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エスペラント入門

このページはエスペラントを独習している中級レベルの者が自分用のまとめのつもりで書きかけたものですが、生意気にも入門用テキストの体になっています。間違いがあるかもしれませんので、訂正すべき点などがありましたら、ご指摘・ご意見をお寄せいただけると有難いです。作成途中ですので、少しづつ内容を充実していきたいと思っています。

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アルファベット

エスペラントのアルファベットは28文字です。

Aa, Bb, Cc, Ĉĉ, Dd, Ee, Ff, Gg, Ĝĝ, Hh, Ĥĥ, Ii, Jj, Ĵĵ, Kk, Ll, Mm, Nn, Oo, Pp, Rr, Ss, Ŝŝ, Tt, Uu, Ŭŭ, Vv, Zz.

そのうち a, e, i, o, u の5文字が母音で、残りの23文字が子音です。アルファベットとして読み上げるときは、母音はそのままで、子音はオ段で発音します。アルファベットを読み上げるということは文字の名称を読み上げるということです。つまり母音で発音する文字の名称は、a, e, i, o, u で、子音で発音する文字の名称は、bo, co, ĉo, fo, ..... zo ということになります。

アルファベットの発音をカタカナで表すことは到底できませんが、一応カタカナで示し、注意するアルファベットについて説明を加えておきます。

A (ア), B (ボ), C (ツォ), Ĉ (チョ), D (ド), E (エ), F (フォ), G (ゴ), Ĝ (ヂョ), H (ホ), Ĥ (ッホ), I (イ), J (ヨ), Ĵ (ジョ), K (コ), L (ロ), M (モ), N (ノ), O (オ), P (ポ), R (ォロ), S (ソ), Ŝ (ショ), T (ト), U (ウ), Ŭ (ウォ), V (ヴォ), Z (ゾ)

c ツォ [ts]  
ĉ チョ [tʃ]  
g [g]  
ĝ ヂョ [dʒ] 「チョ」を濁らせた音(舌を弾く、比較 ĵo)
ĥ (ッ)ホ [x] 「ゴッホ」の「ッホ」のように喉の奥から発する
j [j]  
ĵ ジョ [ʒ] 「ショ」を濁らせた音。舌を弾かない。
r ()ロ [r] べらんめー調で。「ロ」を素速く発する感じ。
ŝ ショ [ʃ]  
ŭ ウォ [w]  

単語の発音とアクセント

エスペラントは1文字が1音に対応しているので、基本的に同じ文字を異なる音で発することはないし、同じ音を異なる文字で書くこともありません。書いてあっても発音しない黙字もありませんから、書いてある通りをローマ字式にそのまま読みます。

ただし、ŭ と j の発音はちょっと注意が必要です。

ŭ はアルファベットとして読み上げる時は「ウォ」とワ行オ段で発音しますが、単語の中では、to, ropo, ant のように必ず母音に続いて現れるので、前の母音に続けて aŭ(アゥ)、eŭ(エゥ)のように軽く「ゥ」を添えるように発音します。

aŭto アゥト(自動車)、eŭropo エゥローポ(ヨーロッパ)、antaŭ アンタゥ(〜の前に)

j は ŝajni、tuj のように母音に続いて現れ、しかも次の文字が子音かまたは次に続く文字が無い場合は、aj(カィ)、uj(ウィ)のように軽く「ィ」を添えるように発音します。しかし jaro や vojo のように次に母音が続く場合は、ja(ヤ)、jo(ヨ)のようにヤ行で発音します。

ŝajni シャィニ(〜ように思える)、tuj トゥィ(すぐに)、jaro ヤーロ(年)、vojo ヴォーヨ(道)

アクセントは常に後ろから2番目の音節に置かれます。アクセントの方法については、決まりがあるわけではないので強く発音してもいいし、高く発音してもかまわないのですが、普通は、少し強めに伸ばして発音すると説明されていることが多いです。

英語との違いなどを意識して、気をつけて発音すべき文字を含んた単語を幾つか並べてみました。

celo ツェーロ(目的) ĉielo チエーロ(空) giganto ギント(巨人) ĝardeno ヂャルデーノ(庭) ĝis ヂス(〜まで) ĥemio ッヘミーオ(化学) jaro ヤーロ(年) ĵurnalo ジュルナーロ(新聞) sidi スィーディ(坐っている) ŝerci シェルツィ(冗談を言う) honesta ホスタ(正直な) ekzemplo エクムプロ(例) pingveno ピングヴェーノ(ペンギン) kunnaskita クンナスキータ(持って生まれた) adjektivo アドイェクティーヴォ(形容詞) adiaŭ アディーアゥ(さようなら) antaŭa アンタゥア(前の)

品詞と語尾

エスペラントでは、語形が変化する品詞は、その語尾が決まっています。複数形や目的語の語形変化(語尾を付ける)も全く規則的で例外がありません。

名詞の語尾 -o
形容詞の語尾 -a
副詞の語尾 -e
動詞の語尾 辞書形・不定形 -i
現在形 -as
過去形 -is
未来形 -os

複数形の語尾 -j
対格(目的格)の語尾 -n

語尾を取り除いたものを語根といいます。そもそも前置詞や接続詞や間投詞などのように語尾を付けないで語根のまま使われる品詞もあり、これらはまとめて語根語とか小辞などと呼ばれます。このページでは小辞と呼ぶことにします。

小辞の中には副詞的にはたらくものもあり、このまとめではこれを副詞的小辞と呼ぶことにします。副詞的小辞は本来副詞、原形副詞、語根副詞などと呼ばれることが多く、これに対して語尾が -e の本来のいわゆる副詞は派生副詞と呼ばれることが多いです。形容詞的にはたらく小辞もあります。例えば指示詞や数詞などがこれにあたります。

基本文(1)

いきなりですが、英語の SV, SVC, SVO 構文に相当するエスペラントの文を見ていきます。エスペラントは基本的に語順は自由とされているので、この順序になるとは限りません。VS, OVS ... のような語順にすることも可能です。修飾語と被修飾語についても基本的にどちらが先に来てもよいことになっています。ただし語順が重要になってくる場面もあります。

「〜が〜する」「〜は〜する」

SV に相当する構文です。例文は名詞と動詞だけで出来ていて、動詞はすべて現在形です。

mus-o 鼠 / kur-i 走る / roz-o バラ / arom-i 香る / parol-i 話す

例文に出て来る単語の訳を下に示しましたが、語根と語尾はハイホンで区切っています。動詞は辞書形(語尾が -i の形)で示しています。

例文を見ると分かるように、名詞は例外なく -o で終わります。ただし固有名詞は必ずしも -o で終わるとは限りません。世界的に有名な地理名称や著名人などはエスペラント化されて -o で終わるものもありますが、普通の個人名などはそうでないことも多いです。例文の動詞はすべて -as で終わっています。これは例文がすべて現在形だからで、時制が変わると変化します。

単数形の名詞の前に英語のように a とか an とかのような不定冠詞を置くことはありません。いきなり名詞で OK です。

エスペラントの動詞現在形は「〜する」という意味も表しますが、「〜している」という、英語では現在進行形で表すような場合にも使います。(エスペラントにも現在進行形に相当する表現はあります。)

一応発音をカタカナで発音を書いてみます。

ローマ字方式で素直に読み上げる感じです。r と l はカタカナでは区別できませんから、kuras の ra も parolas の la も「ラ」と書いていますが、発音は異なります。

過去形にするには、動詞の語尾を -is に変えます。

未来形は動詞の語尾を -os にします。

somer-o 夏 / ven-i 来る / edz-in-iĝ-i 結婚する ← 配偶者+女+なる / re-ven-i 戻る ← 返す+来る

主語を複数形にしてみます。複数形は名詞の後ろに語尾の -j を付けます。

student-o 学生

-j は、musoj 「ムーソィ」 rozoj 「ローゾィ」 studentoj「ストゥントィ」のように、軽く「ィ」を添えるように発音します。

形容詞や副詞の修飾語を足してみます。形容詞(〜a)は名詞を修飾し、副詞(〜e)は名詞以外を修飾します。

mal-grand-a 小さな / rapid-e 速く / ruĝ-a 赤い / agrabl-e 心地よく / gaj-e 陽気に、活発に、賑やかに / jun-a 若い
*1mal- は正反対の意味を表す接頭辞。

例文の副詞は動詞を修飾しています。形容詞や副詞は基本的に被修飾語の前後どちらに置いても構いません。

さらに複数形にしてみます。エスペラントでは形容詞も複数形にします。

「〜は〜です」

次は SVC に相当する文です。この構文では esti という動詞を使います。esti は英語の be 動詞に相当しますが、英語の am, are, is のように人称や数によって変化することはありません。主語が何人称でも、単数でも複数でも esti 1つです。esti は辞書形なので、実際には estas, estis, estos のように時制語尾を付け替えて使います。

まず、C が形容詞の場合です。

bel-a 美しい

主語を複数形にしてみます。主語を複数形にすると、それに応じて C の形容詞も複数形になります。

la 定冠詞 / grand-a 大きい

la は英語の the に相当する定冠詞です。特定の人や物事に限定して話題にする場合は定冠詞の la を付けます(以下単に冠詞と呼びます)。冠詞以外にも指示詞や代名詞など、話題にする人や物事を限定する他の方法もあります。例文の場合、すでに話題に出てきた、例えば「さっき見たあの鼠」「昨日買った赤いバラ」「あそこで話をしているこの学校の学生達」といったような意味合いで使っていると受け取って下さい。普通 la は単数形の名詞に付けますが、属性に何らかの共通項があれば複数形にも付けられます。なお、冠詞の具体的な使いどころについては後の項にまとめまています

次に C が名詞の場合です。

例文に現れる単語で、複数の語根からできている合成語はハイホンで区切り、成り立ちを簡単に示しています。必要に応じて接辞語根などの意味を説明していることもあります。

  1. Muso estas besto. 鼠は動物です。
  2. Rozo estas floro. バラは花です。
  3. Johano estas junulo*1. ヨハノは若者です。
est-i 〜である / best-o 獣 / flor-o 花 / jun-ul-o 若者 ← 若い+人
*1 -ul- は「人」を表す接尾辞

C が名詞の場合、語順はかなり制限を受けます。S も C も名詞なので、語順を自由にすると SVC か CVS か判断がつかないからです。

SVC の構文は S=C もしくは S∈C(S は 集合 C の要素) という論理構造を表します。S=C の場合、SVC でも CVS でもニュアンスの違いはあるかもしれませんが誤解が生じることはありません。例えば S=C の関係だと「ヨハノは私の一番年長の息子です」は「私の一番年長の息子はヨハノです」と言い換えできます。しかし S∈C の関係だとそうはいきません。「ヨハノは私の息子です」は「私の息子はヨハノです」とは厳密には言い換えできません。ヨハノ以外にも息子がいるかもしれないからです。

C が名詞の場合、常識的には SVC の語順にします。

ただし、この語順が文法上の規則だとはっきり謳われているわけではないので、誤解が生じない範囲内なら、その他の語順で表すことも不可能ではないと思います。

ちょっと面倒くさいことを書きます。学校英語では SVC の C を「補語」と言いますが、このまとめでは 「叙述語」という用語を使うことにします。また、この構文を主語の叙述文と言ったりします。「補語」は英語の complement の訳と思われます。エスペラントにも komplemento という文法用語がありますが、エスペラントの komplemento は学校英語の「補語」とはまったく異なります。

ここまで主語の叙述文には esti を使って表すことを話して来ました。esti は主語と叙述語を繋ぐはたらきをしているので「繋ぎ動詞」とか「繋辞」と言われたりします。しかし、esti は繋ぎ動詞として使われるだけでなく「〜がある」「〜がいる」という意味の「存在」を表す普通の自動詞としても使われます。

esti が存在を表す場合、文の構造は SV になります。なお、確信はありませんが「〜ある」「〜いる」の意味のときは VS の語順がよく使われるように見受けられます。

esti が存在を表す意味でも使われることは、C が形容詞の SVC 構文において、語順に制限を加えることになります。

語順に配慮しないと、形容詞が叙述語なのか修飾語なのか区別がつかなくなります。

「〜は〜を〜する」

次に目的語のある文を見ていきます。SVO に相当する文です。繰り返しますがエスペラントの語順は基本的に自由なので、SOV や OSV などの語順の場合もあります。

目的語は、名詞語尾 -o の後ろに -n を付け、-on とします。

kat-o 猫 / ĉas-i 追う、狩る / rigard-i 見る、注目する / libr-o 本 / leg-i 読む

-n のことを目的語の語尾とか目的格語尾と言ってもよいのですが、エスペラントでは「対格語尾」という用語がよく使われます。-n の主な役割は、それが付いた語が目的語であることの指標になることですが、実は -n はそれだけでなく、例えば「方向・移動先」「形態・状態の変化」「時点、時間・期間」なども表します。こういう場合も含めると「目的格語尾」より「対格語尾」の方が適しているのかもしれません。-n の付いた語を「対格」と言い、これに対して -n のついていない語を「主格」とか「名格」と言います。

目的語を形容詞で修飾してみます。エスペラントでは目的語を修飾する形容詞も対格にします。形容詞語尾 -a にさらに対格語尾 -n をつけるので -an となります。

mal-grand-a 小さい ← 反対+大きい / ruĝ-a 赤い / mal-facil-a 難しい←反対+易しい

さらに目的語を複数形にしてみます。目的語が複数形の場合、名詞は -ojn、形容詞は -ajn になります。

基本文は他にももう少しありますが、別の項目に分けます。

人称代名詞と指示代名詞

普通名詞や固有名詞以外の人・物・事の表し方です。

人称 人称代名詞 所有代名詞
一人称 単数 mi mia
私達 複数 ni nia
二人称 あなた・あなた達 単複同形 vi via
三人称 単数 li lia
彼女 単数 ŝi ŝia
それ(動物・事物) 単数 ĝi ĝia
彼ら・彼女ら・それら 複数 ili ilia
不定人称 人々 複数 oni onia
再帰代名詞 自分 単複同形 si sia

人称代名詞です。2人称の vi は単複同形です。ci という2人称単数形代名詞もありますが、実際には使われていません。「エスペラントの基礎」の中にエスペラントの文法を16箇条にまとめた「エスペラント基本文法」という章がありますが、そこにも ci は載っていませんので、このまとめでも表に入れませんでした。同じく「エスペラントの基礎」にある「練習文集 Ekzerecaro」という章に「普通 ci の代わりに vi を使う」と但し書き付きで紹介されています。

三人称単数形の中性名詞 ĝi は表には、動物・事物とありますが、「練習文集」では小児に対しても使われています。文法上の性に厳格なヨーロッパ言語と違ってエスペラントの場合、あまり杓子定規に捉えなくてもよいと思われます。動物でも性に着目するときは li や ŝi を使うこともできるでしょう。

不定人称の oni は「人」「世間の人」といったような意味で、特定の人を指さないで話題にするとき使います。再帰代名詞 si は後で説明します。

instru-ist-o 教師 ← 教える+人 / bel-a 美しい、素晴らしい / hav-i 持っている / frat-o 兄、弟 / citron-o レモン / ĝoj-i 喜ぶ,うれしく思う
*1 -ist- は従事者、主義者を意味する接尾辞

代名詞は名詞相当なので目的語のときは対格にします。

instru-i 教える / am-i 愛する / respekt-i 尊敬する

人称代名詞に形容詞語尾の -a を付けると所有代名詞になります。mia(私の)、via(あなたの)、ŝia(彼女の)といった具合です。所有代名詞には形容詞と同じように複数形語尾や対格語尾を付けます。

aŭt-o 自動車 / mal-nov-a 古い ← 反対+新しい / vest-o 服 / nov-a 新しい / instru-ist-o ← 教える+人 / vok-i 呼ぶ / nom-o 名前 /instru-ist-in-o 女性の教師 ← 教える+人+女

エスペラントには英語の mine, yours, hers のような独立所有代名詞はありません。私の〜(mia 〜)、あなたの〜(via 〜)、彼女の〜(ŝia 〜) などの 「〜」 の部分が分かっている場合に単に省略するだけです。

上のエスペラントの mia は「私の」という属性を表す形容詞的な使い方ですが、「私のもの」「私のそれ」のような意味合いで独立所有格のように使う場合は、冠詞を付けます。

