私に何を言ってほしいの？
エスペラントではこれをどう表現するかと言う話題が Lernu の forum のテーマに挙がっていた。
「何を」が入るとややこしくなるので、とりあえず「私に何か言ってほしいのか」という文を考えてみたい。「ほしい」のは相手で「言う」を実行するのは「私」なので一種の使役表現になりそうである。Ĉu vi volas min diri ion? でも良さそうだが、目的語が２つになるので（２つの動詞があるから目的語が２つあっても構わないが）、Ĉu vi volas al mi diri ion? としても文法的には正しいと思われる。しかしこれでは「私に何か言いたい（ことがある）のか」と言う意味になってしまう。これは voli という動詞が一般に相手の行動に影響を及ぼす動詞として使われないからだ。もしこれが konisili（助言する）のような動詞だったら、Ĉu vi konsilas al mi diri ion? で「私に何か言うように助言しているのですか」という意味になって、誤解の生じる余地はない。
こういう場合エスペラントでは、ke節と意思法を使って。Ĉu vi volas, ke mi diru ion? という表現にすることが多い。これで誤解が生じることはない。
しかし ion を kion に変えると、ややこしくなる。Vi volas, ke mi diru kion? とは言えないのである。なぜなら、これは疑問文なので kion を文頭に置かなければならないからである。では、Kion vi volas, ke mi diru? で良いのか？結論から言うと、この表現で「私に何を言ってほしいの？」という意味になるようである。
しかしなぜこれでよいのか未だに納得がいかない。この文だと、kion は volas の目的語で、「何を欲しているのか」と言う意味になり、「私が何を言う」の「言う」の目的語にならないと思われるからだ。forum で、しばらく納得がいかないと主張してみたが、私のエスペラントのコメント自体が拙いせいで、うまく理解してもらえなかったからか、合理的になぜこの表現が正しい表現になるのかの説明はもらえなかった。どうも未だにすっきりしない。
日本語では「〜してほしい」とか「〜してもらいたい」と言うと「〜」の部分は必ず相手の行為を表すから問題ないが、エスペラントではこういう問題が生じることもある。なお、Kion vi volas igi al mi diri? のように、使役を表す -ig- を使うと明らかに diri するのは「私」になるから、問題はないと思っているのだが、強制的なニュアンスが強くなりすぎるせいなのか、この表現に賛同してくれる人はいなかった。
ところである人が Kion mi diru, viavole. というような言い方もできると教えてくれた。なるほど、誤解の余地もないし良い表現だなと思った。
Tekstaro に
... Nero ... vidante, ke la ĉeestantoj atendas de li iun vorton, li diris ...
...ネロは...その場にいる者たちが彼から何か言葉を期待していると見て取って、....と言った
という文を見つけたが、これを応用すれば、動詞が voli から atendi に変わるし、使役的表現ではなくなってしまうが、近い意味を表せそうである。
Kian vorton de mi vi atendas? 私のどんな言葉を期待しているの？
Kian vorton vi atendas de mi? 私からどんな言葉を期待しているの？
----
以下未稿。使役的内容ではないが、下のような文の構造も、どうも納得がいかない。
Kion ĉi tiu kato pensas, ke ĝi volas fari? この猫は何をしようと思っているのか。
Kie vi pensas, ke Karlo kaŝis la leteron? カルロはあの手紙をどこに隠したと思うか。
参照：
http://plaza.harmonix.ne.jp/~sakat/27sakubun.htm
従属節の一部を主節内に移動することについて
https://bertilow.com/pmeg/gramatiko/vortordo/antaumetado/el_subfrazo.html