●┼┼┼┼  ●●●●┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼

死活例3

死活例3 「ハネゼキ」
 黒白ともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。
 1図、2図、3図は黒石が「活き石」である理由。4図、5図は白石が「活き石」である理由。

死活例3     1図       2図       3図     
●●●┬○●○┬ ●●●┬○●○┬ ●●●┬○●○┬ ●●●┬○●○┬
○○○○○●○┼ ○○○○○●○┼ ○○○○○●○┼ ○○○○○●○┼
●●●●┼●○┼ ●●●●┼●○┼ ●●●●┼●○┼ ●●●●4●○┼
○○○●●●○┼ ○○○●●●○┼ ○○○●●●○┼ ├┼┼●●●○┼
├●●●○○○┼ ①●●●○○○┼ ○●●●○○○┼ ③●●●○○○┼
●○○○○┼┼┼ ●○○○○┼┼┼ 2○○○○┼┼┼ ●○○○○┼┼┼
○○┼┼┼┼┼┼ ○○┼┼┼┼┼┼ ○○┼┼┼┼┼┼ ○○┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼ ├┼┼┼┼┼┼┼ ├┼┼┼┼┼┼┼ ├┼┼┼┼┼┼┼

4図       5図
●●●┬○●○┬ ●●●┬○●○┬
○○○○○●○┼ ○○○○○●○┼
●●●●┼●○┼ ●●●●┼●○┼
○○○●●●○┼ ├②┼●●●○┼
1●●●○○○┼ ●●●●○○○┼
●○○○○┼┼┼ ●○○○○┼┼┼
○○┼┼┼┼┼┼ ○○┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼ ├┼┼┼┼┼┼┼

死活例4

死活例4
 黒白ともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。1図、2図、3図は白石が「活き石」である理由。

死活例4        1図
┌●┬┬●●●○●┬  ┌●1②●●●○●┬  
●●○○○○○○●┼  ●●○○○○○○●┼  
├○●●●●●●●┼  ├○●●●●●●●┼  
├○●┼┼┼┼┼┼┼  ├○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ●○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ●○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ●○●┼┼┼┼┼┼┼  
○○●┼┼┼┼┼┼┼  ○○●┼┼┼┼┼┼┼  
●●●┼┼┼┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  

2図          3図
┌●●○┬35○●┬  ┌●●○7●●○●┬  
●●○○○○○○●┼  ●●○○○○○○●┼  
├○●●●●●●●┼  ├○●●●●●●●┼  
④○●┼┼┼┼┼┼┼  ○○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ├○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ⑥○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  ├○●┼┼┼┼┼┼┼  
○○●┼┼┼┼┼┼┼  ○○●┼┼┼┼┼┼┼  
●●●┼┼┼┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 

死活例5

死活例5
 黒九子、白四子はともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。

死活例5
┌○●●┬○●┬
●●○●┼○●┼
●●○●●○●┼
○○○○○●●┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

死活例6

死活例6
┌○a●┬○●┬┬○┬
●○○○●●○○○○┼
●●●●●○┼┼┼┼┼
○○○○○○○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例6 長生がらみ
 長生になる寸前の形であるが、白がaに手入れすると半目負けのケースで、また黒がaに打つと長生無勝負となり、ともに打たない場合である。
 黒十子は白にaに打たれると死ぬから、「死に石」であるが、白四子は黒にaと打たれても長生で取られないため「活き石」である。
 (注)黒十子は白の「活き石」で囲まれた白の「地」の中の「死に石」であるから、このまま終局となった場合は、白はaに手入れを要せず、黒十子をこのまま取り上げることができる。


死活例7−1

2 第七条第1項、第2項関係

死活例7−1 「隅の曲り四目」
 黒三子は「活き石」であり、白七子は「死に石」である。
 1図、2図は白七子が「死に石」である理由。

死活例7−1    1図        2図  ⑥パス
●●●┬○●┬┬  ●●●②○●┬┬  ④37○○●┬┬
├○○○○●┼┼  1○○○○●┼┼  5○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼  ○○●●●●┼┼  ○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼

死活例7−2

死活例7−2 「隅の曲り四目」と「万年劫」の併存
 両図が併存している場合でも、「隅の曲り四目」である上図の白七子は「死に石」である。(「両劫ゼキ」との併存の場合も同じ)
 1図、2図、3図は白七子が「死に石」である理由。

死活例7−2    1図        2図        3図   8パス

●●●┬○●┬┬    ●●●②○●┬┬    ④3┬○○●┬┬    ┌●9○○●┬┬
├○○○○●┼┼    1○○○○●┼┼    5○○○○●┼┼    ●○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼    ○○●●●●┼┼    ○○●●●●┼┼    ○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼    ●●●┼┼┼┼┼    ●●●┼┼┼┼┼    ●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼
                                     
○┬○┬●○┬┬    ○┬○┬●○┬┬    ○7○┬●○┬┬    ┌●○11●○┬┬
●○○┼●○┼┼    ●○○┼●○┼┼    ●○○⑥●○┼┼    ●○○○●○┼┼
●●●●●○┼┼    ●●●●●○┼┼    ●●●●●○┼┼    ●●●●●○┼┼
○○○○○○┼┼    ○○○○○○┼┼    ○○○○○○┼┼    ○○○○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼    ├┼┼┼┼┼┼┼

                                   ⑩パス
死活例8

死活例8 「眼あり眼なし三劫」
黒九子は「死に石」で白十子は「活き石」。
1図は黒九子が「死に石」である理由。

死活例8      1図
┌┬┬┬┬┬┬  ┌┬┬┬┬┬┬  
○○┼┼┼┼┼  ○○┼┼┼┼┼  
●○┼┼┼┼┼  ●○┼┼┼┼┼ 黒●4パス
├●○○○┼┼  ①●○○○┼┼ 白⑤九子取り上げる
●●●●○┼┼  ●●●●○┼┼  
○●┼●○┼┼  ○●③●○┼┼  
├○●○●┼┼  2○●○●┼┼  
○○○○●┼┼  ○○○○●┼┼  
├○●●●┼┼  ├○●●●┼┼  
○○●┼┼┼┼  ○○●┼┼┼┼  
●●●┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  

死活例9

死活例9 本劫の手入れ
 黒七子、白1子はともに「死に石」で、第八条により地ではなく、第十条第1項により、ともに取り上げられない。黒はaに手入れする場合に比べ三目の損となる。
 1図は黒七子が「死に石」である理由。

死活例9     1図
●○a●○┬┬  ●○③●○┬┬
├●●●○┼┼  ①●●●○┼┼
●●○○○┼┼  ●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼
             2パス

死活例10

死活例10 一手ヨセ劫手入れ不要
 黒八子は「活き石」白一子は「死に石」で、黒aの手入れ不要である。
 1図は黒八子が「活き石」である理由。

死活例10      1図
●○a┬●○┬┬  4○③6●○┬┬
├●●●●○┼┼  ①●●●●○┼┼
●●○○○○┼┼  ●●○○○○┼┼
○○○┼┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
           2パス ⑤パス

死活例11

死活例11 「両劫に仮生一」
 両図が併存している場合でも、上の白七子は「死に石」であり、下の黒石、白石は「両劫ゼキ」である。
 1図は上の白七子が「死に石」である理由。

    死活例11     |     1図     
┌●○┬○┬○●┬┬┬┬  | ┌●○1○5○●┬┬┬┬
├●●○○○○●┼┼┼┼  | ├●●○○○○●┼┼┼┼
├┼●●●●●●┼┼┼┼  | ├┼●●●●●●┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ ④パス
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ ⑥パス
             |              7パス
┌○●┬●┬●○┬○●┬  | ┌○●┬●②●○┬○●┬
├○●●●●○○○○●┼  | ├○●●●●○○○○●┼
├○○○●○┼○●●●┼  | ├○○○●○3○●●●┼
├┼┼○●●○○●┼┼┼  | ├┼┼○●●○○●┼┼┼
├┼┼○○○●●●┼┼┼  | ├┼┼○○○●●●┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  | ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例12