細かいことになりますが、la mia aŭto のような言い方は誤りということになっています。「冠詞 + 所有代名詞 + 所有物」と3つ続けることはしません。先に「特定の人や物事に限定して話をする場合は定冠詞の la を付けます」と書きましたが、所有代名詞も人や物事を限定するために使います。文法用語を使うとどちらも「限定語」と呼ばれる語に属します。通常 la とそれ以外の限定語は重ねないことになっています。なぜなら所有代名詞 mia によってすでに限定されているのだからさらに la を重ねるのはおかしいという理屈のようです。

ただし、「私のは」「私のそれは」のような言い方で名詞を省略する場合は、la と所有代名詞を重ねることが可能とされています。la は名詞に付けるのもですから、la mia の形で、何かの名詞が省略されていることを暗示します。 何が省略されているかは文脈で判断します

さて再帰代名詞です。次の文を見てください。

pentr-i 描く / kun[前]〜と / lud-i 遊ぶ / infan-o 子ども

この文だと主語の li(彼は) と 目的語の lin(彼を)や 所有代名詞の lia(彼の) が主語と同一人物か、主語とは別の男性のことを言っているのかはっきりしません。そこで同一人物の場合は、lin や lia に代えて再帰代名詞の sin や sia を使います。

これで同一人物であることがはっきりします。

再帰代名詞は主語が3人称や不定人称 oni のときに使います。主語が1人称や2人称のときは使いません。また、si は主語と同一人物を指すのですから、主語の中自体では特別な場合を除いて使いません。

promen-i 散歩する / kun-e 一緒に

「特別な場合を除いて使いません」というのは、主語が具体的な個人を指すのでなく、例えば「(だれしも)己のものはすべて愛おしい」というような場合を除いて、という意味です。

再帰代名詞は主語と同一人物・同一事物を指すと書きましたが、実はその主語は文全体の主語とは限りません。例えば、複文では節の中の再帰代名詞はその節の主語を指すし、修飾句の中にある再帰代名詞はその句の範囲内の意味上の主語を指します。そのため再帰代名詞を実際に扱うのはかなり(ひどく)手こずります。そこで詳細を別の項に分けました。

指示代名詞・指示詞

次は指示代名詞と指示詞です。

指示代名詞 それ(物・事) tio ĉi を添えて近くのものを指す
指示詞
(指示代名詞)
その(人・物・事) tiu

tio は指示代名詞です。日本語の「あれ」「それ」「これ」にあたります。ただし「あれ」(遠称)と「それ」(中称)を区別する指示代名詞はありません。

tio は 人を指すことはありません。また tioj という複数形はほとんど使いません。近くの物や事を指すには tio の前または後ろに小辞の ĉi を添えます。

tiu は基本的に指示詞です。「あの〜」「その〜」「この〜」にあたります。ただし「あの〜」(遠称)と「その〜」(中称)を区別する指示詞はありません。

tiu は人に対しても使い、tio と違って頻繁に複数形になります。ĉi の使い方は tio の場合と同じです。

person-o 人、個人 / flor-o 花 / labor-o 仕事

tio も tiu も目的語には -n を付けます。

kon-i 経験・見聞として知っている(知識として知っているは sci-i)/ vir-o 大人の男性 / vir-in-o 大人の女性←成人男子+女

tiu は指示するものが分かっていて相手も了解できる場合、しばしばそれを省略します。つまり tiu 単独で「それ」という意味の指示代名詞としても使います。下の例文中の括弧で括られた部分はしばしば省略されます。ただし何の脈絡もなくいきなり tiu が単独で出てきたら、「物」や「事」ではなく「人」を指します。

aŭto 自動車 / 美しい、素晴らしい / persono 人 / hom-o 人、人間

tiu は指示代名詞としても使われますから、結局 tio も tiu も日本語にすると「それ」となります。人称代名詞の ĝi も日本語にすると「それ」となります。そこで3者の使い分けを理解しておく必要があります。

指示代名詞としての tiu と tio の違いですが、tiu は上に挙げた例文のように指示するものが分かっていて相手も了解できる場合の省略表現ですから、「その車」「この花」のように「その + 名詞」で言い換えができるものを指すときに使います、tio は「そのこと」とか「そのもの」としか言い換えできない場合に使います。

例えばある物やある人が倒れるのを目撃したとします。「私はそれを見た」というとき、「倒れたという出来事」を指すときは tio を使い、「倒れた物」や「倒れた人」を指す時は tiu を使います。

目の前に何か知らない物が置いてあって、「それは何ですか」と聞くときは tio を使います。本が何冊か置いてあって(本であることが分かっていて)どれかを指して「それは小説ですか」と聞くときは tiu を使います。

人称代名詞の ĝi も日本語にすると「それ」となりますが、 基本的に人称代名詞は話の中に出てきた事物・人をもう一度取り上げて使うときに使います。それに対して指示代名詞は文脈から離れた事物・人を指して話題にするときに使います。難しい用語ですが、内部指示/文脈照応、外部指示/外界照応というような言い方があるそうです。どれほど厳密に使い分けられているかよくは知りませんが、原則はそのようです。ただし tio は文脈中のまだ名詞で表現されていない事物や、これまでに出てきた会話などの内容を指して言う時にも使われます。

rakont-i 物語る・話す / bela 美しい、すばらしい / fabel-o 童話 / amuz-a 面白い、楽しい / ver-a 本当の

もう1つ、tio は物事をまとめて取り扱い、tiu は個々の物事を指すという違いがあります。ですから tio を使って下のような言い方が可能です。何人かで話をしていて、ある人がいろいろアイデアを出したとします。このとき、

ide-o アイデア、思想、観念

という表現が可能です。tio は彼のいろいろなアイデアをまとめて指しています。tio は単複同型とも言えるかもしれません。ただし tio kaj tio(それとそれ)の意味で tioj と表現することは理屈としては一応可能です。(kaj は 英語 の and に相当)

指示形容詞と指示副詞

指示代名詞が出てきたのでついでに指示形容詞と指示副詞をやっておきます。

代名詞的 物・事 tio それ
指示詞的
(代名詞的)
人・物・事 tiu その〜、その人、それ
所有 ties その人の〜、それの〜
形容詞的 性質・状態 tia そんな
副詞的 場所 tie そこに
tiam その時
方法・様相 tiel そのように
理由 tial そういう理由で
数量・程度 tiom それほどの

表の上2つ(tio, tiu)はすでにやりましたから残りについてシンプルな例文を挙げておきます。「その人の〜」「それの〜」といった所有代名詞に相当する所有指示詞と言ってよさそうなものもあるので一緒にやっておきます。

指示形容詞と指示副詞についても ĉi を添えることができます。

ties

ties は「その人の〜」「それの〜」という意味の、言わば所有指示詞ですが、「〜」の部分が分かっている場合は「その人のもの」「それのもの」という意味で所有物・所属物自体を表すこともできます。

vest-o 服 / de[前] 〜の / merit-o 長所、利点 / facil-ec-o 容易さ ← 容易+性
tia

tia は「そんな〜」という意味で形容詞相当ですが、「〜」の部分が分かっている場合、ties と同じように「〜」の部分」を省略し、「そんなの」という意味を表すこともあります。tia は形容詞相当ですから、形容詞と同じように複数形語尾や対格語尾を付けます。

mult-e-kost-a 高価な ←多い+副詞+費用がかかる / vol-i 欲しい、〜したい・意志を持っている / hav-i 持っている

品詞分類上 tia はあくまで形容詞相当であって形容詞ではありません。最後の a は形容詞語尾ではありません。tia 全体がこれ以上分割できない小辞です。

tie

tie は「そこで」「そこにおいて」という意味で、場所を表す副詞的な指示詞です。

aĉet-i 買う / vest-o 服

「そこへ」「そこから」「そこまで」といったように移動を表す場合は意味に応じた前置詞を置きます。

al[前] 〜へ / ir-i 行く / hireaŭ 昨日 / de[前] 〜から / ven-i 来る、相手のところに行く / ĝis[前] 〜まで / akompan-i[他] 同行する
tiam

tiam は「その時」「その時に」という意味で、時を表す副詞的指示詞です。「その時から」「その時まで」「その後」などのような表現には適当な前置詞を置きます。

aĉet-i 買う / vest-o 服 / de[前] 〜から / vol-i 欲しい / post 後(時間・空間)/ ĝis[前] 〜まで / port-i 身に付ける、携帯する、持ち運ぶ / super-vest-o 上着・オーバー ← 上+服
tiel

tiel は「そのように」という様相や方法、程度を表す指示副詞です。副詞相当ですから、動詞にも係りますが形容詞や副詞にも係ります。

  1. Li tiel faris la veston. 彼はそのようにしてその服を作りました。
  2. La vesto estas tiel multekosta. その服はそんなにも高価です。
  3. Li tiel lerte faras vestojn. 彼はそんなに上手に服を作ります。
far-i 作る、する / mult-e-kost-a 高価な ← 多い+副詞+費用がかかる / lert-e 巧みに・上手に
tial

tial は「そういう理由で〜」「だから〜」という意味を表す指示副詞です。

tre[副小]とても / bel-a 美しい / vol-i 欲しい
tiom

tiom は「それほどの」「それほどの数の」「それほどの量の」という、数量あらわす指示副詞です。tiom は単独で「それほど多数の(多量の)」という意味でも使われます。物の数量ではなく行為や現象の程度を表すこともあります。

mult-e 沢山・数多く / el-spez-i 支出する ← el 出る+出納する

基本文(2)

残りの基本文を見ていきます。

「〜が〜に〜をする」

直接目的語と間接目的語を含む文です。英語では、直接目的語と間接目的語を語順で区別する方法、つまり SVOO 文型と、間接目的語を前置詞句で表す方法の2通りありますが、エスペラントでは間接目的語は常に前置詞句で表します。

prezent-i 見せる・紹介する / al[前]〜に / don-i 与える / ring-o 指輪、輪 / send-i 送る / patrin-o 母親 / prunt-i 貸す、借りる / aŭt-o 自動車

ほとんどの場合、間接目的語には前置詞 al を使います。al は日本語の「〜に」にあたる前置詞ですが、下の例文のように por(〜のために)を使うこともあります。

kuir-i (加熱して)料理・調理する / varm-a 温かい、熱い、暑い / sup-o スープ / far-i 作る、する / tabl-o テーブル / por[前]〜のために / fil-o 息子

下のように de(〜から) を使うこともあります。

pet-i 頼む・請う・乞う / de 〜から / psalm-libr-o 聖歌集←聖歌+本 / prunt-i 借りる、貸す / ĉambr-o 部屋

下のように、日本語だと「〜に」と表現するところを直接目的語にする場合があります。動詞によっては常にこの形をとるものもあるので、動詞が何を目的語にとるかを辞書の例文などで確認する必要があります。

pri[前] 〜について / pardon-o 許し、赦し / inform-i 知らせる / pri[前]〜について / demandi 訊ねる・聞く / dank-i 感謝する / pro[前]〜のために(原因・理由)/ help-o 助け / regal-i おごる・もてなす / per[前]〜で(道具、手段)/ trink-aĵ-o 飲み物←飲む+もの
「〜が〜であるように〜する」「〜が〜であると〜する」

これは英語の SVOC に相当する文です。エスペラントでは O を対格にし、C を主格にします。

farb-i ペンキを塗る ← farb-o ペンキ・顔料・絵具 / mur-o 壁 / blank-a 白い / nom-i 名付ける / ge-patr-o-j 両親 ← 男女+親(父) / far-i 作る / kurac-ist-o 医者 ← 治療する+人 / elekt-i 選ぶ / prezident-o 大統領
*1 ge- は男女による集合を表す接頭辞

これらの文はすべて「S が O estas C の関係になるように〜する」という意味になります。彼がペンキを塗って muro estas blanka(壁は白い)の関係になるようにする。父が名づけて mi estas Jonano(私はヨハノ) の関係になった。といったような具合です。同じ構文で下のような意味を表すこともできます。

trov-i 見つける、気づく、思う・評価する / bon-gust-a 旨い←良い+味+の / opini-i 〜と考える、意見をもつ / ide-o 考え / bon-a 良い、すばらしい / knab-o 少年 / vid-i 見る、見て気づく、会う / patrin-o 母親 / koler-a 怒っている / mal-san-ul-o 反対+健康な+人 / sent-i 感じる / si 自分 / lac-a 疲れている

これらの文は「S が O estas C の関係であるのを〜する」という意味になります。la vino estas bongusta(そのワインは美味しい) ということが分かった。la ideo estas bona(その考えは良い) というふうに思った、といった具合です。

なお、学校英語では SVOC の C を目的格補語と習いましたが、このまとめでは「目的語の叙述語」と言うことにします。またこのような構文を目的語の叙述文と言ったりします。

無主語文

最後の基本文です。エスペラントには主語の無い文があります。これには3つの場合があります。その1つは天候や自然現象を表す自動詞を使う場合です。

pluvi 雨が降っている / neĝ-i 雪が降る / vent-i 風が吹く / vesper-iĝ-i 日が暮れる ← 夕方+なる

これらの文は英語では、"It is raining" , "It will snow" のように仮主語(形式名詞)の it を使って表すことが多いですが、エスペラントでは無主語文にします。構文で言うと V ということになります。全て動詞一語で表されていますが、それぞれ pluvo(雨), neĝo(雪), vento(風), vespero(夕方)という名詞に動詞語尾を付けて動詞化したものです。vespero には「〜になる」という意味の接尾辞 -iĝ- も付けられています。エスペラント独特の表現ですが「動詞が主語を含んでいる文」という言い方で説明されていたりします。

「動詞が主語を含んでいる文」とは言い難いですが、自然現象を表す動詞として degeli があります。

これは雪や氷などが解けることを表しますが、自然現象に限って使う言葉で、「冷蔵庫の氷が解ける」ときには使いません。

無主語文の2番目は、自然現象も含めて、周辺的、身体的、心理的などの様々な状況を表す文です。これには叙述文を使う方法と自動詞を使う方法があります。​

mal-hel-e 暗い← 反対+暖かい / mal-varm-e 寒い ← 反対+暖かい / bon-e 良く / bedaŭr-ind-e 残念な ← 残念に思う+べき

どんな種類の状況についてなのかは文脈で判断します。主語はありませんが繋ぎ動詞を使った叙述文です。このような文も英語では "It's dark"、"It's cold" 、"It's good(okay)"、 "It's unfortunate" のように it を使って表しますが、エスペラントでは無主語文にします。ただし叙述語を副詞にします。英語で it を使って表されるような内容の叙述語は副詞にすると考えてもまんざら間違いではないように思います。

同じような内容を自動詞を使って表すこともあります。

mal-hel-i 暗い ← 反対+明るい+動詞語尾 / bon-i 良い(動詞)←良い+動詞語尾

こういった表現も可能です。形容詞に動詞語尾を付けるだけで動詞文に変えることができます。ただしどんな場合でも叙述文に代えて動詞文で表せるかというと、やはり習慣があるので、多くの人が従っている表現にする方がよいでしょう。叙述文と動詞文が全く同じ意味で同じニュアンスだとは限りません。どういったときにこの形が使われているかは、読書や会話を通じて習得していくしかないでしょう。

下の2つの文は 一見 SVC の構文に見えますがやはり無主語文です。

ekster-e 外で / hodiaŭ[副小]今日 / seren-e 晴れている

ekstere は「外において」という場所を表す副詞であって名詞ではありません。hodiaŭ も語尾が -o でないことから分かるように名詞ではありません(語尾を持たない副詞的小辞)。2つとも構文としては先に挙げた状況を表す無主語文とまったく同じで VC です。これらの文は先に挙げた文よりも状況を制限していると言えそうです。

