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Naismo

私は、以前からエスペラントに目的語を示すための前置詞があるといいのにと感じていた。それはエスペラントで日本語の固有名詞などを表現するのになかなか難儀させられるという印象があったからである。

固有名詞は必ずしも -o で終わらないので、対格語尾をつけにくい場合がある。で、そういう場合、生真面目に無理やり -o を付け、さらに -n を付けるというやり方もあるが、何食わぬ顔で 動詞 + 目的語 の語順で対格語尾なしで目的語としていることが結構ある。しかし、Fundamento には語順で対格を区別するといったことは全く規定されていないのだからなんともスッキリしない。

日本語の場合、例えば、「神戸」を Kobo というのはどうもしっくりこない。なぜなら Kobe 最後の母音 e も固有名詞の大事な一部だからだ。だったらせめて Kobeo と言うべきだと思うが、しかし、いかにも人工語的な匂いが強い。さらにその対格となると Kobeon となるが、もうこうなると音感的にも受け付けにくく感じる。

ちなみにエスペラントの規則に則って「神戸」を Kobe と -o を付けずに言ってもらえる裏ワザがある。Kobe' と-o の代わりにアポストロフィを付ければよい。ザメンホフは初期のうち、私の知っている範囲では、Unua Libro で Zamenhof' と署名している。本来は「Zamenhofo とエスペラント化するべきところ」と心得ていたのだろうと想像するが、後に至ってはアポストロフィを省略するようになった。

話が逸れ過ぎるようだが、他にも最後の母音にアクセント記号をつけるというやり方もありそうだ。つまり、Kobe' と書く代わりに Kobé と書くわけである。つまりエスペラントのアクセントは後ろから2番目の母音に置くのだが、最後の母音にアクセントが置かれるということは、隠れた母音がその後に続くことを暗示するわけである。実はまだ読んだことはないのだが、"Ĉu vi kuiras ĉine? (1996)" という探偵小説があるそうで、その中で、ある地域ではエスペラントの方言を使い、名詞に語尾 o を付けないでこのように書くところがあるというような話が出てくるそうである。う〜ん、アポストロフィよりおしゃれかななどと思ったりする。

ただしこの裏ワザは主格の場合に限られる。体格を Kobén とは書けない。残念!そこで、Kobeon → 前置詞 + Kobe というような表現ができないものかと思っていたのである。

そもそも固有名詞は名前そのものが大事なのだから余計なものを付け加える、つまり語尾を変化させるという発想があまり好きになれない。とはいえ、個人的好みが通じるものでないのは十分承知しているが...

他にも固有名詞ではないが、私は碁を趣味にしているのだが、碁はエスペラントでは特に Fundamento に単音節の名詞は存在できないという規定はないのに、なぜか go は goo とするのが普通のようだ。なんだかシマらない音に響く。 -o で終わるのだから go のままでいいじゃないかと思うのだが、なぜダメなのか?多分アクセントがなくて音の調子が悪い、あるいは go はアルファベートの g の名称だからなどという理由からだと思う。

ところで碁では図を使った解説をよく用いる。そのようなとき対格を示す前置詞があるとても便利である。

仮にその前置詞を 'on' とする。さて上の図を説明するとき、下のどちらの説明文が理解しやすいだろうか?

私には下の文の方がスッと頭に入ってくる。それに図入りの文を読むときは、下のようにそのまま読むこともできる。

勿論無理矢理に 名詞語尾 -o + 対格語尾 -n を付けても良いのだが、画像に対格語尾を付けるというのはなんとも不自然な文章のように思えるがどうだろう。またその文をどのように読めばよいだろうか?

上の文は書くことはできても音読できない。


世の中広いのだからこんなことを考えている人がきっと他にもいるに違いないと思って、ネットで検索していたところ、naismo なるものがあることを知った。

"na" を目的語を区別するための前置詞として使おうと(提案した?)人がおり、それに賛同する人もいるということだ。オランダ人の G. F. Makkink という人が 1990 年に "Nia fundamento sub lupeo" という本の中で初めて使ったようである。

'na' が知られることになる(提案される?)以前の1969年に Manuel Halvelik (本名 : Kamiel Vanhulle, フランドル人) という人が 'no' を提案したようだが、これは "Arcaicam Esperantom" というエスペラントの全面的改造プロジェクト(実用を意図したものでなくエスペラントの古語風仮想言語)としてであったためか、浸透しなかったようである。(ちなみに彼は、Normlingva Esperanto, Gavaro, Popido といった言語も考案もしくは提案しているらしい。)

私は "Nia fundamento sub lupeo" を入手していないし、"na" の提案の経緯については詳しくは知らないのだが、 あるサイトにその本の一部が引用されていた。

Mi uzas novan prepozicion na anstataŭ la akuzativa finaĵo -n, por konvene povi citi sen aldono de -n al ero kiu prefere ne akceptu ĝin. [paĝo 22]

Na estas la nomo kiun WARINGHIEN donis al la voĉhava konsonanto n. Mi kelkfoje uzas tiun nomon kiel prepozicion por eviti la aldonon de -n tie kie tio estas malkonvena, kiel post literoj (ekz p-n), post artikuloj (ekz la-n), post titoloj (ekz Lingvaj Respondoj-n), post citaĵoj (ekz "bonan tagon"-n). Oni ofte ne uzas la akuzativon en tiaj kazoj. [paĝo 41]

私は、引用文中の一部の単語に対格語尾の -n を付けて引用全体を目的語にするといったことが不適当な場面で、対格語尾を付けることなく適切に引用できるように、代用として新しい前置詞 na を使っている。

na は WARINGHIEN が有音の子音である n に付けた名称である。私はときどきその名称を -n を付けるのが不適当な場面、つまり 「p を」、「la を」、「Lingvaj Respondoj を」といったタイトル、「bonan tagon を」といった引用などで使っている。そういった場合においては多くは対格が使われていない。

