1. Qitailang's HP
  2. Esperanto

不定詞

エスペラントの不定詞には多様な使われ方があって難しいが、自分なりにそのはたらきを大きく4つにまとめてみた。誤りもあるかもしれない。

1.名詞的用法

主語として

叙述語として

目的語として

前置詞の目的語として

すべての前置詞に使われる訳ではなく、por、anstataŭ、sen、krom の4つに使われるとされている。

同格として

不定詞は名詞相当なので名詞と並べて同格を作ることができる。正確に言うと「言い換え」であって同格ではない場合もある。

deziro と veturi al Parizo、kapablo と paroli la germanan lingvon がそれぞれ同格をなしている。

英語では不定詞を下のように使うことができる。

しかし、これをそのままエスペラントにすると文法的に間違いになる。下の文は間違いである。

正しくは前置詞 por を入れなけばならない。

名詞が不定詞の目的語(manĝi ion、helpi min の関係)の場合や、不定詞が表す目的のための手段、道具、材料、行為者などの場合、前置詞の por を入れる必要がある。

後に示すが「名詞 + 不定詞」の形が常に同格の関係を表すというわけではない。しかしその場合も、不定詞が係る名詞は具体的な物を表すものではなく常に抽象名詞である。

「名詞+不定詞」の形でよく使われる抽象名詞(参照):

bezono(need), devo(duty), eblo(possibility), emo(inclination), espero(hope), fiero(pride), forto(strength), inklino(inclination), intenco(intend), klopodo(endeavor), komisio(commission), kompetento(competence), konsilo(advice), kuraĝo(courage), neceso(necessity), nepovo(inability), okazo(opportunity), peno(effort), povo(power, ability), promeso(promise), propono(proposal), sopiro(long), volo(will)

bedau~ro(regret), potenco(power), projekto(project), rajto(right), soifo(thirst), ŝanco(chance), tasko(task), timo(fear)

2.説明的用法

動詞の補足説明

単独では意味が完結しない動詞、意味が不足する動詞を補足説明する。こういった動詞の中には英語の助動詞に相当するものがある。エスペラントにはそもそも助動詞という特殊な品詞はないので、様々な動詞で意味が不足する場合、不定詞を使って補足することができる。「動詞 + 不定詞」の形を複合動詞と呼ぶ人もいる。

ただし下の例文中にも含まれているが「動詞 + 不定詞」の形で、動詞が他動詞の場合がある。この場合、不定詞は動詞を補足説明していると捉えるよりも目的語と捉える方(名詞的用法)が文法的のように思える場合がある。

iri, veni など移動を表す動詞とともに使い、移動の目的を表す。

コチラの学習ページでは、「移動を示す動詞の後に修飾語句が入ると, por -i の形が使われます」と書かれている。つまり、Ŝi iris al la urbo aĉeti veston は間違いで、Ŝi iris al la urbo por aĉeti veston と書かなければならないということである。しかし、Ekzercaro §17 に Vi devas nur iri al la fonto ĉerpi akvon... という例文が載っている。あまり離すと意味が汲み取りにくくなるので注意が必要という程度に受け止めておいてよいと思うのだがどうだろう。

形容詞の補足説明

形的には形容詞の補足説明であるが、意味的には動詞(esti + 形容詞)の説明と言えなくもないように思える。上の文は下のように動詞を説明する形に書き換えることができる。

名詞の説明

名詞的用法のところで「名詞 + 不定詞」の形が同格表現として使われる例を挙げたが、同格といえない場合でもこの形が使われることがある。その1つは不定詞が名詞の意味上の目的語の場合である。

1番目の例は decido と servi sub vi の関係を「あなたに仕えるという決意」という意味に解釈して同格と捉えることもできるが、servi することを決意したわけだから、servi が decido の意味上の目的語と解釈することもできる。2番目の例は「話をすることを禁止する」わけだから、明らかに不定詞 paroli が malpermeso の意味上の目的語を表している。

次のような使い方もある

不定詞が名詞の意味上の目的語でもないし、同格関係でもない(tempo ≠ preĝi)。この場合の名詞と不定詞の関係をうまく言語化できないが、不定詞ではなく名詞を使って前置詞句で表せば、tempo de preĝo、maniero de parolo の関係と言えそうである。

PMEG では下のような説明になっている。

Kiam I-verbo rekte priskribas O-vorton, la senco estas ofte tre proksima al intencita ago. Tial oni ofte uzas por antaŭ la I-verbo: permeso por eniri, eblo por fari ion, tempo por skribi, maniero por rigardi. Ĉe iuj O-vortoj oni pli ofte uzas solan I-verbon, dum ĉe aliaj oni preferas uzi por + I-verbon. Ekzemple oni uzas tempo/momento fari ion kaj tempo/momento por fari ion sen signifodiferenco, sed oni uzas nur loko/spaco por fari ion, neniam *loko/spaco fari ion*

不定詞が直接名詞を説明するとき、それが表す意味は「〜するための」という意味と同義である。そのため普通は permeso por eniri, eblo por fari ion, tempo por skribi, maniero por rigardi のように不定詞の前に por を挿入する。なにがしかの名詞においては、por を使わず単独で不定詞を使うことの方が多い。例えば、tempo/momento fari ion(何かをする時間/瞬間) と tempo/momento por fari を同じ意味で使う。しかし、loko/spaco por fari ion(何かをする場所) とは言うが, 決して *loko/spaco fari ion* とは言わない。(意訳)

http://bertilow.com/pmeg/gramatiko/i-verboj/rekta_priskribo.html

主語以外の行為や動作を表す

不定詞が目的語(対格で示される人や物)や与格(al 前置詞句で示される人や物)の行為・動作や状態を表すことがある。この場合の不定詞の行為者は述語動詞の主語ではない。