無主語文の3番目は動詞 temi(話題にする)を使う文です。temi は主語を必要としない動詞です。

politik-o 政治 / ver-ŝajn-e 多分・おそらく←本当+〜のような

temiは「問題は〜です」「〜がポイントです」というようなニュアンスを表すのによく使います。

rezult-o 結果 / fraz-o 文 / erar-a 誤った / vort-o 単語

このように temi は日本語にすると「〜を話題にする」と訳せる場合もありますが、日本語では他の表現にした方が近いニュアンスになる場合もあります。

注意点があって、 temi は自動詞なので何を主題とするかは対格ではなく前置詞 pri(〜について)を使って表します。

また、temi は主語を持つこともできますが、人を主語にすることはないようです。

rakont-o 物語 / knab-in-o 女の子 ←少年+女 / probable おそらく / cert-ec-o 確かさ ← 確かな+らしさ・性

以上で基本文は終わりですが、少し補足的な説明を加えます。

SVC 構文についての補足

基本文(1)で SVC の構文には esti を使うと書きましたが、実は esti 以外にも SVC の構文に使われる動詞があります。

以下の文は、すべて SVC の構文です。

ŝajn-i 〜のように思える / riĉa 金持ちの・裕福な / aspekt-i 〜のように見える / matur-a 成人の / far-iĝ-i 〜になる / patr-o 父 / rest-i 留まる、残る、〜のままである / mal-nov-a ← 反対+新しい / aper-i 現れる、〜のように見える / mensog-ant-o 嘘を吐く+ている人

esti 以外にも英語の seem(〜のように思える), look(〜のように見える), become(〜になる), remain(〜のままである), appear(〜のように見える)などに相当するような動詞は SVC 構文を作ります。

下のような表現もあります。

kant-i 歌う / mal-ĝoj-a 悲しい←反対+楽しい / vir-in-o 成人女性 / sid-i 坐っている / sol-a 一人きりの、唯一の / ven-i 来る / (la) unu-a 一番の、最初の ; unu-e 一番に、最初に

sidi, kanti, veni は完全な自動詞です。叙述語がなくても完璧に文として成り立ちます。しかしこういった動詞も主語の叙述文に使うことができます。例文中の形容詞を副詞にすると意味が変わります。malĝoja を malĝoje にすると「歌っているときの気分が悲しかった」という意味でなく「悲しそうに歌った」という意味になり、歌う方法を表すことになります。sola は 「ひとりきりの」とか「唯一の」という意味なので、副詞にすると「ひとりで」という意味にもなりますが、「他にすることもなくただ坐っている」という意味にもなります(sole は 「ただ~だけ」という意味の副詞的小辞 nur と同じ意味で使われることがあります)。la unua を unue にすると「一番乗りで」という意味ではなく、「彼は何はおいてもまず駆けつけて来た」のような意味にも受け取れます。

少し強引かもしれませんが、下のようなニュアンスだと解釈すればよいかと思います。kaj は英語の and に相当します。

形容詞でも副詞でも意味にほとんど差がない場合もあるでしょうし、厳格に区別しなければならない場合もあります。

  1. Tiu vorto sonas stranga(strange). その言葉は奇妙に響く(聞こえる)。
  2. Tiu seĝo estas komforta. この椅子は快適だ。
  3. *Mi estas komforta.* 私は快適だ。(誤)
  4. Mi estas komforte. 私は快適だ。
vort-o 言葉、単語 / son-i 響く、聞こえる / seĝ-o 椅子 / komfort-a

1. の場合 stranga でも strange でもそれほどニュアンスは変わらないと思います。2. の komforta は椅子が「心地よくさせる」という意味です。したがって 3. の文は意味的に奇妙になります。4. の komforte は副詞なので叙述語ではありません。これは esti(存在する、いる)のあり方を説明しています。ちょっと難しいですが、komforte は en komforta cirkonstanco「快適な状況の中で」を副詞に代えたもので、「私は快適な状況の中にいます」というニュアンスを表現したものです。

以上で基本文は終わりです。

状況語と前置詞句

状況語(補語)

すでに書きましたがエスペラントの komplemento 「補語」は学校英語のそれとは全く違います。エスペラントの補語は、主語・動詞・目的語・叙述語以外の文の要素を指します。これは動詞に係って、時間・場所・間接目的語・方法・手段・道具・材料・起点・方向・着点・目的・理由などの様々な状況を表す、副詞もしくは副詞相当の語句です。文法書によっては adjekto「状況語」と呼ばれます。文全体に係る場合もあります。

しかし、komplemento の定義は文法書によってかなり違っていて、叙述語や目的語も komplemento に含めて、叙述補語・目的補語・状況補語といった用語を使う立場もあるようですまた主語ですら補語としたり、さらには名詞、形容詞、副詞に係る前置詞句などまで komplemento に含める立場もあるようです。このまとめでは、以上のように「補語」の定義がまちまちで紛らわしいので、これ以降使う機会があれば「状況語」を使うことにします。

なお、状況語は副詞的にはたらくので、句や従属節が状況語の場合、単に「副詞句」とか「副詞節」などとも呼ばれます。

ĝarden-o 庭 / mult-a 沢山の / bird-o 鳥 / kant-i 歌う / tag-o 日 / fajr-eg-o 大火事←火+大きい / okazi 起こる / vilaĝ-o 村、田舎

下線で示した語句が状況語です。状況語は副詞、前置詞句、対格の形をとって動詞に係ります。従属節もしばしば状況語的にはたらきますが、この項では取り扱いません。

* 例文中の iun tagon は対格ですが、これは en iu tago(ある日に)という前置詞句の代替表現で、目的語ではなく状況語です。詳しくは「目的語以外を表す対格」の中の「時点・時間を表す対格」や「前置詞 je と対格」の項を参照してください。今の時点では、対格が目的語でなく状況語のこともある、とだけ理解しておいてください。

前置詞句

エスペラントの文の中には前置詞句による状況語がないと文として意味をなさない場合がありますので、取り上げておきます。

al[前]〜に / aparten-i al 〜に所属する、〜の所有物である / ludo 遊び / plaĉ-i al 〜が気に入る / ŝrank-o 箪笥・ロッカー / el[前]〜の中から、〜で(材料)/ konsist-i el ~から成り立つ、〜でできている / lign-o 木材

例文から前置詞句を取り除くと全体として意味のない文になってしまうので必須の要素です。しかし前置詞句は意味的には必要であるが、それがなくても文自体は成り立つという在り方で文中に存在することも多いです。

kuŝi-iĝ-i 横たわる、横になる ← 横たわっている+なる / por[前]〜するための、〜するために(目的)/ ripoz-o 休息、休憩 / manĝ-i 食べる / sup-o スープ / per[前] 〜で、〜を使って(道具・手段) / kler-o スプーン

前置詞句は状況語としてだけでなく、名詞を修飾する場合や、形容詞・副詞・不定詞を補足する場合があります。このような前置詞句は修飾される語や補足される語の後ろに置かれるのが普通です。(不定詞はまだやっていませんから今の時点では無視してください。)

arb-o 木 / mal-sek-a 濡れた、湿った←反対+乾いた / de[前]〜によって、〜で、〜から、〜の(起因、起点、所属などを表す)/ tas-o コップ / plen-a いっぱいの、満ちた / nord-e 北に、北で / sufer-i 苦しむ / mal-san-o 病気←反対+健康)

* larmoj 多くのテキストで複数形で使われている

前置詞の後ろには、基本的に主格の名詞が来ますが、副詞が来ることもあります。

hieraŭ[副小] 昨日 / malantaŭ-e 後ろで、後ろに

いくつかの理由で前置詞の後ろに対格の名詞がくることもあります。また不定詞や従属節が来ることもあります。これらの基本的なことについては、後の項目の中で取り上げました。ただ、ある使い方について、前置詞の後ろにくる語を対格にする人とそうでない人がいるという実状があります。それについては下のリンクしたページの中で考察しましたので、興味のある方は読んでみてください。

下に一応前置詞の一覧を示しましたが、実際の使い方は文の中で個々に見ていくべきでしょう。コチラに例文とともに少し詳しくまとめてみました。例文も入門レベルより少し難しいので、とりあえずこのまとめの方を先に一通り読まれることをお勧めします。

al 〜
〜に(間接目的語);〜へ(方向・移動先);〜に(位置・所属・適用);〜にとって(待遇・応待・主観)
anstataŭ 〜
〜の代りに
antaŭ 〜
〜の前に、〜の前の(時間・空間);malantaŭ 〜の後ろに(空間)
apud 〜
〜の傍らに
ĉe 〜
〜のところで
ĉirkaŭ 〜
〜のまわり;およそ
da 〜
〜分の量の
de 〜
〜の(所属他各種関係);〜から、〜で(起点・原因);〜によって(受動文の行為者)
dum 〜
〜の間(時間);〜の一方で
ekster 〜
〜の外に
el 〜
〜の中から(場所・状態);〜で(材料);〜の内の(抽出)
en 〜
〜の中で(場所・時・集合);〜に、〜で(行事・出来事);〜で(状態・形式)
ĝis 〜
〜まで、〜までに
inter 〜
〜の間に
je 〜
ピッタリする前置詞がないときに使う融通前置詞
kontraŭ 〜
〜に向かい合って;に対して;〜に逆らって
krom 〜
〜を除いて;〜の他にも
kun 〜
〜とともに、〜と;〜付きの
laŭ 〜
〜に沿って;〜に従って;〜によれば
malgraŭ 〜
〜にもかかわらず
per 〜
〜で、〜を以って(道具・手段)
po 〜
〜ずつ
por 〜
〜のために(目的・用途・受益者);〜にとって(有益性・評価);〜時間の・〜日間の(計画された時間);〜に対して(対価);〜につき・〜あたり(分配)
post 〜
〜の後で(時間);後ろに(順序)
preter 〜
〜のそばを通って
pri 〜
〜に関して
pro 〜
〜のために(原因・理由・動機);〜に対して(対価)
sen 〜
〜なしで
sub 〜
〜の下に
super 〜
〜の上方に(非接触)
sur 〜
〜上に、表面に(接触)
tra 〜
〜を貫いて
trans 〜
〜を越えて

同格

ある内容のことを別の言葉で言い換えて併記したものを「同格」と言います。

  1. Ni japanoj 私達日本人(代名詞・名詞)
  2. Karlo, mia amiko 私の友達、カルロ(名詞・名詞句)
  3. ĉi tie, en Kioto ここ、京都では(副詞・副詞句)
  4. hodiaŭ, en mia naskiĝtago 今日、私の誕生日に(副詞・副詞句)
japano 日本人 / mia amik-o 私の友達 / ĉi tie ここ ← 近い+そこ / hodiaŭ 今日(において) / en[前置詞]〜で、〜の中で(場所)、〜に(時間) / nask-iĝ-tag-o 誕生日←生む+自動詞化+日

1. 2. は名詞もしくは名詞相当句の、3. 4. は副詞もしくは副詞相当句の同格です。

名詞の同格の場合、似て非なる表現があります。

  1. Karlo, mia amiko 私の友達、カルロ
  2. la urbo Kioto 京都という街
urb-o 街、都市

1. は単純に別の言葉で言い替える表現で 「A つまり B」といった意味で、厳密な意味で同格です。同格の場合、「つまり」に相当する nome や tio estas を間に補うことができます。2. は上位概念の名詞を先に言い、具体的な名前を後に続けて「B と呼ばれる A」といった意味になります。2つには大きな違いがあり、対格にするときはっきりします。

  1. Mi amas Karlon, mian amikon 友達のカルロを愛しています。
  2. Mi konas la urbon Kioto 京都という街を知っています。
    am-i 愛している / kon-i (見聞として)知っている

1. は同格をなすものが両方とも格の変化に応じます。一方 2. は先行する名詞だけ格が変化します。2. は厳密には 「同格」ではなく「指名語*」と呼ばれます。なぜ後行する名詞が対格にならないかというと、これは関係詞文もしくは分詞修飾の省略表現だからです。関係詞も分詞もまだやっていませんから英語で示すと、

のような表現の括弧内の文言を省略したものです。対格に語形変化があるエスペラントですから the town に相当するurbo だけ対格になるというわけです。指名語の場合「という」「と呼ばれる」に相当する kiu nomiĝas を間に補うことができます。

その他に、英語では下のように名詞を続けることがありますが、これは同格とは関係ありません。

  1. Esperanto club エスペラントクラブ
  2. music festival 音楽祭

これは前の名詞が後ろの名詞を修飾しています。エスペラントでは名詞が名詞を修飾する表現は無いとされるので、このままエスペラントにすると文法的に誤りになります。

  1. Esperanto klubo(誤)
  2. muziko festivalo(誤)

この場合は、1.一方の修飾している側の名詞を形容詞にするか、2. 前置詞 de (英語の of に相当)を使うか、3. ハイホンで繋げて1つの名詞にするのが正しいとされます。

  1. Esperanta klubo エスペラントのクラブ
    = klubo de Esperanta エスペラントのクラブ
    = Esperanto-klubo エスペラント・クラブ
  2. muzika festivalo 音楽の祭典
    = festivalo de muziko 音楽の祭典
    = muziko-festivalo 音楽祭

一般名詞として使えるのであればハイホンを除いたり、さらに先行している名詞の語尾を取り除くこともできるでしょう。(例:muzikofestivalo, muzikfestivalo)

*「指名語」は nominacio の訳として使いました。Lernu というエスペラント学習のための多言語サイトの文法講座で使われています。英語版では predicative nominative 「?叙述語的主格」と訳されています。日本語版は「修飾名詞」と訳されています。エスペラントでは名詞が名詞を修飾することは文法的に誤りですが、関係詞文もしくは分詞修飾の省略表現によってできたこの形は、見た目には名詞が名詞を修飾する形になっています。名詞を修飾する特殊な形というほどの意味で「修飾名詞」という用語を使っているのでしょう。

エスペラントの「同格」に相当する用語は apozicio ですが、これは「側に位置するもの」というほどの意味で、日本語の「格を同じくするもの」という意味ではないようです。エスペラントで書かれた文法書を読むと、どうやら apozicio は、名詞に限って使われ、名詞とその言い換えが隣同士に並べられていているときの、後ろに置かれた方を指す言葉のようです。ですから副詞の言い換え表現を同格として説明しているのを見たことはありませんし、文の中で離れて現れるものも同格と呼ぶことはないようです。

しかし文の構造や語句と語句の間の関係を把握する上で「同格」という概念は非常に役に立つと思って、後で出てくる不定詞や ke 節と呼ばれる従属節と名詞との関係を理解するのに、この用語を使っている箇所があります。これは個人的な文法理解です。

目的語以外を表す対格

対格は直接目的語の指標となるだけでなく、それとは全く異なるはたらきをする場合があります。

方向や移動先を表す

対格は方向や移動先を表します。これには3つの使い方があります。1つ目は移動先の名詞を直接対格にする方法です。これは前置詞句 al 〜(〜へ、〜に) の代替表現です。

urbo-dom-o 市役所←市・町+家 / ir-i 行く / vojaĝ-i 旅行する / en[前]〜に(時間)、〜で、〜の中で(場所)/ last-a 最後の

ただしこのような対格の使い方は減ってきていて、せいぜい固有名詞に使われる程度だそうです。それも減ってきているようです。なお当然のことですが、al 〜 の代替表現ですから al la urbodomon のように al と -n を同時には使いません。

2つ目は、位置を表す前置詞の目的語を対格にする方法です。

bird-o 鳥 / flug-i 飛ぶ / en[前] 〜の中で / ĝarden-o 庭 / ĉambr-o 部屋 / kur-i 走る / sub[前]〜の下で / lit-o ベッド、寝床

3つ目は、場所や位置、方向を表す副詞に -n を付ける方法です。

  1. La baloneto supren forŝvebis. 風船が上に飛んで行ってしまった。
  2. La vojo turniĝas dekstren. その道は右へ曲がる。
  3. Li iris tien. 彼はそこへ行った。
    = Li iris al tie.
  4. eksteren(enen, antaŭen, malantaŭen, apuden, maldekstren, suden, malproksimen,...)外へ(中へ、前へ、後ろへ、側へ、左へ、南へ、遠くへ)
balon-et-o 風船←気球+小さい / supr-e 上で / for-ŝveb-i ただよって離れていく ←遠くに+ただよう / voj-o 道 / turn-iĝ-i 曲がる←曲げる+自動詞化 / dekstr-e 右に / tie そこで

3. の tien の tie は正確には副詞ではなく副詞的小辞ですが(tie の末尾の e は副詞語尾ではない)、語尾が -e で終わる、本来の副詞と同じように -n を付けて方向や移動先を表します。