死活例12「万年劫」
 黒白ともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。
 1図は黒石が「活き石」である理由。
 2図は白石が「活き石」である理由。

死活例12      1図        2図
○┬○┬●○┬┬  ○2○4●○┬┬  ○1○⑥●○┬┬
●○○┼●○┼┼  ●○○①●○┼┼  ●○○3●○┼┼
●●●●●○┼┼  ●●●●●○┼┼  ●●●●●○┼┼
○○○○○○┼┼  ○○○○○○┼┼  ○○○○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
           3パス      ②パス ④(1の左)
                    5パス

死活例13

死活例13
 黒白ともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。1図、2図、3図は白石が「活き石」である理由。

死活例13     1図       2図       3図
●●┬●○●┬  ●●②●○●┬  ┌3○●○●┬  ⑥●⑧●○●┬
├○●┼○●┼  1○●┼○●┼  ├○●┼○●┼  5○●⑩○●┼
○○○○○●┼  ○○○○○●┼  ○○○○○●┼  ○○○○○●┼
●●●●●●┼  ●●●●●●┼  ●●●●●●┼  ●●●●●●┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼
                  ④パス      7パス 9パス

死活例14

死活例14
 黒八子は「活き石」、白七子は「死に石」。白は「セキ石」にするためには、aに打ちこむ手入れ要。

死活例14
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
○○○┼┼┼┼┼┼
●●○┼┼┼┼┼┼
├●○┼┼┼┼┼┼
a●○┼┼┼┼┼┼
●●○┼┼┼┼┼┼
├●○┼┼┼┼┼┼
○●○┼┼┼┼┼┼
├○●┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼
├○●┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼
└┴┴┴┴┴┴┴┴

死活例15

死活例15
 黒四子は「活き石」、白十一子は「死に石」。
 (注)白に劫立てが少なく、白aに打って劫にすると負けになるので着手せず、一方、黒がb,cに着手して白石を取りに行くと二目損するので、着手しない場合である。

死活例15
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
○○○○┼┼┼┼┼
○●●●●●┼┼┼
●┼┼┼┼●┼┼┼
├●┼┼┼●┼┼┼
○●┼┼┼●┼┼┼
b○●┼┼●┼┼┼
○●●┼┼●┼┼┼
c○●●●●┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼
●○a○●┼┼┼┼
●●●○●┴┴┴┴

死活例16

死活例16
 隅の白十子は「死に石」で、上の白十二子も「セキ崩れ」で「死に石」。

死活例16
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼
○○○○●●●○┼
●○┼○○○●○┼
├●○●●●○○┼
●●●●┼●○┼┼
○○○●●●○┼┼
├○●○○○○┼┼
○○●●●●●┼┼
├○●┼┼┼┼┼┼
○●┼┼┼┼┼┼┼
○●●┼┼┼┼┼┼
└○●┴┴┴┴┴┴

死活例17

死活例17
 隅の黒三目は「活き石」、白十子は「死に石」。以上から上の白十子も「セキ崩れで「死に石」。

死活例17
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼┼┼
●○┼○●○○○○┼┼
├●○●○○●●○┼┼
●●●●●●┼●○┼┼
○○○●○●●●○┼┼
├○●○○○○○○●┼
●○●●●●●●●●┼
●○○○●●┼┼┼┼┼
●┴○┴○●┴┴┴┴┴

