7 新ルール試案の解説

6.2 半劫の問題例(1)

例3(第6-3-1図第6-3-3図)は本稿の第3章中国式ルールに例題としてだしたものであるが、ルール上大変興味ある問題が含まれているので再掲したのである。 本譜は呉・宮本(直)氏の九路盤による実戦譜である。譜は白80で半劫をツギ完となっている。計算の場合は慣習法では黒がa・bに手入れをすることになっているから、黒4目勝となる。

第6-3-3図

第6-3-2図

第6-3-3図

新ルール試案Iで白80以後がどの様になるかを示せば第6-3-4図の如く、

第6-3-4図

黒81 パス
白82
黒83
白84 パス
黒85 パス
仮終局
白86 (Pパス)
黒87
白88 パス
黒89 パス
終局

黒43目、白38目で、結果は黒5目勝となる。

これは慣習法と新ルール試案では1目差があることになる。また台湾ルールでも白80の次の番で黒がパスをすれば

白82
黒83
白86
黒87
白 パス
黒 パス
終局

となり、台湾式でも結果は黒5目勝となる。

然し考えてみれば白80を手止りとなる如く打着したところに疑問があるのである。 台湾ルールとして(第6-3-4図参照)

黒79
白パス
黒83
白80
黒87
白82
黒パス
白パス
終局

とすれば、黒79が手止りとなり、1/2目ルールの適用となり、結果は黒4目勝となる。或は

黒79
白82
黒83
白80
黒87
白パス
黒パス
白パス
終局

となり、黒87の次の白のパスが最初のパスとなり、黒87が手止りとなる。従ってこの結果も1/2目ルールの適用となり黒4目勝となる。

この例で分る様に手止り指定のパスで終りとなる如き例があるために、終局の規定が、“最初のパスを除き、パスが連続したとき終局とする”とする必要があることが知れるだろう。要するに台湾式ルールの特色は、第1回目のパスは手止り指定のためのものであって終局をするための目的でない。従って最初のパスを除けば、その後の2回のパスの連続は双方が終局に同意したことを示すパスとなるのである。

台湾式ルールでは本例の如く、白の打方によっては、黒97を手止りとすることもできるし黒87を手止りにすることもできる。又黒83のとき白がパスをすれば黒83が手止りとなる。

新ルール試案Iによってどうなるかをしらべよう。第6-3-5図の如く

第6-3-5図

黒79 白80
黒81
白82
黒83
白パス
黒パス
仮終局
白パス
黒パス
終局

となり、結果は黒4目勝となる。

また

黒79
白パス
黒パス
仮終局
白80
黒81
白82
黒83
白パス(P)
黒パス(P)
終局

これまた同様に黒4目勝となる。

以上の如く、日本の慣習法によれば、第6-3-3図a、bへの手入れを“一手劫には手入れ”というような合理的でない規定によって決めてあるために、白は80へ打着して終るけれども、台湾式ルール或は新ルール試案では打着により解決するために若干の注意をしなければならない。すなわち黒79の次の白80を直ちに打着すると1目の損になる。

然し上記の如く打着すれば4目の差となり同じ結果となるが、日本の慣習法との差は、台湾式と試案の場合はあくまでも“自然の着手によって手入れ問題が解決される”ことが重要なことなのである。