形態・状態の変化を表す

これは前置詞の en を使って表されます。

sid-i 坐っている / sid-iĝ-i 坐る←坐っている+動作化 / en 〜の形態・状態で / rond-o 輪、円、サークル / dis-ŝir-i バラバラに千切る ← 分散+千切る / pec-et-o 小さな断片 ← 一切れ+小さい / traduk-i 訳す / tekst-o テキスト / cirkonstanc-o 状況 / bon-ord-o 整った状態←良い+序列・秩序
時点・時間

je, en, dum の前置詞を使って表すことのできる時点や時間を、前置詞句の代わりに対格を使って表すことができます。

du-a 2番目の / hor-o 時刻、時間 / je 汎用前置詞 / unu-a 1番目の、はじめの / tag-o 日、昼 / sekv-ant-a 後に続く、次の / dimanĉ-o 日曜日 / du 2 / monat-o 月 / dum[前]〜の間(時間) / tut-a 全部の、全体の / somer-o 夏
je 前置詞句の代替表現

対格はもう1つの使い方があります。特殊な前置詞 je で構成される前置詞句の代替表現です。つまり je 〜o という前置詞句を 〜on という表現に変えることができます。実は先に時刻を表すのに je la dua (horo) 「2時に」 の代わりに la duan (horon) と言い換えることができることを示しましたが、これもその使い方の1つです。je は固定した意味を持たない汎用の前置詞で、これといってピッタリくる前置詞が見つからないときに使うことができます。時刻を表す以外にも様々な意味を表すのに使われます。これについては、[前置詞 je と対格]の項を参照してください。

否定文

否定には副詞的小辞の ne を使います。文全体を否定する場合と文の中のある語句だけ否定する場合で、ne を置く位置を変えます。エスペラントは基本的に語順は自由ですが、こういったこともあります (^^
文の否定

文全体を否定するには動詞の前に ne を置きます。

ne 〜ではない / ŝat-i 好む / kaf-o コーヒー / ir-i 行く / ofic-ej-o オフィス ← 執務する、事務を執る+場所
語句の否定

文全体の否定ではなく文の中のある語句だけを否定するには ne をその語句の直前に置きます。

語句の否定では「〜ではないけれど、しかし〜です」という言い方が定番ですが、これには ne 〜 sed 〜 を使います。

sed[接]しかし / fabrik-o 工場

「〜だけでなく、しかも〜です」という意味を表すには、ne nur 〜 sed ankaŭ 〜 を使います。

nur[副小]〜だけ、たった〜 /[副小]ankaŭ 〜もまた

2つのことを(3つ4つのこともあるでしょうが)同時に否定するには nek を使います。

否定の程度など

否定の程度やあり方を ne と副詞・副詞的小辞を組み合わせて表現することができます。ne を置く場所が重要になります。一部の例を挙げてみます。

tut-e すべて、全く / preskaŭ[副詞的小詞]ほとんど~ / tre とても → ne tre あまり / sufiĉ-e 充分に / ankoraŭ [副詞的小詞]まだ、もっと / jam[副詞的小詞]既に・もはや / plu[副詞的小詞]さらに、引き続き

*1 tre は -e で終わりますが、副詞的小辞なので tre 全体で語根です。ほぼ英語の very に相当しますが、直接動詞に係ることもできます(例:mi tre amas vin 私はあなたをとても愛しています)。

全否定

「何も〜ない」「誰も〜ない」「どこにも〜ない」「いつも〜ない」というような全否定には、neni で始まる一連の小辞(否定の相関詞とも呼ばれます)を使います。

代名詞的 物・事 nenio 何も〜ない
指示詞的
(代名詞的)
人・物・事 neniu どの〜も〜ない、誰(どれ)も〜ない
所有 nenies 誰(どれ)の〜も〜ない、誰(どれ)のものも〜ない
形容詞的 性質・状態 nenia どんな〜も〜ない
副詞的 場所 nenie どこにも〜ない
neniam いつの時も〜ない
方法・様相 neniel どんな方法でも〜ない
理由 nenial どんな理由でも〜ない
数量・程度 neniom 全部〜ない

nenio, neniu, nenies: neniu は neniu 〜 の形で「どの〜も...ない」という意味を表しますが、〜 の部分が暗黙に了解できる場合はしばしば省略します。また何の脈絡もなくいきなり単独で neniu が出て来たときは「誰も...ない」という意味になります。nenies も「だれの〜も...ない」「どれの〜も...ない」という意味ですが、しばしば 〜 の部分を省略します。

pret-a 準備ができている / hom-o 人・人間 / en 〜の中に / ĉambr-o 部屋 / propr-aĵ-o 所有物 ← 固有の+物

nenia は「どんな〜も...ない」という意味を表します。

help-o 助け / neces-i [自]必要である

nenie どこにも...ない, neniam いつの時も...ない

trov-i 見つける / kor-a 心の / pac-o 平和、安らぎ / fum-i 喫煙する、煙が出る

neniel どんな方法でも...ない, nenial どんな理由でも...ない, neniom 全部...ない

sukces-i 成功する / koler-iĝ-i 怒る ← 怒った+なる / manĝ-i 食べる

neni〜 自体が否定を表すので、これらを使ったら重ねて否定を表す副詞的小辞の ne を使う必要はありません。ヨーロッパの言語では否定語を重ねることで否定を強調する、ということがあるそうですが、エスペラントにはこういった表現はありません。こういった文法的な間違いを犯してしまうことがあるので「エスペラント基本文法」は1条を割いて、"Se en frazo estas alia nea vorto, la vorto ne estas forlasata. Ekz. mi neniam vidis, mi nenion vidis(もし文の中に他の否定語があれば、否定語の ne は脱落する。例.見たことがない。何も見なかった。)と念を押しています。日本人にはこの理屈はすぐに理解できますが、しかし「何も〜ない」「決して〜ない」の「ない」につられて、うっかり間違いをやってしまい勝ちです。

この条項を以って、「エスペラントには二重否定文は無い」「二重否定文(=肯定文)は文法違反だ」という人がいるようですが、自分はこれは誤解だと考えています。この条項は少し言葉足らずで「文全体が否定の意味を表すのであれば、二重に否定語を使ってはならない」という意味だと思います。

なお、neni- は接頭辞ではありません。

意志法

「意志法」は動詞語尾 -u を使う文です。命令法と呼んでいる学習書もあるかもしれません。

主語を 一人称(私、私たち)にすると「〜しよう」という意味の意思の表明、呼びかけ、勧誘、激励などを表します。

ek-ir-i 出発する ← 始める+行く / ek-manĝ-i 食べ始める ← 始める+食べる / sid-i 腰掛ける、坐る / tie そこで(に)

主語を省略したり、2人称にすると命令文になります。2人称代名詞の vi を入れるとそれが強調され「他でもなくあなたがやりなさい」といったニュアンスになります。

ven-i 来る / far-i する、作る

人称に限らず「〜しなければならない」「〜すべきである」といった意味、「〜してほしい」「〜してほしがる」といった意味を表すのに意志法を使います。

ĉe-est-ant-o 出席者、列席者←〜のところに+居る+人 / silent-a 静かな / dum[前]〜 の間 / ceremoni-o 儀式 / uz-i 使う / akuzativ-o 対格 / post[前]〜の後ろに、〜の後で / prepozic-o 前置詞 / infan-o 子ども / mal-varm-um-i 風邪を引く ← 反対+暖かい+汎用接尾辞

このような表現は、ここではエスペラントの例は示しませんが、命令・要求・意志・願望・嘆願・目的などを表す従属節の中でよく使われます。「意志法と ke 節」の項を参照してください。

仮定法

動詞語尾 -us を使う文です。「条件法」「仮想法」「反実法」「接続法」などと呼んでいる学習書もあるかもしれません。仮定法は「もし私が鳥だったらあなたのところに飛んで行くのに」というような条件を表す節の中でよく使われますが、-us 自体は条件を表すというよりも「事実でないことを表す」あるいは「事実と断定しない」表現と理解した方がよいのではないかと思います。「鳥である」ことも「飛んで行く」のも事実ではないというのがポイントのように思われます。

-us は憶測、満たされない願望、後悔、実際には行わない行為、はっきり断言しないで言うときなど、色々なニュアンスで使います。

mensog-i 嘘を吐く / morgaŭ 明日 / pluv-i 雨が降る / iu[不定の指示詞(相関詞)] ある人、だれか、somebody(英) / help-i 助ける / dir-i 言う / tio それ / tiel そのように / tre[副小]とても / bel-e 美しく、すばらしく

-us は過去のことでも、現在のことでも、将来のことでも、すべてについて使われます。例えば、「あのとき嘘を吐いたのかもしれない」「嘘を吐いているかもしれない」「嘘を吐くかもしれない」は文脈や時を表す語句に依存します。

ただし、過去・現在・未来の仮定を表す方法がないわけではなく、これらを動詞に複雑な合成語尾をつけて表す人もいるようです。しかしそのような表現はザメンホフは一度も使っていないし、多くのエスペランチストもほとんど使わないので、このまとめでは、取り扱わないことにします。[参照

-us は、しばしば仮定の条件を表す従属節で使われます。下の例文中の se は「もし〜が〜だったら」という意味の条件節を導く接続詞です。

se[接]もし〜なら / riĉ-a 豊かな、金持ちの / labor-i 働く / far-i 〜する / erar-o 間違い / antaŭ-e 以前に、前もって / dir-i 言う / ver-o 真実

なお、se は「〜だったらなあ」という強い願望の気分を表す意味で、主節の中で副詞的に使うこともできます。ですから、上の例文中にある条件節だけでもちゃんとした文となります。

条件節であっても、充分にあり得る条件や願望などの主観的ニュアンスがない場合、-as, -is, -os を使っても構いません。

ĉes-i 止む / ek-ir-i 出発する←始める+行く / jam[副小]すでに / ven-i 来る、相手のところに行く / pet-i 頼む、人を招く / al[前] 〜へ

*1peti は「頼む」「請う」という意味ですが、日本語の「〜さんをお願いします」というのと同じ使い方ができる。

-us は婉曲な依頼などの表現にも使われます。

akv-o 水 / don-i 与える、渡す

不定詞

語尾に -i のついた形の動詞は不定形とか不定詞と呼ばれます。不定詞はいろいろなはたらきをしますが、私は自分なりに、大きく3つに分けて整理しています。1. 不定詞は名詞として振舞う。2. 不定詞は動詞・形容詞・名詞の足りない情報を補足する、3. 不定詞は時に述語動詞のように振舞う、の3つです。

不定詞は名詞として振舞う

不定詞は「〜するということ」という意味で名詞として振舞います。ただし動詞としての性格が残っているので、「急いで食べること」「エスペラントを学ぶこと」のように、副詞によって修飾を受けたり目的語を持つことができます。名詞は、主語、叙述語、目的語、前置詞の目的語になりますから、不定詞や不定詞句もそれらの要素になります。また、名詞と並べて同格表現を作ることができます。

主語

主語から見ていきます。

kritik-i 批判する / facil-e 難しく

kritiki(批判すること)が主語です。叙述語が facile と副詞になっているのはミスではありません。主語が不定詞のとき叙述語は副詞になります。上の文は英語だと It's easy to criticize. と it を使って表します。状況を表す無主語文のところで、「エスペラントでは英語で it を使って表されるような内容の叙述語は副詞にすると考えてもまんざら間違いではない」と言いましたが、主語が不定詞の場合も当てはまります。

manĝ-i 食べる / rekomend-ind-e 推奨できる←推奨する+価値のある

例文のように副詞によって修飾されたり目的語を持ったもの(不定詞句)を主語にすることができます。

叙述語

不定詞が叙述語として使われる例です。

praktik-i 実践する、実行する / lern-i 学ぶ / hobi-o 趣味 / lud-i 遊ぶ、演奏する、演じる
目的語

不定詞が目的語として使われる例です。

am-i 愛する、好きである / promen-i 散歩する / arb-ar-et-o 林←木+集合+小さい / komenc-i 始める / lern-i 学ぶ / vol-i 〜したい、〜が欲しい / danc-i 踊る / riĉ-ul-o 金持ち←裕福な+人 / ĝu-i 楽しむ、享受する / kanti 歌う / kun[前]〜と一緒に / matur-ul-o 成人←成熟した+人 / rajt-i[他]権利がある / voĉ-don-i 投票する←声+与える / kuraĝ-i[他]〜する勇気を持つ / rajd-i 乗る / bicikl-o 自転車 / knab-et-o 小さな男の子←男の子+小さい / povi 能力がある、可能性がある / tra-ir-i 通り抜ける←貫いて+行く

不定詞を目的語にする動詞の中には英語の助動詞に相当するものがあります。例えば povi は「〜する能力を持っている」「可能性を持っている」という意味の他動詞ですが、英語の can に相当します。ただしエスペラントには助動詞という特殊な動詞は存在しないので、他の他動詞と同じ使い方をします。

前置詞の目的語

不定詞が前置詞の目的語として使われる例です。実はすべての前置詞で使えるわけではありません。por(〜のために), anstataŭ(〜の代わりに), krom(〜を除いて、〜の他にも〜), sen(〜なしに) の4つで使えるということになっています。「なっています」というのは変な言い方ですが、通常はそれ以外の前置詞の目的語には使われていないのが実状だという意味です。

jam[副小] すでに / tro[副小]あまりに〜、〜過ぎる / mal-jun-a 年長の、老いた←反対+若い / por[前]〜するために / edz-in-iĝ-i 結婚する←配偶者+女+なる / kani 歌う / lud-i 演奏する / anstataŭ[前]〜の代わりに / eĉ[副小]〜でさえ、〜ですら / unu 1つ、1つの / vort-o 単語、言葉 / salut-i 挨拶する / ankaŭ[副小]〜もまた / danc-i 踊る / krom[前]〜を除いて、〜以外に / for-ir-i 去る、遠くに行く←離れて+行く / adiaŭ-i 別れを告げる
同格

同格として使われる例です。

dezir-o 望み / vojaĝ-i 旅行する / kapabl-o 能力 / angl-a イギリスの、イギリス人の / lingv-o 言葉 / neces-i[自]必要がある

* 「〜語」というとき、習慣的に lingvo を省略することが多い。la anga 英語、la japana 日本語、la germana ドイツ語

deziron と vojaĝi al Tokio、kapablo と paroli la anglan (linvon) がそれぞれ同格です。「名詞 + 不定詞」を不定詞の形容詞的用法と捉えることもできるかもしれませんが、私は deziro = vojaĝi al Tokio つまり「希望、言い換えると東京に行くということ」と理解しています。そう捉える方が何かと都合が良いように思います。

例えば、英語では something to eat(何か食べるもの = 食べるためのもの)と言えますが、エスペラントではこういう言い方は間違いになります。なぜなら something ≠ to eat だからです。この場合は、io manĝi(something to eat)ではなく、前置詞の por(〜ための)を挟んで、io por manĝi (something for eating)と言わなければなりません。名詞と不定詞が「〜するための〜」という意味的関係の場合、前置詞の por を入れる必要があります。

iu ある(人)、だれか / ripar-i 修理する / ĉambr-o 部屋 / loĝ-i 住む

同格関係を含めて不定詞が直接名詞に係る場合、不定詞は名詞の後ろに置かれて「名詞 + 不定詞」の形をとります。この場合(前置詞が間に入らない場合)、名詞は必ず抽象的なもので、具体的な物や人を指すことはありません。「名詞 + 不定詞」が常に同格であるとは限らず、不定詞が名詞の意味上の目的語の場合などもありますが(後出)、その場合でも名詞は抽象的なものです。

動詞、形容詞、名詞の足りない情報を補足する

不定詞は名詞として振舞う以外に、動詞・形容詞・名詞の足りない情報を補足説明するはたらきがあります。

動詞の補足説明

動詞の例から見ていきます。単独では意味が完結しない動詞、意味が不足する動詞を補足説明します。

devi 〜しなければならない / dir-i 言う / al[前]〜に、〜へ / ver-o 真実 / hezit-i 躊躇する / al-parol-i 話しかける←〜へ+話す / familiare 心やすく、気安く / sukces-i 成功する / tra-pas-i 通り抜ける←貫いて+通る / arb-ar-et-o 林←木+集合+小さい / aŭdaci[自]果敢に~する、ずうずうしくも~する、敢えて〜する / forĵet-i[他]投げ捨てる / admon-o 訓戒 / fier-i 自慢する / fil-o 息子 / afero 用件、件、事業 / ŝajn-i 〜に思える / bon-ord-o 順調、秩序のある状態←よい+秩序