死活例18

死活例18
 隅の黒七子は「死に石」、白二子は「活き石」。中の黒十三子も「セキ崩れ」で、「死に石」。

死活例18
┌○┬●○●○┬┬┬
○●●●○●○○┼┼
├●○○○●●○○┼
●●○○┼○●●○┼
○○○┼○●┼●○┼
●●○○●┼●●○┼
├●●○○●●○┼┼
├┼●●●○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例19

死活例19
 黒十七子は「死に石」、白十二子は「活き石」。

死活例19
●┬○┬○┬●○┬┬
●○○○●●●○┼┼
●○●●○┼●○┼┼
├○●○○●●○┼┼
○○●●●●○○┼┼
●●○○○○○┼┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例20

死活例20
 黒白ともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。

死活例20
●┬○┬○┬●○┬┬
●○○○●●●○┼┼
●○●●○○●○┼┼
├○●┼○○●○┼┼
○○●●●●●○┼┼
●●○○○○○○┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例21

死活例21
 黒十九子は「活き石」、白十四子は「死に石」。

死活例21
●┬○┬○┬●○┬┬┬
●○○○●●●○○┼┼
●○●●○○●●○┼┼
├○●┼○○○●○┼┼
○○●●●●●●○┼┼
●●○○○○○○○┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例22

死活例22
 黒七子は「活き石」、白十子は「死に石」。 黒は白三子を打ち上げる手入れ不要。

死活例22
○┬●┬○┬○┬○●┬┬
○○●●●○○○○●┼┼
●●●○○●●●●●┼┼
○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例23

死活例23
 第七条第1、2項及び第一条の碁の目的により、黒は「活き石」、白は「死に石」。終局前に白がaに打てば「セキ石」であり、さらに黒が着手すれば、黒ハマ九子、白ハマ一子となる。

死活例23
a○┬○○●┬○●┬┬┬
○●○┼○●┼○●●┼┼
├●●○○●●●○●┼┼
●┼●●●○○○○●┼┼
○○●○○┼┼┼┼┼┼┼
○●●○┼┼┼┼┼┼┼┼
●●○○┼┼┼┼┼┼┼┼
○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

死活例24

死活例24 「地」の確定のための駄目詰め−−二段劫

死活例24
b△●●┬┬●○┬┬
□●●┼●●●○┼┼
c○●●○○○○┼┼
○○a●○┼┼┼┼┼
├○●●○┼┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼

 (1)図の状態では、黒白ともに駄目aを有する「活き石」なので「セキ石」となってしまい、黒白の目は地にならない。黒が目を地にするためにはaへの着手が必要。
 (2)b、cの空点については「両劫ゼキ」がある場合に、白はb、cを劫で頑張ることができるが、第七条により、白△は「死に石」白□は「活き石」である。したがって、bは「駄目」、cは目となる。
 (3)白石はaの「駄」目」を詰めても、bの「駄目」を有するので「セキ石」であり、c及び2点の目は地にならない。白の2点を地にするには、さらにb、cへの着手が必要。


死活例25

死活例25 「両劫ゼキ」
 (1)黒六子と白十二子は「駄目」a、bを有するので、第八条により「セキ石」。
 (2)a、bが「駄目」である理由は次による。
  ・劫の黒白各一子は、取られても後に新たに黒石ないし白石を生じうるが、それらは「取られない石」に該当しないので「死に石」。
  ・a、bは一方のみの石で囲んだ空点であるが、「活き石」と「死に石」で囲んだ空点なので、第八条により「目」でなく「駄目」である。
死活例25
┌●b●○●┬┬
●●●○○●┼┼
○●○┼○●┼┼
a○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

 (3)「死に石」である黒白各一子が終局後に取り上げられない理由は次による。
 黒白各一子は「死に石」であるが、a、bが「駄目」であって「地」でないので、第十条第1項により取り上げられず、このままで「セキ石」となる。



改定の概要



 IV 日本囲碁規約改定の概要(ご参考)