「na は WARINGHIEN(エスペラント・アカデミー会長 1963-1979) が有音の子音である n に付けた名称である」というのは、Ekzercaro §1 にアルファベットの子音は o を付けてその名称とすると明記されているが、いくつかの代替名称もあって、その1つがWARINGHIEN [Gaston Waringhien] が提唱した a, ba, co, ĉo, da, e, fo, ga, ĝa, ha, ĥo, i, jo, ĵa, ko, lo, mo, na, o, po, ra, so, ŝo, to, u, ŭo, va, za であるという意味のようである。これによると n の 名称は na である。[参照]

nasimo で提案されている 'na' の使用法は、なんでもかんでも前置詞として使うというものでもないし、対格語尾 -n にとって代えようというものでもないが、私が期待していたような用途より広いようである。例えば、

などである。

しかし 'no' であれ 'na' であれ、また応用範囲が限定的であれ汎用的であれ、多数派ではないし Akademio から公認されてもいない。PIV にも載っていないし、PMEG も反対の立場のようだ。たぶん今後もよほどのことがない限り公認されることはないだろう。

'na' の使用が拒否される最大の理由は、Fundamento de Espaeranto に抵触すると考えられるからだが、Vikipedioによると、

La plej grava argumento kontraŭ na estas, ĉar ĝi estas konsiderata kontraŭfundamenta. Tiu konsidero baziĝas sur la klarigo, ke ĝi estas formo nova al la fundamenta n-finaĵo por marki la akuzativon kaj kiel tia antaŭ ĝia ekuzo devas esti iel aprobita de la Akademio de Esperanto.

拒否側の最も重要な主張は、前置詞として na を使うことは、Fundamento に抵触するとの理由からである。この考え方は以下のような説明に基いている。すなわち、前置詞としての na は、目的語の目印として語尾に n に付けるというエスペラントの基本の形式に対する新しい形式であり、そして、このような使用を始めるには、その前に Akademio de Esperanto による何らかの賛同を得なければならないということである。

一方、それに対する反論は、

Argumento kontraŭ la opinio ke "na" estas nefundamenta estas, male, ke ĝi ĝuste savas la distingon de akuzativo, distingo kiun postulas Fundamento sed kiun malobservas multaj esprimoj sen la vorteto "na".

前置詞としての na が Fundamento に抵触するという意見に対向する主張は、まるで反対であって、前置詞 na こそが、目的語を区別するという Fundamento の要求に寄与しているのであって、多くの na を使わない表現の方が、この要求に寄与していない。

という主旨のようだ。少々論点が噛み合っていない印象を受ける。

反対派は nefundamenta だからというが、実際目的語に -n を付けない表現がまかり通っているのを放置するのが、lauxfundamenta だとでもいうのだろうか?Fundamento には語順で目的語を区別するとは書いてないし、対格語尾を省略してもよい条件など書かれていない。それに "ĝi estas formo nova al la fundamenta n-finaĵo por marki la akuzativon, ..." だからというが、"aldonita alternativa formo" なのであって、対格語尾 'n' を廃して前置詞を使おうと意図するものではない。しかも使用の前提として、Akademio のaprobo が必要だというが、Aakademio は人々によって実験的に使われる新単語をいろいろな角度から判断して、後から公認するのであって、実験的な新単語の利用まで縛る権利はないと思われるのだがどうだろう。

一方 naisto は、Fundamento は目的格を区別することを求めているというが、Fundamento には名詞の対格だけは語形変化で区別し他の格は語形変化でなく前置詞で区別すると明らかに書いてあり、語順以外の方法を用いてでもどんな時も目的語であることを区別できるようにしなればならないといった要求を明確に提示しているわけではない。

あまり論議に不毛の加わらない方がよい。私にはいずれにしても Fundamento の規定自体が対応不能の状況を生み出しているように思える。

私としては、 naismo の適用法が適切なものかどうかはさておいても、このような前置詞があることで、意思疎通を正確にできるという理由で試みとして使ってみたい気がする。「あなたのはエスペラントじゃない」と言われれば、今のところとりあえず「そうです。偽エスペラントです」と答えるより仕方ないであろう。

余談

ちなみに私は、'no' や 'na' のことを知る以前にこのような前置詞があるとしたらどんな単語がよいかと、夢想したことがあって、概ね 'on' が良いのではないかと思っていた。つまり、対格名詞語尾 'on' は sufikso としても使えるし、prepozicio としても使えるというわけである。

今でも 'no' や 'na' は単音節の上に母音で終わるので、音として次の単語と区切りがつきにくそうで不利なように思われる。事実前置詞も含めて語根のまま使われる単語は子音で終わるものが多い。特に多いのは ŭ だが、ザメンホフがそうしたのは上に書いたような理由からではないかと想像する。

それに 'na' の由来に正当性がないように思われる。エスペラント・アカデミー会長が本当に n の名称を 'no' から 'na' へ改称したとしたら、そのことこそ kontarŭfundamenta だと思うが、さらにそれを前置詞として転用することに親近感が持てない。n の名称を前置詞として転用するというのなら 'no' の方がまだしもましではないだろうか。

しばらく自分の文章に Tiu cxi pagxo estas skiribita en pseuxdoesperanto, en kiu la vorteto 'on' estas uzata kiel ne nur sufikso sed ankaux prepozicio por klare indiki rektan objekton. とでも断り書きをしておいて、実際に使ってみようかなと考えてみたりしている。不快に感じる人もいるだろうが、文章自体の意味は、場合によってはより正確に理解してもらえると思うから。(......碁の紹介ページで実際にやってみた。そこでは no を使った。)


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