こういった動詞の中にも英語の助動詞に相当するものがあります。たとえば devi は「〜しなければならない」「~はずである」という意味の自動詞で英語の must に相当します。ただしエスペラントにはそもそも助動詞はありませんから、様々な動詞で単独では意味が不足する場合、不定詞を使って補足することができます。「動詞 + 不定詞」の形を複合動詞と呼ぶ人もいます。

「動詞 + 不定詞」の形で、動詞が他動詞の場合があります。この場合不定詞は、動詞を補足説明していると捉えるよりも、「名詞として振る舞う」のところで書いたように目的語と捉える方が文法的のように思えます。

不定詞が動詞の目的を表すことがあります。通常は目的を表す前置詞 por を使って「動詞 + por + 不定詞」とするところですが、特に iri, veni などの移動を表す動詞の場合 por を省略することが多いです。

knabi-in-o 少女←少年+女 / font-o 泉 / ĉerp-i 汲む / akv-o 水 / renkont-i[他]〜に会う / av-o 叔父・伯父 /[前]〜へ / urb-o 町、都市 / rapid-i 急ぐ

移動を表す動詞に限って目的を表す意味で不定詞が使える、というのは奇妙に感じられますし、例外的な表現のようで気になります。個人的には「por + 不定詞」とするべきではないかと思ったりもします。ですが、この表現は「エスペラントの基礎」の中にも例文があって、ごく普通に使われています。いささか強引ですが、目的というより「〜について」「〜の要件で」のようなニュアンスと解釈することもできるかもしれません。(前置詞を使うなら por ではなく pri)

「動詞 + 不定詞」の形を眺めると、どこにも意味的関係を示す言葉(例えば「〜のために」だとか「〜について」だとか)など入っていないことが分かります。つまり補足説明される動詞と不定詞の意味的関係は本来白紙だということが分かります。

不定詞が動詞を補足説明するにあたって、主語でなく目的語(対格で示された人や物)や与格(al 〜 で示された人や物)の行為や動き、状態を表すことがあります。

よく使われるのは、動詞が「誰かが〜するのを助ける」「誰かが〜するの邪魔する」といった意味の場合です。不定詞の意味上の主語は文全体の主語ではありません。

help-i al 〜を助ける / ord-ig-i 片付ける←整理された+他動詞化 / bruo 騒音 / ĝen-i 邪魔する・難しくする・手間を取らせる / inter-parol-i 会話する←〜の間で+話す

他にも動詞が「命令する(許す・強いる・放っておく・助言する・咎める・請う…)」といったような他者に影響を及ぼす動詞の場合に広く使われます。不定詞が表すのは「他者の行為」です。

ordon-i 命じる / star-iĝ-i 立つ / permes-i 許す、許可する / ek-ir-i 出発する←始める+行く / las-i ~するに任せる、放置する / dev-ig-i 強いる、〜させる←義務+使役化 / ankaŭ[副小]〜もまた / konsil-i 助言する / ŝvit-ban-ej-o サウナ風呂 ← 汗+水浴させる+場所 / mal-rekomend-i 反対する←反対+推奨する / pet-i 請う / kred-i 信じる / pri[前]〜について

また、「何かが〜しているのを見る(聞く・感じる)」といった知覚を表す動詞とともに知覚対象の行為や動きを説明します。

vid-i 見る / tur-o 塔 / fal-i 倒れる、落ちる / aŭd-i 聞く / pord-o ドア / ferm-iĝ-i 閉まる / sent-i 感じる / kor-o 心臓、心 / bat-i 打つ / rapid-e 速く
形容詞の補足説明

次に形容詞を補足説明する例です。

kapabl-a 能力のある / jam[副小] すでに、もう / pret-a 準備のできている / reir-i 帰って行く、再び行く / hund-o 犬 / em-a 〜の傾向の / dorm-i 眠っている

形容詞を補足説明してはいますが、考えようによっては、「esti + 形容詞」に係っているとも言えます。エスペラントは「esti + 形容詞」を「形容詞語根部 + 動詞語尾」に置き換えて(例:estas kapabla → kapablas)、状態を表す動詞1語で表すことができますから、意味的には先に書いた「動詞の補足説明」と同じではないかと思われます。上の例文は動詞を補足説明する形に言い換えることができます。ただし理論上はそうであっても表現の習慣として違和感があったり、ニュアンス的に微妙な差異が出ることがあるのかもしれません。

名詞の補足説明

次に名詞を補足説明する例です。先に「名詞 + 不定詞」の形は同格を表すと書きましたが、同格でないのにこの形をとることがあります。

tempo-o 時 / preĝ-i 祈る

tempo ≠ preĝi だから同格ではありません。「祈りの時」は tempo por preĝi(祈るためのとき)という意味的関係のときもあるでしょう。しかし 「祈りという行為をするとき」というような意味の場合、この表現は当てはまらず、例文のように「名詞 + 不定詞」の形で表現されることがあります。

この他、不定詞が名詞の意味上の目的語の場合があります。

mal-permes-o 禁止←反対+許可 / firm-a 硬い / serv-i 仕える / sub[前]〜の下で

前者の malpermeso paroli は「話をすることの禁止」という意味です。つまり paroli が malpermeso の意味上の目的語に当たります (malpermesas paroli)。後者は「あなたに仕えるという決意」と解釈して同格と捉えることもできますが、「あなたに仕えることを決意する」わけですから「仕えること」を目的語と捉えることも可能です (decidis servi)。

以上のような意味的関係は 「de + 名詞」(〜の〜)を使って表すことができるかもしれません。「pri + 名詞」(〜についての〜)を使っても近い意味を表せる場合があるかもしれません)

この場合不定詞は、前置詞句で言い表せる内容を意味している訳ですから、名詞として振舞っているとは言えません。なお、「名詞 + 不定詞」の形が同格関係でない場合も、名詞は具体的な物や人を指すことはありません。
不定詞は時に述語動詞のように振舞う

述語動詞とは時制語尾 (-as, -is, -os) や法語尾 (-u, -us) の付いた動詞のことです。述語動詞は主要動詞 ĉefverbo とも呼ばれ、文には必ず存在するものです。しかし、述語動詞が無く不定詞だけで文や節を構成することがあります。なおこのとき主語も除きます(不定詞は文法的主語をとりません)。これについては一番シンプルな例を示す程度にします。

  1. Kion paroli? 何を話そうか。何を話すべきか。
  2. Ne fumi. 喫煙を禁じる(禁煙のこと)
fum-i [他]喫煙する、[自]煙が出る

このような表現がなぜ可能なのかを理解するのはとても難しそうです。個人的な理解ですがコチラで愚考してみました。

分詞

能動分詞

分詞とは動詞から派生した形容詞、副詞、名詞で、「〜している(しつつある)」「〜し終わっている」「〜しようとしている」といった意味合いを含むものを言います。例えば paroli(話す)を例にすると、「話しつつある」「話し終わっている」「話そうとしている」といった形容詞や、「話しながら」「話し終わって」「話そうとして」といった副詞、「話している人」「話し終わった人」「話そうとしている人」といった名詞のことです。

行為や動きを過程・段階といった視点から範疇分けしたものを「相」と言いますが、エスペラントでは分詞を使って、継続相、完了相、将然相を区別することができます。これは過去、現在、未来を表現する「時制」とは違います。ある時点で行為がどの段階であるかという視点から見た表現です。1時間前の時点で「まだ話していた」という文と、1時間後に「まだ話している」という文は、時制はそれぞれ過去時制と未来時制で違いますが、どちらも継続相です。

どのようにして動詞から分詞が作られるか形容詞で示します。

parol-i
話す
継続相 -ant- parolanta 話している
完了相 -int- parolinta 話し終わっている
将然相 -ont- parolonta 話そうとしている

将然相という用語は「〜まさに〜しようとしているところ」のように、これから行おうとしている動作・行為が「間近な」というニュアンスのように受け取れるかもしれませんが、必ずしもそういう意味ではありません。未然相という言い方もあるかも知れませが、それだと「まだ〜していない」という否定的なニュアンスが濃くなるので一応このまとめでは肯定的な用語を使ってみたまでです。

-ant-, -int-, -ont- を分詞接尾辞と言います。分詞接尾辞に -a, -e, -o の品詞語尾を付けて形容詞、副詞、名詞を派生させます。これを使って実際に文を作ってみます。

形容詞の例です。

antaŭ[前] 〜の前に / nun[副小]今 / hor-o 時間、時刻 / post [前]〜の後に

上の分詞形容詞は叙述語に使われていますが、修飾語としても使えます。

下は分詞副詞の例です。

これは英語の分詞構文と同じような構造をしています。意味的にも英語と同じ場合も多いです。しかし注意しなけばならないこととして、分詞の意味上の主語は動詞の主語と同じでなければならないということがあります。英語の分詞構文をエスペラントに逐語的に訳すと間違いになることがあります。

名詞にすると行為や状態ではなく人を意味します。

こういった意味で分詞名詞を使ってもよいのですが、しばしば一般名詞化します。例えば parolanto は「今話している人」という意味が一般化され「話者」というような固定した意味になります。

受動分詞

受け身表現の分詞があります。例えば「掴まえられてしまった」「掴まえられている」「掴まえられようとしている」といった意味を表す分詞です。これを受動分詞と言います。受動分詞は接尾辞の -it-, -at-, -ot- を付けることで作られます。先に出てきた -int-, -ant-, -ont- によって作られる分詞は能動分詞と言います。

kapt-i
掴まえる
継続相 -at- kaptata 掴まえられている
完了相 -it- kaptita 掴まえられてしまった
将然相 -ot- kaptota 掴まえられようとしている

形容詞の例です。受身文の行為者(英語の by に当たる)には前置詞 de を使います。

kapt-i 掴まえる

mia, via などの所有代名詞とともに使われる受動分詞は、日本語の言い回しと違うので注意が必要です。

am-i 愛する / leg-i 読む / ĉeval-et-o 仔馬←馬+小さい

副詞の受動分詞の例です。

kat-o 猫 / mort-i 死ぬ / barakt-i じたばたする / for-kur-i 走り去る←遠くに+走る

名詞の受動分詞の例です。

相について

先に分詞は「ある時点で行為がどの段階であるかという視点から見た表現」と説明しましたが、分詞だけが「相」を表現するわけではありません。「相」については私自身よく呑み込めていないのですが、他にも起動相、終了相、結果相、習慣相...などといった捉え方もあるようです。それらが全て分詞によって表現されるわけではありません。動詞そのものが相の違いを表現することもあるし(もともと瞬間的な動作を表す動詞、継続的な動作を表す動詞、状態を表す動詞などがある)、接頭辞や接尾辞によって区別することもあります。

動詞語尾と接辞 -ig-, -iĝ-, ek-, el-, -ad-

エスペラントの動詞には他の品詞の語尾を動詞語尾に変えたり加えただけのものがあります。またエスペラントの使用者は語根から自由に動詞を造語することができます。ただし誰かが動詞化した単語がすでに定着していて自分の表したい意味と違っているかもしれないので、動詞に限りませんが造語においてはすでに定着している単語があるか、それはどういう概念を表すのかを確認する必要があります。

jes[間投]はい / fraz-o 文、句 / ĝust-a 正しい / kap-jes-i 肯定する、肯首する←頭+はい+動詞語尾

単純に他の品詞を動詞語尾にするだけでも動詞を造語することはできるのですが、接尾辞の -ig-, -iĝ-, -ad- や 接頭辞の ek-, el- などを加えることで簡単な手順で動詞を作ることができます。

これらの接辞は、動詞以外の品詞から動詞を作るだけでなく、自動詞を他動詞に変えたり他動詞を自動詞に変えたりします。また動詞の意味を変えるものもあります。例えば sidi は「座っている」「腰掛けている」という状態を表す動詞ですが、-iĝ- という節尾を付けて sidiĝi とすると「座る」「腰掛ける」という瞬間的もしくは短時間の動作を表すようになります。また例えば、morti は「死ぬ」という意味で、生から死への変化を結果として捉える動詞ですが、mortiĝi とすると「死んでいく」過程を表すことになります。以下にそういった使い方をする接辞の例を挙げておきます。

-ig-

-ig- は動詞以外の品詞や自動詞の後ろに付けて他動詞を作る接尾辞です。

形容詞などに -ig- を付けて他動詞にします。

pur-a きれいな、清潔な / ĉambr-o 部屋 / varm-a 暖かい、温かい / sup-o スープ / nul-o ゼロ / mend-o 注文

自動詞を他動詞にします。

kuŝ-i[自]横たわっている / libr-o 本 / tabl-o テーブル / brul-i[自]燃えている / leter-o 手紙 / fal-i[自]落ちる、倒れる / mur-o 壁

使役や強制の意味をもった他動詞を作ります。もともと他動詞の場合もあります。

rid-i[自]笑う / star-i[自]立っている / aranĝ-i[他]手配する、配置する / manĝ-aĵ-o 食べ物 ← 食べる+物
-iĝ-

-iĝ- は自動詞を作る接尾辞です。色々な意味合いで使われます。

動詞以外の品詞から自動詞を作ります。

san-a 健康な / ge-edz-o 夫婦←男女+配偶者 / graci-o 氷

他動詞から自動詞を作ります。

pord-o ドア / ferm-i[他]閉める / pro[前]〜のために(原因・理由)/ nask-i[他]生む / vilaĝ-o 村 / konkurs-o 競技会 / fin-i[他]終える

状態を表す自動詞から動作・行為を表す自動詞を作ります。

star-i[自]立っている / kulp-i[自]罪のある

他動詞から受け身的な意味を表す自動詞を作ります。

pun-i 罰する[他]/ iu ある人、誰か / ĵet-i[他]投げる、突き飛ばす

自動詞の意味を変えます。

mort-i[自]死ぬ

mortiĝi は mori(死ぬ)という元来の自動詞の意味を変えたものです。morti は生から死への変化を結果として捉えますが、mortiĝi にすると生から死への変化を経過として捉えることになります。

ek-

ek- は動作の開始や瞬間的な動きを表す接頭辞です。

el-

el は本来「〜の中から」という意味を表す前置詞ですが、接頭辞としてもよく使われます。接頭辞の el- は何かが「外に出てくる」というニュアンスを表すためにも使われますが、「行為が完了する」「目的を達成する」といった意味を表すためにも使われます。

-ad-

-ad- は動作や行為の継続や繰り返しを表す接尾辞です。しばしば 〜ado の形で一定の時間や期間をかける行為を表す名詞を作る時にも使われます。

疑問文

「はい」「いいえ」で答える疑問文

「はい」「いいえ」で答えてもらう疑問文は普通の文の先頭に副詞的小辞の ĉu を加えて作ります。

ŝat-i 好む、高く評価する

実際の会話では、文の最後に ĉu を付けたり、確認の語句を追加したりすることがあります。.... ĉu を付けないでイントネーションだけで質問する場合もあるでしょうが、まあそれは実践会話ということで (^^;

「〜か、それとも〜か」という意味の場合、接続詞 aŭ を使います。

aŭ[接] あるいは / te-o お茶(紅茶)

Ĉu で訊ねられた質問に対して丁寧に返事をするときは、まず間投詞的に Jes(はい)または Ne(いいえ)を言い、さらに肯定または否定する文を簡潔に繰り返します。

否定文で質問することもあります。

このときの答えの Jes、Ne は2通りあるようです。答えが「好きです」という肯定文だから Jes と答える場合と、疑問文の中の「好きではない」を肯定する意味で Jes とする場合です。どちらが正しいとか間違っているとかは断言できません。多分の前者の答え方をする人の方が多いのでしょうが ...

