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目的格補語(目的語の叙述語)の品詞について

エスペラントには基本的な文法解釈で未解決な部分も残されているようだ。その1つに目的語が不定詞や節の場合その補語(目的格補語・目的語の叙述語)は副詞か形容詞かという問題がある。学校英語でいうところの SVOC 構文で O が不定詞や節の場合 C を形容詞で表すか副詞で表すかという問題である。

その前に、不定詞や節が主語の場合の補語、つまり主格補語が副詞であることを確認しておく。

  1. Resti kun leono estas danĝere.(Ekzercaro) ライオンと一緒にいるのは危険だ。
  2. Estus tre bele, ke mi iros al la fonto!(Ekzercaro) 私に泉に行けなんてことがとてもすばらしいことかしら(自分には素晴らしいことだと思えない)。

主語の補語でなく、目的語の場合はどうか。以下の例文は自分が上の文の主格補語を目的格補語に書き換えてみたもので、Fundamento に載っているものではない。目的語を下線で、目的語の叙述語を太字で示してみた。

  1. Oni opinias resti kun leono danĝere. 人はライオンと一緒にいるのは危険だと考える。
  2. La patrino opiniis tre bele, ke mi iru al la fonto! 母親は私が泉に行くのはとてもすばらしいことだと考えた。

上の文は意味上から言って danĝere や bele が opiniis を修飾しているのでなく、目的語の resti ... や ke mi iru ... を叙述していることは比較的容易に推察できる。しかし下の文だと文意がはっきりしなくなる。

この文は、(1) 「人々は、彼女を議長に選ぶのは賢明だと考えるかもしれない」という意味と、(2) 「人々は、賢明にも彼女を議長に選ぶということはあり得ることだと考えるかもしれない」という2とおりの解釈ができてしまうからだ。どの範囲を目的語と取るかで混乱が生じる。目的語の範囲を下線で、叙述語を太字で示してみた。

  1. Oni opinios eble elekti ŝin prezidanto saĝe.
  2. Oni opinios eble elekti ŝin prezidanto saĝe.

アカデミオの文法部門は以下のような見解を出しており、明瞭な指針を示していない。

Pro la ankoraŭ ne stabila lingvouzo kaj pro la marĝeneco de la problemo, la Sekcio pri Gramatiko ne trovas la tempon matura por decide rekomendi unu uzon kaj malrekomendi la alian. Tamen, al verkistoj de lernolibroj la Sekcio rekomendas, ke oni uzu adjektivon por predikativoj rilatantaj al substantivoj kaj substantivecaj vortoj kiaj pronomoj, kaj ke oni uzu adverbon por predikativoj - subjektaj kaj objektaj - rilatantaj al infinitivoj kaj “ke”-propozicioj.

未だ安定していない言語の使用と、この問題が周辺的なことから、文法部門は1つの使用を決定的なものとして推奨し、他の使用を非推奨とするには機が熟していないと見做す。しかし学習書の著作者に対しては、名詞や名詞的単語にかかる叙述語には形容詞を使い、不定詞や ke 節にかかる叙述語には副詞を使うことを推奨する。

http://www.akademio-de-esperanto.org/oficialaj_informoj/oficialaj_informoj_19_2012.html

PMEG は下のように書いて、副詞を使うべきであるとしている。

Se la objekto estas I-verbo, oni uzas E-vorton kiel perverban priskribon de la objekto anstataŭ A-vorto. Tio praktike okazas preskaŭ nur kun verboj, kiuj esprimas opinion, ke io estas ia, precipe opinii kaj trovi:

もし目的語が不定詞の場合、目的語の叙述語は形容詞に代えて副詞を用いる。これは実際には、「何がどうである」という考えを表現する動詞とともに現れる場合に限られる(特に opinii や trovi)。

Ankaŭ kiam la objekto estas subfrazo, oni uzu E-vorton kiel perverban priskribon. Tio tamen okazas tre malofte:

目的語が従属節の場合も叙述語(perverba priskribo)に副詞を使うべきである。しかしこういったことは稀である。

https://bertilow.com/pmeg/gramatiko/specialaj_priskriboj/perverba/objekto.html

この混乱を回避する方法として何らかの名詞や形式名詞を立てる方法があるようだ。不定詞や従属節を直接目的語にするのでなく、代わりに名詞や形式名詞を立てることで目的語の叙述語を形容詞にすることができる。名詞もしくは形式名詞の意味するところを範囲を下線で、叙述語を太字で示してみた。下の文の名詞(形式名詞)つまり la decidon(tion) と下線部は同格と理解できる)

目的語が ke 節の場合も同じである。下の文はザメンホフの著作からのものである。

なお、この文では ĝi が形式名詞であるが、最近は ĝi に代えて tio が使われることが多いそうである。ĝi は前段の話に出て来る具体的名詞を指すときに使われるべきと考えられている。「若い女性が[...]若い男性と一緒にいること」のような、あるまとまった文の内容を指すような場合は tio の方が適しているそうである。

なお、ネット上から得た知識であって実際にその本を読んだことはないのだが、コチラの記事によると Plena Analiza Gramatiko de Esperanto(PAG) や、藤巻謙一「まるごとエスペラント文法」などは、目的語が節の場合は補語を形容詞にすべきとの考えのようである。しかし自分には論理的でないように思える。