1 改定の基本方針
 (1)日本の伝統的な対局方法を遜守。
 (2)日本ルールに潜在的に含まれている合理性の理論化と明確化。
    理性の理論化と明確化。
 (3)世界に通用する囲碁ルールの追求。
   (注)世界統一ルールは国際囲碁連盟ルール委員会に任せる。

2 改定範囲
 (1)現規約七十条、附属規定十条のうちルールに関する規定(三十三条4判例)のみ改定。
 (2)作法規定、用具、手合割(含む込碁)競技実行方法(含む時間)は他の規定で定める。

3 改定の効果
 (1)「隅の曲り四目死」の理論的根拠が明確化。
 (2)死活不明石(「眼あり眼無し三劫」など)の死活が明確化。
 (3)「本劫手入れ」。「取らず三目」など「手入れ」の要否が明確化。
 (4)「ダメ埋め」後での手入れの味悪さや、先着権争いが解消。
 (5)セキ石の中の目を「地」とみない理由の明確化。

4 現在と変わる主な点
(1)効がらみの死活不明石
  「眼あり眼なし三劫」(結論が変わる)
  黒九子は第七条2項により「死に石」。
 ・現規約では「セキ石」(第三十二条2附図二図4)。
  または、双方譲らず同形反復を繰り返す時は無勝負。(判例3)

(眼あり眼なし三劫)     1図
┌○●┬●○┬○┬○●┬  ┌○●①●○2○┬○●┬
├○○●●●○○○○●┼  ├○○●●●○○○○●┼
├┼┼○●┼●○●●●┼  ├┼┼○●③●○●●●┼
├┼┼○●●○○●┼┼┼  ├┼┼○●●○○●┼┼┼
├┼┼○○○●●●┼┼┼  ├┼┼○○○●●●┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

・新規約では第七条2項により1図の通り黒死となる。
 黒4 パス(パス後でないと取り返せない)。
 白5 黒八子取り上げる。

 2図はこのままで終局となれば、白は第七条2項により「死に石」。白は劫材が多くてもaに手入れ要。(結論の明確化)
2図
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
○○○┼┼┼┼
●●○┼┼┼┼
├●○┼┼┼┼
a●○┼┼┼┼
●●○┼┼┼┼
├●○┼┼┼┼
○●○┼┼┼┼
├○●┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼
├○●┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼
└┴┴┴┴┴┴

 (2)「取らず三目」(結論が変わる)
  1図はこのままで終局となれば、第七条1項により白の一子も黒の四子もともに「活き石」で「セキ石」。
1図
a●●○┬┬
○●●○┼┼
●○○○┼┼
●●●┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
 ・現規約では判例(2)により、そのまま終局すれば白地3目と計算する。
 ・新規約では1図aに黒白どちらから打っても、切りあるいは打って返しにより、新たに相手方に取られない石を生じるから、黒白ともに「活き石」で、かつaに駄目を有するので、「セキ石」である。
 ・ただし、終局前に白黒どちらからでも1図aに打って実戦で解決することができる。

 (3)対局停止後、双方が対局の再開を要請しない場合(明確化)
1図
┌┬┬●○┬┬
├a●●○┼┼
├●┼●○┼┼
●●●○○┼┼
○○○○┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
  1図の状態で「対局の停止」(双方が連続して着手放棄)となった後、ともにaが有効着手であることを発見し、相手に先着されると負けになるため、ともに対局の再開を要請せず、終局についても合意しない場合は、両負けとなる。
 ・現規約では規定がなく、先着権争いが生ずる。
 ・新規約では第九条3項で対局の再開を要請した方の相手方に先着権があることを明記するとともに、第十三条1項で先着権の関係でともに対局再開の要請もせず、終局についても合意しない時は両負けとした。