「ĉu 〜, ĉu 〜」の形は「〜であろうと、〜であろうと」という意味の譲歩従属節を作ります。

amik-o 友人 / mal-amk-o 敵
疑問詞を使う疑問文

疑問詞を表にします。

代名詞的 物・事 kio 何?
指示詞的
(代名詞的)
人・物・事 kiu 誰?どの?どれ?
所有 kies 誰の?どれの?だれ(どれ)のもの?
形容詞的 性質・状態 kia どんな?
副詞的 場所 kie どこ?
kiam いつ?
理由 kial なぜ?
方法・様相 kiel どのように?
数量・程度 kiom どのくらい?
kio

kio は日本語の「何」にあたります。

Unua libro エスペラントの最初の本 / instru-ist-o 教師←教える+人 / japan-o 日本人 / onkl-o 伯父、叔父 / ŝat-okup-o 趣味←好き+仕事

必要に応じて対格語尾や前置詞を付けます。

uz-i 使う / ceremoni-o 儀式、儀礼 / il-o 道具←道具・手段を表す接尾辞+名詞語尾
kiu

kiu は本来「どの〜」にあたる疑問詞ですが、「だれ」「どれ」の意味でも使われます。

pak-aĵ-o 荷物←包装する+もの / aparten-i 所属する / bret-o 棚 / fil-in-o 娘←息子+女 / seĝ-o 椅子

必要に応じて対格語尾、前置詞を付けます。

kolor-o 色 / ĉambr-o 部屋 / kon-i 知っている / don-i 与える、渡す、もたらす / aĉet-i 買う
kies

kies は「誰の」「誰のもの」という所有を訊ねる疑問詞です。

patr-o 父親 / libr-o 本
kia

kia は「どんな」という意味を表します。必要に応じて複数形語尾、対格語尾を付けます。

sup-o スープ / aŭt-o 自動車 / novel-o 中編小説
kie

kie は「どこで(に)」という意味で場所を訊ねます。

loĝ-i 住む / urb-o 町、都市

「どこへ」「どこから」「どこまで」といった移動を表す場合は意味に応じた前置詞を付けます。

al[前] 〜へ / de[前]〜から / ĝis[前]〜まで

kie に対格語尾を付けることができます。この対格は目的語を表すのでなく方向や移動先を表します。つまり al kie の代わりに kien とすることができます。

kiam

kiam は時間を訊ねる疑問詞です。「いつ」に当たります。「いつから」「いつまで」といった表現には前置詞を置きます。

el-lit-iĝ-i 起床する← 〜の中から+寝床+自動詞化 / konstru-i 造る、構築する / dom-o 家 / lern-i 学ぶ / nokt-e 夜に
kial

kial は「なぜ」という意味で理由や動機を訊ねます。

plor-i 泣く / respond-i 答える、返事をする
kiel

kiel は「どのように」という意味で、様相や方法を訊ねます。

bon-gust-a 美味しい←良い+味がする / kuiri* 料理をする / manĝ-aĵ-o 食べ物←食べる+物 / malvarme 寒く←反対+暖かい / fart-i ~の健康状態である

*kuri は「熱して食べられるようにする」という意味がある

kiom

kiom は数量や程度を訊ねるときに使います。程度は kiel の方が適している場合があります。例えば「どれほど強いか」というような場合は kiel で訊ねます。

vol-i 欲しがる / du 2 / tri 3 / kost-i 費用がかかる / ring-o 指輪、輪 / long-e 長く / atend-i 待つ

kiom は数量を単位で訊ねるような場合 da 前置詞を使って訊ねることもできます。参照:[前置詞 da

minut-o 分 / glas-o グラス

時刻や回数を訊ねるときなどに kioma と形容詞語尾を付けて訊ねる言い方があります。kioma は「何番目の」といういう意味になります。「何時に」「何回目に」と時刻や回数を訊ねるときは前置詞の je を付けます。

hor-o 時刻、時間 / je[汎用前置詞] / atingi[他]到着する / foj-o 回数 / sukcesi 成功する / ekzameno 試験

je はもともとピッタリくる前置詞がないときに汎用的に使える特殊な前置詞ですが、時刻や回数を表す時にも使われます。

je kioma horo, je kioma fojo は対格を使って kioman horon, kioman fojon のように言い換えることができます。この対格は je という特殊な前置詞の代わりに使う対格で目的語とは関係ありません。これについては[前置詞 je と対格]を参照してください。

疑問の相関詞

前項で取り上げた疑問詞は、疑問の相関詞とも呼ばれます。相関詞という耳慣れない用語が出てきましたが、これまでに出てきた tio, tiu,... などの指示詞も相関詞の1つです。相関詞は日本語の「こそあど」に相当する一群の単語です[相関詞表]。

相関詞は語の前半部と後半部で規則的な組み合わせになっていますが、接頭辞や語尾の組み合わせではなく、これ以上分割できない小辞(語根)です。

疑問の相関詞は疑問詞として使われるだけでなく、下に示したようないろいろな役割で使われます。この項では 2 〜 4 の使い方を取り上げます。

  1. 疑問詞(何、どの、どんな....)
  2. 感嘆文における指示詞(まあ、なんとそんな、まあ、なんとそんなにも)
  3. 時を表す副詞節を導く接続詞 (kiam)(〜するとき)
  4. 譲歩節を導く接続詞(〜であろうとも)
  5. 関係詞節を導く接続詞(〜であるところの)
  6. 比較従属節を導く接続詞(〜であるのと同じく)
  7. 名詞節を導く接続詞(〜であるかということ)

kio, kia, kiel, kiom は感嘆文において感嘆のニュアンスを含む指示詞(指示代名詞的、指示形容詞的、指示副詞的)として使われます。

ĝoj-a 楽しい / fest-o お祝い / mal-ĝoj-ig-i 悲しませる←反対+楽しい+させる / agrabl-a 心地良い / oft-e 何度も、度々 / ripet-i 繰り返す

kiam は、時を表す副詞的節を導きます(〜が〜するとき)。これは時に関する関係詞文において先行詞を省略した場合の関係詞節と理解することができます。例文を挙げておきますが、説明は後に出てくる「関係詞文」の中の「先行詞の省略」を参照してください。場所を表す副詞節(kie)でも同じような表現がありますが、この項では取り上げません。

rev-i 夢見る、夢想する / pri[前]〜について / dezir-o 望み

疑問の相関詞は無差別を表す小辞の ajn(~であろうとも)とともに譲歩節を導きます。譲歩節とは条件節において「(第3の選択肢を含めて)無差別に条件を許容する」という意味で「たとえ〜であろうと」といった意味を表します。

kred-i 信じる / vok-i 呼ぶ、来させる / ven-i 来る、相手のところへ行く / manĝ-aĵ-o 食べ物←食べる+物 / sekv-i 後に続く / vol-ont-e 喜んで 〜したい+将然文詞 / mal-sukces-i 失敗する←反対+成功する

ajn は後に出てくる普遍の相関詞(ĉio, ĉiu, ...) や不定の相関詞(io, iu, ...) とも使われますが、条件節を導く接続詞として使えるのは疑問の相関詞です。

venos al li の venos は「相手のところに行く」という意味です。「自分のところから出かける」というニュアンスでは iros とも言えると思います(確信はありません)。li はここでは女性も含めます。エスペラントでは特定の個人を指さない場合 li を中性の3人称代名詞としても使います(Ekzercaro 練習文集の中にこの使い方の例が見えます)。

普遍の相関詞・不定の相関詞

普遍の相関詞

下表は普遍の相関詞です。これらは「何もかも」「だれかれも」「どの〜も」「どこでも」「いつでも」... といった意味を表します。すべて ĉi- で始まります。

代名詞的 物・事 ĉio 何もかも
指示詞的
(代名詞的)
人・物・事 ĉiu どの〜も、どの人も、どれも
所有 ĉies 誰(どれ)の〜も、誰(どれ)のものも
形容詞的 性質・状態 ĉia どんな〜も
副詞的 場所 ĉie どこにでも
ĉiam いつも
方法・様相 ĉiel あらゆる方法で
理由 ĉial あらゆる理由で
数量・程度 ĉiom 全部、全量
mensog-o 嘘 / angla 英国の、英国人の / hund-o 犬 / aparten-i 所属する
amik-o 友人
ten-i 維持する、保持する→ teni sin 態度を取る / dev-i 〜しなけらばならない / ajn[副小] 無差別を表す / obe-i 従う、服従する / ordon-o 命令 / mastr-o 主人、雇い主

ajn は無差別を表します。普遍の相関詞自体が「すべての」という意味ですから、無くてもかまいませんが強調することになります。(疑問の相関詞とともに使うときは特殊で「たとえ〜であっても」のような譲歩節を作ります)

plej [副小]最も / varme 暖かく、温かく / fil-in-o 娘←息子+女 / murmur-i ブツブツ言う / ĉarm-e 魅力的な
demand-i 質問する / respond-i 答える / manĝ-aĵ-o 食べ物←食べる+物 / multe 多い、沢山
da は数量を表す前置詞で multe da manĝaĵoj で「多くの食べ物」という名詞扱いになる。参照:[数と前置詞 da
不定の相関詞

不定の相関詞を見ていきます。不定の相関詞は「あるもの」「ある人」「ある〜」「ある時」「ある場所で」... のような意味を表します。すべて i- で始まります。

代名詞的 物・事 io あること、あるもの、何か
指示詞的
(代名詞的)
人・物・事 iu ある〜、ある人、あるもの、何かの、何か
所有 ies ある人の、あるものの、だれかの、どれかの
形容詞的 性質・状態 ia ある性質の、ある状態の
副詞的 場所 ie ある所で、どこかで
iam ある時、いつか
方法・様相 iel ある方法で、どうにか
理由 ial ある理由で、なぜか
数量・程度 iom ある程度、いくらか
terur-a 恐ろしい / okaz-i 起る / plor-i 泣く / pord-o ドア / ĉapel-o 縁無し帽 / mal-feliĉ-o 不幸←反対+幸福
vin-o ワイン / nur 〜だけ、ほんの / acid-a 酸っぱい / farb-i ペンキを塗る←farb-o ペンキ / vand-o 間仕切り / hel-a 明るい / kolor-o 色
loĝ-i 住んでいる / trov-i 見つける / vizit-i 訪れる

ajn は無差別を表します。ie は「あるところで」「どこかに」という意味ですが、ie ajn とすると「どこであろうと」という意味になります。ajn は ĉie にも使えますが、ĉie ajn とすると「あらゆるところに」という意味になります。

mal-gaj-a ふさぎ込んだ、気分の沈んだ←反対+賑やかな / hispan-a スペインの、スペイン人の / buter-o バター da 参照:[数と前置詞 da

iom は本来の意味である不定の数量を表すこともありますが、日本語の「いくらかの」「数個の」のような意味で多くない数量のニュアンスを表すことが多いです。また程度を表すこともあります。

話法

直接話法は会話の内容を引用符で括って表します。

Karlo diris al Eva: "Mi portas donacaĵon al vi."
カルロはエヴァに「僕は君へのプレゼントを持って来ているんだ」と言いました。
Eva demandis: "Kio estas ĝi?"
エヴァは「それは何?」と訊ねました。
Karlo prezentis ĝin kaj demandis: "Ĉu vi volas ĝin?"
カルロはそれを見せ「君はこれが欲しい?」と訊ねました。
Eva prenis ĝin kaj diris: "Kia bela kolĉeno ĝi estas."
エヴァはそれを手に取り「なんて綺麗なネックレスだこと」と言いました。

dir-i 言う / port-i 携帯する、身に付ける、運ぶ / donac-aĵ-o 贈り物←贈る+物 / demand-i 質問する / prezent-i 差し出す、見せる / kol-ĉen-o ネックレス←首+鎖

例文のように引用符の前にコロンを入れることが多いです。

間接話法は会話の内容を従属節を使って表します。従属節は平叙文なら ke、疑問文なら ĉu または 疑問詞が導きます。kio, kia, kiel, kiom は感嘆文の従属節にもなります。

Karlo diris al Eva, ke li portas donacaĵon al ŝi.
カルロは自分は彼女へのプレゼントを持って来ているんだと言いました。
Eva demandis, kio estas tio.
エヴァはそれは何と訊ねました。
Karlo prezentis ĝin kaj demandis, ĉu ŝi volas ĝin.
カルロはそれを見せ彼女はそれが欲しいのか訊ねました。
Eva prenis ĝin kaj diris, kia bela kolĉeno ĝi estas.
エヴァはそれを手に取り、なんて綺麗なネックレスだこと、と言いました。

例文の様に、従属節の前にコンマを入れることが多いです。

間接話法による簡単な例文です。

grand-a 大きい / tre[副小」とても / aĉet-i 買う / dom-o 家 / loĝ-i 住んでいる / fart-i ~の健康状態である / klopod-i 尽力する、奔走する

直接話法と間接話法では人称が変わります。直接話法では引用符内は人称が独立していますが、従属節では主節に合わせた人称にします。エスペラントの話法では時制の一致はありませんから、動詞の時制語尾は基本的にそのまま保たれます。

直接話法と間接話法では時の表し方が変わります。hodiaŭ(今日)、hieraŭ(昨日)、morgaŭ(明日)などを、相対的な表現の la antaŭa tago(前の日)、tiu tago(その日)、posta tago(次の日)などに変えたり、主節に合わせて入れ替え変えたりする必要があります。

mal-san-a 病気の←反対+健康な / ver-ŝajn-e きっと←本当の+らしい

nun(今)は変更せずにそのまま使えます。laste(最近)ĵus(さっき)baldaŭ(もうじき)などもそのまま使えます。

vol-i 〜したい / far-i する / post-e 後で

hieraŭa(昨日の=前の日の)、hodiaŭa(今日の=その日の)、mourgaŭa(明日の=次の日の)は相対的な日付を表すので間接話法の中で応用できます。

leg-i 読む / al-port-i 持って来る、もたらす←〜へ+運ぶ

場所を表すのに指示詞を使うと、直接話法と間接話法で表し方が変わります。あるとき誰かとニューヨークについて話をしたとします。そして今自分は旅行でニューヨークに来ているとすると、その時の会話は下のような表現になります。

dezir-i 希望する / vojaĝ-i 旅行する

ke 節と ĉu 節 -- 名詞節

ke 節 と ĉu 節は「〜ということ」「〜かどうかということ」といった意味の名詞節(名詞相当の従属節)を導きます。名詞節は名詞と同じように主語、目的語、叙述語、前置詞の目的語になります。また名詞と並べて同格表現を作ることができます。

主語として

ke 節 や ĉu 節は主語になります。

  1. Okazis, ke la reĝino mortis. 女王が亡くなるという出来事が起こった。
  2. Estos grave, ĉu pluvos aŭ ne. 雨が降るかどうかが重要になるだろう。
  3. Estas bone, ke vi sidiĝos sur tiu seĝo. その椅子に掛けるといいよ(その椅子に腰掛けることは良い)。
mort-i 死ぬ / grav-e 重要な / sid-iĝ-i 坐る←sid-i 坐っている / sur[前]〜の上に

動詞が最初に来て、主語が後ろに来ていますが、主語が従属節のときこういった語順の文をしばしば見かけます。しかし、もちろん語順は決まりではありません。1. は SV の構文です。2. と 3. は 主語の叙述文つまり SVC の構文です。grave や bone は叙述語です。叙述語が副詞になっている点に注目してください。主語が従属節の場合、叙述語は副詞になります。

これらの文は英語だと形式名詞(仮主語)の it を使って表すことになります。

状況を表す無主語文や主語が不定詞のときもそうでしたが、英語で it を使うような文では叙述語が副詞になるというのは主語が名詞節の場合も当てはまります。

ke 節や ĉu 節が主語のとき、下のような表現があります。動詞や叙述語は「確さらしさ」を表しています。

ŝajn-i 〜のように思える / mal-facil-a 難しい←反対+易しい / buŝ-o 口 / el-salt-i 飛び出す←〜から+跳ねる / perl-o 真珠 / diamant-o ダイヤモンド / povi 可能性がある / infan-et-o 子ども、幼児←小さい+子ども / mal-sat-a 空腹の←反対+満腹の / aspekt-i 見える / ge-edzo-j 夫婦←両性+夫 / feliĉ-a しあわせな / dev-i 違いない / ven-i 来る / infan-aĝ-o 子供の年齢 / ver-e 本当の / renkont-i 会う / mort-i 死ぬ / certe 確かな

povas esti, devas esti は、それぞれ「〜であることができる」「〜であらねばならない」という意味のときもあります。

叙述語として
raport-o 報告 / problem-o 問題
目的語として
trans-loĝ-iĝ-i 引っ越す←向こう側+住む+自動詞化 / permes-i 許す / dub-i 疑う / ven-i 来る、相手のところへ行く
前置詞の目的語として