述語動詞が vidi, aŭdi, senti などの知覚を表す動詞のとき(観察を表す動詞と説明されてもいる)、不定詞が知覚対象の動きを表す。

使役・命令・許可の意味を持つ動詞のとき相手の行為を表す。

helpi, ĝeni とともに使って「〜するのを助ける」「〜するのを邪魔する」という意味を表す。

その他幅広く他者の行為に影響を及ぼす動詞とともに

doni と manĝi, trinki を使って、食べさせてあげる(くれる)、飲ませてあげる(くれる)といったニュアンスを表す。ただし、このような例は、自分は「食べる」「飲む」に関して見たことがあるだけで、少なくとも実際に何らかの物の移動がある場合に限られるようだ。日本語のように「教てあげる」「髪を切ってくれる」のように汎用的に使えるわけではなさそうだ。

3.文や節に単独で使う用法

上の例文は、上述の不定詞の使い方と全く異なり、不定詞があたかも述語動詞のように使われている。不定詞以外に述語動詞がなくても文や節(不定詞句を節相当と見做せば)が成り立っている。

なぜこのような表現が可能なのかは難しくてよく理解できていないが、重要なのは、動詞に時制がないことのように思える。

動詞に時制がないのであるから、不定詞が意味するものは時間を伴う行為や状態そのものではなく、観念としての行為、もしくはその行為に対する意志、可能、義務、命令(禁止)といった判断を表しているように思える(モダリティ・心的態度と言ったら良いのか?)。誰かが実際に行うのではなく頭の中で "何をしようか?" とか "何をすべきか?" と考える、その思考の中身だけを取り出して不定詞で表していると言ってもよいかもしれない。具体的な行為そのものを表す分詞(分詞構文=分詞の副詞的用法)と比較すると理解しやすいように思う。

全体としてこれは省略表現と考えられる。もし主語を省略しない表現に置き換えるとすれば、不定詞は時制語尾 (-as, -is, -os) を付けて置き換える(叙実法/直接法)のではなく、意思法 -u、仮定法 -us、もしくは povi, devi などのような助動詞的な動詞を使った表現に置き換えられるのではないかと思われる。(意思法や仮定法は事実を表すのではなく、観念としての行為を表す。-os は場合によって意思のニュアンスを表すので使えるかもしれない)

例えば kion fari, kion diri の fari, diri は 直接 faras, diras という行為を表す動詞に置き換えられるのではなく、faru, diru(意志)であったり devas fari, devas diri(義務)のように置き換えられる。kion manĝi の manĝi は povas manĝi のように可能を表す表現で置き換えられそうである。esti aŭ ne esti や ne fumi は devas esti aŭ devas ne esti や oni devas ne fumi もしくは oni ne fumu と義務のニュアンスを絡めた述語動詞や意思法を使った表現に置き換えられるかもしれない。paroli sincere は parolus のように仮定の表現に置き換えられそうだ。

以上はなぜこういう表現が可能なのか、不定詞はどういうはたらきをしているのかということについての自己満足的な解釈である。PMEG では下のように説明されている。

Ĉefverbecaj I-verboj aperas en iaj mallongigitaj subfrazoj. La I-verbo tiam sence egalas al U-formo aŭ esprimo kun povi:

主要動詞的な不定詞が短くされた従属節に現れることがある。このとき不定詞は意味上からは -u や povi を使う文と同じである。

Ĉefverbecaj I-verboj aperas ankaŭ en iaj mallongigitaj esprimoj de dubo aŭ hezito. La plena frazo havas verbon en U-formo, okaze en US-formo aŭ OS-formo:

主要動詞的な不定詞が、疑いや躊躇の簡略表現に現れることもある。簡略しない文にすると、-u や、場合によって -os で表される。

Iafoje oni vidas I-verbojn uzatajn anstataŭ ordonaj U-formoj. Tiam la ordono ricevas nuancon neŭtralan, nek ĝentilan nek malĝentilan, sed simple konstatan. La senca subjekto de la I-verbo estas tute ĝenerala oni. Tiu uzo estas malofta:

ときに命令の意味の意志法の代わりに不定詞が使われているのを見る。この時命令は丁寧でもなく非丁寧でもなくも単なる中立的な確認のニュアンスをもたらす。不定詞の意味上の主語は一般の人を指す oni である。このような使い方はまれである。

La specialaj esprimoj se tiel diri, se paroli sincere k.s. montras manieron de rigardado, vidpunkton, k.s. Oni povas ankaŭ uzi por anstataŭ se, sed se estas pli klara:

se tiel diri, se paroli sincere などの特殊な表現は見方、視点を意味する。se の代わりに por を使ってもよいが、se の方がよりはっきりする。

参照
http://plaza.harmonix.ne.jp/~sakat/hinsi.htm#verbo
http://plaza.harmonix.ne.jp/~sakat/huteisi2.htm
http://www2.tokai.or.jp/esperanto/kurso/leciono14.htm
http://www2.tokai.or.jp/esperanto/kurso/leciono15.htm
https://lernu.net/eo/gramatiko/verboj
http://inme.at.webry.info/200601/article_2.html
http://bertilow.com/pmeg/gramatiko/i-verboj/aliaj_frazroloj/kun_alia_subjekto.html


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