(4)隅の曲り四目(根拠の理論化)
 1図は第七条第2項により白は「死に石」。
 ・現規約では判例(1)で他の部分に関係せず死としているが、他に「両劫ゼキ」などがある場合理論的な説明困難。
 ・新規約では次の通り理論化された。
1図
●●●┬○●┬┬
├○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
2図
●●●②○●┬┬ 黒1と打ち白②と四子取る。
1○○○○●┼┼
○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
3図
④37○○●┬┬ 白6パス(すぐに取り返せない)。
5○○○○●┼┼ 黒7と白八子を取り上げる。
○○●●●●┼┼
●●●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼

(5)「本劫手入れ要」と「一手ヨセ劫手入れ不要」(根拠の理論化)

  1図はこのまま終局となれば、第七条2項により、黒白ともに「死に石」。黒は劫材が多くてもaに手入れ要。

  2図はこのまま終局でも、第七条2項により、黒は「活き石」白は「死に石」で、黒は手入れ不要。
注・現規約では判例(4)で同じ結論。

1図       2図
●○a●○┬┬  ●○┬┬●○┬┬
├●●●○┼┼  ├●●●●○┼┼
●●○○○┼┼  ●●○○○○┼┼
○○○┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼

(6)「ダメ詰め」、「手入れ」の交互着手原則(根拠の明確化)
 ・現規約では終局後適宜に「ダメ埋め」を行うが(第三十九条)、「ダメ埋め」後「手入れ」を要請しても相手方が応じないときは、交互着手の復活を認めている。(第四十条2項)
 ・新規約では、次の通り「地」を確定するためには、終局までに「ダメ詰め」、「手入れ」を行わなければならない。(第八条、第九条2項)なお、対局者の合意で、対局停止後適宜に行う着手は、本規約の着手に該当しない。

1図
b△●●┬┬●○┬┬
□●●┼●●●○┼┼
c○●●○○○○┼┼
○○a●○┼┼┼┼┼
├○●●○┼┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
 ・1図の状態では、黒白ともにダメaを有する「活き石」なので「セキ石」となってしまい、黒白の目は「地」にならない。黒が目を「地」に、するためには、aへの着手が必要。
 ・b、cの空点については、「両劫ゼキ」がある場合に白はb、cを劫で頑張ることができるが、第七条により白△は「死に石」、白□は「活き石」である。したがってbは「ダメ」。cは「目」となる。
 ・白石はaのダメを詰めてもbのダメを有するのでセキ石であり、白の2点を地にするには、さらにb、cへの着手が必要。


(7)「変則のセキ石」(根拠の理論化)
 1図はこのままで「セキ石」であり、黒はaに打ちこむ手入れ不要である。
 ・現規約でも第三十二条附図第2図2により「セキ石」となっているが、黒二子の死活及び黒aの手入れ要否については明確でない。

1図        2図
┌●○┬○●┬┬  ③●○4○●┬┬
●┼○a○●┼┼  ●①○2○●┼┼
○○○○●●┼┼  ○○○○●●┼┼
●●●●┼┼┼┼  ●●●●┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
 ・ 新規約では次の通り明確化された。
2図
 白1から黒4までにより、黒二子は取られても新たに白に取られない黒2、4が生じるので、第七条第1項により「活き石」であり、ダメを有するのでこのままで「セキ石」。

(8)対局中の盤上の石の移動
 ・現規約ではともに合意すればそのままとめおいての継続も認め、合意できなければ無勝負としている。(第六十一条)
 ・新規約では、必ず石を元に戻して続行することとし、合意できない場合は「両負け」とした。(第十三条2項)
 (注)棋譜作成、故意の移動防止のため。
 (注)元の着点に既に石が存在、あるいは、いわゆる自殺着手になる場合も合意できない場合に含む。

(9)違反着手
 ・現規約では、相手方が同意した場合は違反着手を取り消し外へ着手すること、あるいは着手が進行した場合はそのままの継続を認めている。(第六十条)
 ・新規約では、最近の慣例を追認して、反則時点にさかのぼって負けとした。(第十四条)
 (注)勝敗確認後は不変。(第十条4項)

以上


日本囲碁規約逐条解説