すべての前置詞で使われるわけではなく、por(〜のために), anstataŭ(〜の代わりに), malgraŭ(〜にも関わらず), krom(〜を除いて、〜の他にも), sen(〜なしに) の目的語にできるということになっているようである。

anstataŭ[前]〜の代わりに / ĉiu それぞれ(の人)/ mal-sam-a 違う←反対+同じ / lingv-o 言葉 / pen-i 努力する / daŭr-ig-i 続ける←続く+他動詞化語尾 / postul-i 要求する / montr-i 示す / sindon-ec-o 献身←自分を+与える+性 / estim-o 尊敬 / tuŝ-i[他]触れる / romp-i 壊す
意志法と ke 節

意志法のところで出てきましたが、ke 節が命令・要求・意志・願望・嘆願などの中身を表す場合しばしば意志法を使います。

ordon-i 命令する / el-far-i 〜完遂する+する / vesper-o 夕方 / neces-e 必要な / ĉe-est-i 出席する←〜のところに+いる / kun-ven-o 会合←一緒に+来る / vol-i 欲する、〜したい / labor-i 働く / dezir-i 望む / feliĉ-e 幸福に / edz-in-iĝ-i 妻になる←夫+女+自動詞化 / hieraŭ 昨日 / labor-estro 仕事の長 / pet-i 頼む / atent-a 注意深い

目的を表す従属節ではしばしば意志法を使います。por ke 〜(〜が〜するために)がこれに当たります。

don-i 与える / akv-o 水 / por[前]〜のために(目的)/ trankvil-ig-i 落ち着かせる←落ち着いた+他動詞化(使役)/ soif-o 喉の渇き
同格表現

ke 節や ĉu 節は名詞相当なので、名詞と並べて同格を表すことができます。例文の太字と下線部が同格です。

esper-o 希望 / afer-o 物事、要件、事業 / necese-ec-o 必要性←必要な+性 / for-ĵet-i 投げ捨てる、放棄する / oportun-a 好都合な / vort-o 言葉、単語 / demand-o 質問、疑問

先に ke 節や ĉu 節 を主語に使う例で、英語では it を使う構文になることを示しました。実はエスペラントでも同格を使って下のように同じ構造の文を作ることができます。

例文は同格の名詞に形式名詞として tio を使っています。tio = ke la reĝino mortis(そのこと = 王女が死んだということ) です。このように ke 節の内容を何らかの名詞や形式名詞に受け継がせることで、ke節 の内容を、主語に限らず目的語、叙述語、前置詞の目的語にすることができます。
raport-o 報告 / sukces-i 成功する / sci-ig-i 知らせる←知る+使役 / baldaŭ[副小]やがて、もうすぐ / trans-loĝ-iĝ-i 引っ越しする←向こう側+場所+自動詞化

このような構造にすることの利点は、主語についていえば、従属節が主語だと叙述語を副詞にしなければなりませんが、同格を使うと形容詞にすることができるようになります。

ver-e 本当に / mort-ig-i 殺す←死ぬ+他動詞化

また前置詞の目的語についていうと、por, anstataŭ, malgraŭ, krom, sen 以外の前置詞では ke 節を直接その目的語にすることはありませんが、いったん従属節で表される内容を名詞や形式名詞に置き換えることで、その目的語にすることがきるようになります。また、ĉu 節(〜かどうかということ)を前置詞の目的語にすることもできます。

tiam そのとき / mal-bel-a 醜い / plena de 〜で一杯の / tim-o 恐れ / vek-iĝ-i 目が覚める ← veki 目覚めさせる / eksplik-o 説明 / artikol-o 冠詞 / fraz-o 文

pro tio, ke は pro ke 〜 のように直接 ke 節をその目的語にする人もいるようです。

疑問詞が導く名詞節

疑問詞が導く従属節は、ke 節や ĉu 節と同じように、名詞節(〜のかということ)としてはたらきます。間接話法における従属節もその1つと捉えることができますが、他にも下のように使われます。

rest-i 留まる / montr-i 示す / kuŝ-i 横たわっている、横にしておいてある、ある / pri-pens-i 思案する←について+考える / kost-i 値がする、代償を要する / nokt-a 夜の / rest-ad-o 滞在←止まる+続ける / sci-i 知っている

何らかの名詞や形式名詞と同格を作ることで、疑問詞が導く従属節を前置詞の目的語にすることができます。

manier-o 方法 / solv-i 解決する / problem-o 問題 / interes-iĝ-i←興味を持たせる+自動詞化 / ŝanĝ-i 変える

時々形式名詞が省略された文を見かけることもあります。

ke 節の説明的用法

ke 節は名詞相当の従属節として使われる以外に形容詞・副詞・動詞の足りない情報を幅広く補足説明する機能があります。形容詞や副詞には指示形容詞の tia(そんな) や指示副詞の tiel(そのように)、 tiom(それほど)、tial(そいう理由で)なども含まれます。

名詞の説明は同格表現と捉えることができるので、ここでは除いています。

形容詞や副詞の説明
  1. Mi estas feliĉa, ke mi vin akceptas. 私は貴方をお迎えできて幸せです。
  2. La ventego estis tia, ke la tegoloj deflugis de la tegmentoj. 大風は屋根瓦が屋根から飛んでいくほどだった。
feliĉa 幸せな / akcept-i 受け入れる / vent-eg-o 大風←風+大きい / tegom-o 屋根瓦 / tegment-o 屋根

1. は「幸せだ」について補足していますが、何について幸せと感じているのかを説明していて、どのように幸せなのかを説明しているわけでありません。2. は大風が「そんなの」とはどんなのだったかを説明しています。このように説明内容がどういった方面からなのかが 1. と 2. で全く違います。ke 節自体は情報が足りない何かについて補足説明するはたらきを持っていますが、どの方面からの説明なのかという情報は全く持っていないということが分かります。

  1. Ĉion mi permesis al vi escepte, ke vi ne faru tion ĉi. 私は貴方にこの事をするなという以外なんでも許した。
  2. Li faris tion spite, ke oni malpermesis. 人は禁止したにもかかわらず彼はそれをした。
  3. Li batis ilin tiel, ke ili ne leviĝos plu. 彼は彼らがもう起き上がってこないように叩いた。
  4. Ili foriris tial, ke mi foriris. 彼らは私がいなくなったので去っていった。
  5. Veturigi aŭton estas tiel malfacile por la maljunulo, ke liaj membroj fariĝas tute rigidaj. その老人にとって車を運転することは手足が完全に強張ってしまうほど難しい。
  6. Ni drinkis bieron tiom multe, ke ĉiuj boteloj fariĝis malplenaj. 私たちは全部の瓶が空になるほど沢山ビールを飲んだ。
escepte 例外的に / far-i する、作る / permes-i 許可する / spit-e 逆らって / mal-permes-i 禁止する / bati 叩く / lev-iĝ-i 起き上がる←起こす+自動詞化 / for-iri 去る←行く+離れる / vertur-ig-i 乗り物を運転する、(乗り物で)運ぶ / mal-facil-e 困難な←反対+簡単な / membr-o 四肢、メンバー / rigid-a 硬直した、融通のきかない / drink-i (酒を)飲む / bier-o ビール / botel-o 瓶 / mal-plen-a 空の←反対+満ちた /

1. 2. は、副詞の escepte(〜を除いて)、spite(〜に逆らって)の内容を説明しています。

3. 4. は、tiel(そのように)、tial(そういう理由で)の内容を説明しています。

5. 6. は、「tiel 副詞, ke」「tiom 副詞, ke」のような形になっていて、それぞれの副詞の程度を説明しています。この形は、英語の so 〜 that 〜 強調構文に相当する表現といえそうです。

先に ke 節は名詞として振る舞い主語になることもあると書きましたが、したがって下のように、文の構造は全く同じで ke 節の役割が全く異なる場合があるので注意する必要があります。

  1. Estas tre strange, ke ni antaŭe neniam ĝin aŭdis. 私たちがそれを全く聞いていないというのはとても奇妙だ。
  2. Estis tiel malvarme, ke miaj dentoj klakadis. 歯がカタカタと音を鳴らすほど寒かった。
strang-e 奇妙な / antaŭ-e 前に / neniam 一時たりとも〜ない / aŭd-i 聞く / mal-varm-e 寒い / dent-o 歯 / klak-ad-i かちかち音をたて続ける←叩いて乾いた音をたてる+続ける

1. の ke 節は主語で、2. の ke 節は tiel に係って malvarme の程度を強調しています。

動詞の説明
cert-i 確かである / plen-um-iĝ-i 果たされる、遂行される←満ちた+汎用接尾辞+自動詞化 / fier-i 誇る、自慢する / vilaĝ-o 村 / ĝoj-i 喜ぶ / sam-a 同じ /
*1 um は適当な接尾辞が無いときに応用できる汎用の接尾辞。palpebr-um-i まぶた+um → 瞬きする、cerb-um-i 脳+um → 頭をひねる

certas は esti certa と言い換えることができます。また、fieras は esti fiera に、ĝojas は esti ĝoja に言い換えることができます。つまり意味的には形容詞を補足説明しているのと同じです。

関係詞文

関係詞文は下のような構造をしています。

kaf-ej-o カフェ ← コーヒー+場所 / sid-i 坐っている / vir-in-o 大人の女性 ← 大人の男+女性 / leg-i 読む / ĵurnal-o 新聞

関係詞文とは文中の語句を従属節が修飾する構造をした複文の1つです。従属節は修飾される語句の代用形である疑問詞によって導かれます(例文では kiu)。 代用形と接続詞の一人二役を兼ねた疑問詞を関係詞と言います。修飾を受ける語句を先行詞と言います。ただし典型的な関係詞文では先行詞が関係詞の前に来ますが、そうでない場合もしばしばあります。

例文は人が先行詞なので、関係詞にはそれに応じる疑問詞の kiu が使われましたが、先行詞は人とは限りません。個々の物事についての場合はやはり kiu を使いますが、具体的な名詞で言い表せない物や事についてであれば kio を使います。従属節が先行詞の所有・所属関係を表す場合には kies、状態や性質を表すものであれば kia、場所・時間・様相/方法・理由・数量を表すものであれば kie、kiam、kiel、kial、kiom を使います。なお、kial は後で示すように少し注意すべき点があります。

関係詞文を見ていきます。必要に応じて先行詞と関係詞の数を一致させる、関係詞を対格にする、関係詞の前に前置詞を置くといったことが必要になります。また先行詞に ti-、ĉi-、i-、neni- で始まる相関詞が頻繁に使われます。

kiu

この項の最初に示した例文は先行詞が人でしたが、kiu は個々の物事にも使います。先行詞と関係詞の数は一致させます。また従属節において kiu が目的語のときは対格にし、前置詞の目的語の場合は kiu の前に前置詞を置きます。

interes-a 興味深い / rekomend-i 推奨する / pri[前]〜について / gazet-o 雑誌 / laŭd-i 称賛する
kio

-o で終わる相関詞 は「そのこと」とか「そのもの」のような表現しかできないものを指すときに使うので、先行詞には多くの場合 tio, ĉio, io, nenio などの相関詞がきます。必要に応じて対格にしたり、kio の前に前置詞を置きます。

plaĉ-i 気に入る / pov-i[他]できる、~する能力がある / sci-i 知っている / mov-iĝ-ad-o 動き←動かす+自動詞化+名詞化 / kaŭzi 引き起こす、原因となる / tra-blov-a 吹き渡る← 貫く+吹く / vent-o 風

しかし先行詞に具体的な名詞がくることもあります。

aut-o 自動車 / plan-i 計画する、つもりでいる / aĉet-i 買う

この場合もし kiu を使うと、従属節 は「この車」と「あの車」とを区別するための情報を補足することになりますが、kio を使うと「車という物」についての説明になります。

kies

kies は先行詞の所有・所属関係にあるものを説明する従属節を導きます。

serĉ-i 探す / nom-o 名前 / mal-ferm-i 開ける←反対+閉める / pord-o ドア / ans-o 取っ手 / arĝent-a 銀の、銀色の / stud-i 学ぶ、研究する / ĉe 〜の下で、〜のところで / certa ある / fil-in-o 娘←子息+女 / loĝ-i 住む / sama 同じ / apartament-o アパート
kia

kia は性質、状態、属性などを説明する場合に使います。先行詞と関係詞の数は一致させます。また必要に応じて対格にします。

divers-kolor-a 色とりどりの・カラフルな←さまざまな+色の / ver-ŝajn-e きっと←本当の+〜に思える / mal-nov-a 古い←反対+新しい / trvov-i 見つける / nun-temp-e 現在では←今+時代 / rest-i 〜のままでいる、留まる / ĉiam[相関詞]いつも / nun 今
kie

kie は場所に関して説明する従属節を導きます。

  1. Ŝi loĝas en la urbo, kie estas la fama parko. 彼女は有名な公園のある街に住んでいます。
  2. Mi ŝatas legi libron en ĉambro, kie estas senbrue. 私は静かな部屋で本を読むのが好きです。
  3. Mi deziras veturi al la urbo, kie(en kiu) vi loĝas. あなたの住んでいる街に行ってみたい。
  4. Mi ne trovas la manĝejon, al kie(=kien) miaj amikoj jam iris. 友達がもう行った食堂が分からない。
  5. Jen la loko, de kie venis la bruo. ほら、ここがあの騒音が来ている(騒音を起こしている)場所よ。
loĝ-i 住む / fam-a 有名な / park-o 公園 / sen-bru-e 静かな←無い+騒音 / mang-ej-o 食堂←食べる+場所 / jam[副小]すでに / lok-o 場所

先行詞が特定の場所を表す名詞の場合、kie の代わりに en kiu が使える場合もあります。

4. の al kie は kien と対格を使っても表現できます。この対格は方向や移動先を示すためのもので、目的語とは関係ありません。

kiam

kiam は時に関して説明する従属節を導きます。

patr-o 父 / re-ven-i 帰る←再び+来る / mal-fru-a 遅い←反対+早い / famili-an-o 家族の一人 / ski-i スキーをする / vintr-a 冬の / feri-o 休日 / neĝ-i 雪が降る / atend-i 待つ / tag-o 日 / al-ven-i 到着する←〜へ+来る
kiel

kiel は方法や様相など説明します。

kuir-i 料理を作る / sup-o スープ / tia-manier-e そんな+方法で

kiel の先行詞はほとんどの場合 tiel になります。

kiom

kiom は数量に関して説明する従属節を導きます。程度を説明することもあります。

labor-i 働く / ĝis[前]〜まで、〜までに / ricev-i 受け取る / mon-o 金(かね)

kiom の先行詞もほとんどの場合 tiom になります。

kial

kial は理由を表す従属節を導きますが、注意する点があります。kial を使って関係詞文を作るときは、先行詞に kaŭzo(原因・理由)や motivo(動機)などをとり、tial を使うことはほとんどありません。

下の例文の日本語の意味を表すとき、先行詞に tial を使うことはありません。[参照]。

for-ir-i 去る、いなくなる←離れた+行く

tial, kial 〜 の形にすると、従属節の kial 〜 が tial の内容を直接表すことにはなりません。この形だと「彼らは、私が去っていった理由(、その理由)で去っていった」言い換えると「彼らは、私が去っていったのと同じ理由で去っていった」という意味になり、「彼らは、私がいなくなったので去っていった」という意味になりません。

「彼らは私がいなくなったので去っていった」という意味を表すには、接続詞の ĉar(〜なので、なぜならば)や tial, ke(〜という理由で)を使います。ただ、この構造だともはや関係詞文とは言えません。

先行詞の省略

先行詞が ti- で始まる指示詞の場合、先行詞を省略することが可能な場合があり、しばしば先行詞を欠いた関係詞文を見かけます。特に kie, kiam による関係詞節の先行詞を欠いた形は、そのまま場所・時を表す普通の副詞節(状況語的従属節)になります。

kio
pren-i 手に取る、得る / forges-i 忘れる / rev-i 夢想する / jun-ec-o 若い頃、若さ←若い+特性を表す接尾辞

上の文の tion は具体的なものを指しているわけではないので省略することができます。つまり関係詞の kio に対応する指示詞のデフォルトは tio ということのようです。言葉は省けるものはできるだけ省くものなので、デフォルトは省略するということのようです。ただし個人的には慣れないうちは省略しないほうが無難ではないかと思います。なぜなら主節は SVO 構文なので動詞(forgesi)の直接目的語を残した方が(目印の -n の付いた語を残した方が)文の構造がはっきりするからです。しかし省略されているのをよく見かけます。

kiu
erar-i 誤る

この文は先行詞が関係詞の後ろに来ています。 語順を変えて Tiuj, kiuj ne faras, ne eraras. のようにすると関係詞文であることがはっきりします。1種の諺なのでリズムを気にしてこの順にしてあるのでしょう。tiu は具体的な個人を指すものではないので、省略することが可能です。tiuj は主節の主語ですし、あった方がリズムもよいので省略しない方が良いと思われますが、実際には省略されることもあるようです。

kia
  1. Mi aĉetis por vi veston [tian], kian vi verŝajne ŝatas. あなたが好きそうな服を買ってきてあげたよ。
  2. Tiu ĉi libro estas tia, kian oni ne povas trovi nuntempe. この本は今どき見つけることのできないようなものだ。
ver-ŝajn-e 多分・おそらく←本当+〜のような / trov-i 見つける

1. の文は tian を省略できます。2. の文の tia は省略できないように思えます。なぜなら主節は繋ぎ動詞による主語の叙述文ですが、繋ぎ動詞は常に叙述語を必要するからです。

kie
  1. Geknaboj*, ne ludu [tie,] kie estas danĝere. 子供達、危ないところで遊んではダメですよ。
  2. Kie fumo leviĝas, [tie] fajro troviĝas. 煙が昇るところには火がある。
  3. Metu medikamentojn tien, kie infanoj ne trovos ilin. 薬は子供達が見つけられないところに置きなさい。
ge-knab-o-j 子供達(両性+少年+複数形語尾)/ lud-i 遊ぶ / danĝer-e 危険な / fum-o 煙 / lev-iĝ-i 上がる、昇る←上げる+自動詞化 / fajr-o 火、火事 / trov-iĝ-i 存在する←見つける+自動詞化 / met-i 置く / medikament-o 薬 / infan-o 子供 / trov-i 見つける

* ge は男性女性が混じったペアや複数の人を指すので、必ず複数形語尾を付けます。

1. の文は特定の場所に言及していないので tie は省略できます。2. の文は先行詞が関係詞の後ろに来ています。Fajro troviĝas [tie], kie fumo leviĝas. と語順を変えると関係詞文であることがはっきりします。tie は具体的な場所を特定しているわけではないので省略することができます。一種の諺でしょうから、リズムを配慮して残す方が調子が良いかもしれません。3. は別の場所からどこかに移動して置くので tien と対格になっています。従属節の方は「その場所で見つける」ので対格にする必要がありません。この場合は tien を省略すべきではないと思われます。

kiam
for-est-i 不在である←離れて+居る / ĝust-e ちょうど / el-ir-i 出る←〜の中から+行く / gant-ist-o 手袋+職業人 / mort-i 死ぬ / viv-i 生きる、暮らす / sol-a 一人の、一人で、たった一つの / atend-i 待つ / ĝis[前]〜まで、〜までに / alven-i やって来る、到着する ← 〜に+来る

tiam も省略されることが多く、普通の時を表す副詞節として使われます。

最後の ĝis [tiam, ] kiam li alvenis の場合、ĝis 自体が「〜まで」という時を表す接続詞なので、 [tiam, ] kiam ごと省いて単に、ĝis li alvenis とするのが普通で、入れると冗長になります。

kie, kiam についての注意点

kie 従属節や kiam 従属節を使う文で、tie や tiam を省略すると、稀に二通りの意味に解釈できる場合があります。

sid-i 坐っている、腰掛けている / al-ven-i やって来る、到着する← 〜へ+来る

文脈で判断できることが多いでしょうが、下のように書くなどして正確に意味を伝えなければならないこともあるでしょう。

  1. Li demandis ŝin tie, kie ŝi sidis. 彼は彼女が坐っていたところで訊ねた。
  2. Li demandis ŝin pri tio, kie ŝi sidis. 彼は彼女がどこに坐っていたのか(ということについて)訊ねた。
  3. Li demandis ŝin tiam, kiam ŝi alvenis. 彼は彼女がやって来た時訊ねた。
  4. Li demandis ŝin pri tio, kiam ŝi alvenis. 彼は彼女に何時やって来たのか(ということについて)訊ねた。
    pri[前]〜ついて

1. と 3. は関係詞節で、2. と 4. は疑問詞が導く名詞節です。

kiel, kiom

kiel や kiom はほとんどの場合 tiel や tiom を先行詞にとります。様相や方法、分量を表すとき、tiel や tiom は省略されることが多いです。ただし、tiel, kiel や tiom, kiom の形は後に出てくる、等級比較表現(〜と同じくらい〜である)として程度を表すこともあるので、その場合は省略しない方がよいと思われます。下は省略可能な場合の例です。

grimp-i よじ登る / simio 猿
kial

kial 関係節の場合、そもそも tial が先行詞になることはほとんどないことについては、すでに書きました。

kiel の慣用語法

kiel は他の関係詞とちがって論理的とは言い難い使い方をすることがあります。概ね英語の as や like に相当すると言えるのではないでしょうか。

役割や機能などを表します。

gvid-ant-o 指導者←指導する+している人 / ŝat-okup-o 好きな+仕事 / ŝat-i 好む、価値を認める

例えや典型を挙げるなどして、ある内容全体を漠然と指示します。(tiel, kiel の省略形と捉えられる場合もあるでしょう)

sub-e 下に(で)/ barakt-i もがく / last-a 最後の、最近の / fiŝ-o 魚 / okul-o 目 / blu-a 青い / ĉiel-o 空

非省略文なら本来は他の関係詞を使うところを、省略表現で kiel が使われることがあります。しばしば指示形容詞的な意味で使われます。

hund-o 犬 / por[前]〜とって / famili-an-o 家族←家族+構成員 / vest-i (服を)着せる

比較

比較級、最上級、等級などの比較表現を見ていきます。エスペラントでは英語の bigger とか biggest のように比較表現のために形容詞や副詞の語形が変化するということはありません。

比較級

granda(大きい)の比較級は pli granda になります。multe(多く)の比較級は pli multe になります。このように比較級を作るためには、形容詞や副詞の前に常に pli を置きます。比較対象には接続詞の ol(〜より) や 前置詞の el(〜のうちで) を使います。pli が直接動詞に係る場合もあります。

  1. Oro estas kara, sed diamanto estas pli kara. 金は高価だがダイヤモンドはもっと高価だ。
  2. Rato estas pli granda, ol muso. ドブネズミはハツカネズミより大きい。
  3. Du homoj povas pli multe fari, ol unu. 二人は一人より多く為すことができる。
  4. Tiu ĉi pomo estas la pli bongusta, ol tiu pomo. このりんごはあのリンゴよりおいしい。
or-o 金(きん) / diamant-o ダイヤモンド / rat-o ドブネズミ / du 2、2つの、2人の / pom-o りんご / bon-gust-a おいしい←良い+味

例文は比較対象に接続詞の ol(〜より)が使われています。4. は厳密に2つのものを較べていますが、このような比較だと一方が特定のものに限定されるので la pli 〜 と冠詞を付けます。

比較対象に前置詞の el(〜のうちで)を使うこともあります。下のような例でも pli 〜 に冠詞を付けるべきでしょう。

aŭto 自動車 / el [前置詞]〜の内から(から取り出す) / nova 新しい

ol のはたらきについて

  1. Ŝi lernas la anglan (lingvon) pli diligente, ol mi. 彼女は私より英語を一生懸命学習する。
  2. Ŝi lernas la anglan pli diligente, ol ŝia fratino. 彼女は彼女の姉(妹)より英語を一生懸命学習する。
  3. Ŝi lernas la anglan pli diligente, ol la hispanan. 彼女はスペイン語より英語をより一生懸命学習する。
lern-i 学ぶ / angl-a 英国の、英国人の / lingv-o 言語 / diligent-e 勤勉に / hisapan-a スペインの、スペイン人の

副詞の比較でも pli を使います。1. の例文で英語のことを la anglan (lingvon) と書きましたが、括弧で括られた lingvon は省略できるという意味です。習慣的に言語を指すときは、冠詞を付けて lingvo(言葉) を省略します。以下 lingvo は省略します。

1. の ol mi は前置詞句のように見えますが、接続詞 ol が導く従属節です。ol 従属節はしばしば文脈から内容が明らかな語句(主語とか目的語とかなどの文の要素)を省略します。実は ol mi の mi は、この従属節の主語です。つまりこの従属節は主語以外の文の要素が省略されています。この比較文は下の文の省略形です。

Ŝi lernas la anglan pli diligente, ol mi (lernas la anglan diligente). 彼女は、私(が英語を一生懸命英語を勉強する)よりも、より一生懸命英語を勉強する。

2. の ol ŝia fratino は自分の姉(妹)と比較しているので ol sia fratino と再帰代名詞を使ってしまいそうですが、ŝia でなければなりません。ŝia fratino は ol ŝia fratino という従属節の主語なので再帰代名詞を使うことができません(人称代名詞再帰代名詞の項を参照)。この文は下の文の省略表現です。

Ŝi lernas la anglan pli diligente, ol ŝia fratino (lernas la anglan diligente). 彼女は、彼女の姉(妹)(が英語を一生懸命学習する)よりも、より一生懸命英語を勉強する。

3. は ol la hispanan と ol の後ろが対格になっています。目的語を比較しているので ol の後を対格にします。ol の後ろの名詞を対格にできるのは ol が前置詞ではなく接続詞だからです。もし ol が前置詞なら、目的語を比較するからといって、対格にすることは文法規則上できません。この文は下の文の省略表現です。

Ŝi lernas la anglan pli diligente, ol (ŝi lernas) la hispanan (diligente). 彼女は、スペイン語(を一生懸命学習する)よりも英語をより一生懸命学習する。

典型的な比較表現とは限りませんが、行為の先後や優先度などの比較では、動詞を比較することになる場合があります。例えば「〜する(より)前に」「〜するより〜する方がよい」のような文です。この際、比較対象の動詞が文の主語と同じ場合、ol 従属節の動詞に不定詞を使うことがあります。pli を使わない非定型的な文の場合もあります。(なぜ従属節で不定詞が使えるのかよく理解できていない。ol が前置詞として使われているのだろうか?)

ŝatat-i 好む、価値を認める / toler-i 辛抱する,耐え忍ぶ / prefer-e むしろ、好んで、なるべく / perfid-i 裏切る / for-ir-i 出かける←離れて+行く / ŝlos-i 鍵をかける / pord-o ドア

劣等比較級には pli の代わりに malpli を使います。

pan-o パン / freŝ-a 新鮮な / bicikl-o 自転車 / kur-i 走る

比較表現ではありませんが、plimulto(過半数)といったよく使われる表現(pli を使った合成語)があります。

loĝ-ant-ar-o 住民←住む+している+集合 / aprob-i 賛成する、是認する

pli kaj pli, pli aŭ malpli, pli-malpli といった慣用句や合成語があります。

pli kaj pli 段々と、ますます / pli aŭ malpli, pli-malpli 多かれ少なかれ、多少とも、だいたい、かれこれ
最上級

最上級は形容詞や副詞の前に plej を置きます。比較の範囲には前置詞 en(〜の中で) を、比較対象(〜のうちで)には前置詞 el を使います。

mal-jun-a 年長の、年老いた / frat-o 兄まはた弟 / diligent-e まじめに、勤勉に / klas-o クラス、階級、生物学上の綱

通常、最上級の形容詞には冠詞 la を付け、la plej 〜 とします。ただし常に plej に la を付けなくてはならないという訳でもありません。

bon-gust-a 美味しい←良い+味

この場合は具体的に何かと比較しているわけではなく、「最高に」「これ以上ないほど」といったような意味合いで最大限に強調しているだけです。

「2番目に最も」と言うときは、la due plej 〜 もしくは la dua plej 〜 とします。「2番目に」は直接名詞に係るのではなく「最も」にかかるので、前者の方が合理的に思えますが、どうやら一部の国の人は後者の表現を好むようです。

kur-ant-o 走る人←走る+〜している人

劣等最上級は plej の代わりに malplej を使います。

taŭg-a 適している、有用な

比較表現ではありませんが、plej を使った合成語や慣用句があります。

plejmulto (大多数)といった表現がよく使われます。

aprob-i 賛成する、是認する

kiel eble plej, plejeble, laŭeble plej (できるだけ)といった慣用句や合成語があります。

等級

等級は、tiel 〜, kiel 〜 (〜のように、そのように〜)で表します。

mal-mol-a 固い←反対+柔らかい

同等さを強調する意味で same kiel, samkiel などとすることもあります。

  1. La knabino tiel malafabla, kiel ŝia patrino. その女の子は自分のお母さんと同じぐらい愛想が悪い。
  2. Mia onklino tiel amas ŝin, kiel sian filinon. 私のおばは彼女を自分の娘と同じように愛しています。
mal-afabl-a 愛想が悪い←反対+愛想のよい / onkl-in-o 叔母、伯母

1. の kiel ŝia patrino は kiel sia patrino と再帰代名詞を使ってしまいそうですが、ŝia でなければなりません。これは先に説明した ol 〜 で再帰代名詞が使えないのと同じ理由で、kiel が導く従属節の主語に再帰代名詞を使うことはできないからです。1. は下の文の省略表現です。

La knabino tiel malafabla, kiel ŝia patrino (estas malafabla). その女の子は彼女のお母さん(が愛想が悪いの)と同じぐらい愛想が悪い。

2. は kiel sian filinon と kiel の後ろが対格になっています。これは目的語を比較しているからです。また、sian filinon と再帰代名詞が使われています。比較対象が kiel が導く従属節の主語ではないので使うことが可能です。2. は下の文の省略表現です。

Mia onklino tiel amas ŝin, kiel (ŝi amas) sian filinon. 私のおばは(彼女が)自分の娘(を愛するの)と同じように彼女を愛しています。

kiel 節や ol 節の再帰代名詞についてはコチラにまとめています

tiel 〜, kiel 〜 以外に、程度や数量について比較する場合、tiom (da) 〜, kiom (da) 〜 が使えます。前置詞 da の使い方については、[数と前置詞 da]にまとめています。

  1. La knabo laboris tiom multe, kiom (multe) lia patro laboras. その男の子は父親と同じくらい沢山働きました。
  2. Mi havas tiom multe da libroj, kiom (da libroj) vi havas. 私はあなたが持っているのと同じぐらいの(数の)本を持っています。
  3. Kiom da kapoj, tiom da opinioj (ekzistas). 頭の数だけ意見(がある)。
labor-i 働く / hav-i 持っている / kap-o 頭 / opini-o 考え、見解

3. は諺なので調子を整えるために述語動詞 (ekzistas など) を省略しています。文法的には文に述語動詞は必須なので、通常の文なら少なくとも主節の ekzistas は必要なところです。

等級比較はこのように tiel, kiel、tiom (da), kiom (da) などの関係副詞文と同じ構造になります。

再帰代名詞

再帰代名詞は主語と同一の人物・同一の事物を指します。したがって特殊な場合を除いて主語の中では使われることはありません。このことは人称代名詞の項で説明しました。単純な文ではこの原則を知っていれば済むのですが、実際にはなかなか手こずります。その理由は、複文などでは節ごとに独立した主語が複数存在し、再帰代名詞はそれを含んでいる節の主語を指す、また修飾句の中にある再帰代名詞はその句の範囲内の意味上の主語を指す、といったことがあるからです。

例えば日本語で、「彼女は自分を描いている男に話しかけた」という文の全体の主語(主節の主語)は「彼女」ですが、「自分を」が「彼女」のことを言っているのか「男」のことを言っているのか曖昧です。この文をエスペラントの複文(関係詞文)で表してみます。

  1. Ŝi alparolis al la viro, kiu pentras sin. 彼女は自分を描いている男に話しかけた。
  2. Ŝi alparolis al la viro, kiu pentras ŝin. 彼女は彼女を描いている男に話しかけた。
al-parol-i 話しかける←〜へ+話す
再帰代名詞と3人称代名詞を使った2通りの文ができます。関係詞節の主語 kiu は 先行詞の la viro のことです。再帰代名詞は「再帰代名詞を含んでいる節の主語を指す」ので 1. の文の sin は la viro を指します。2. の ŝin は la viro からみた第三者の女性、つまり文の全体の主語の Ŝi を指すことになります。また、同じ内容の文を修飾句を使って表すと、
  1. Ŝi alparolis al la viro pentranta sin. 彼女は自分を描いている男に話しかけた。
  2. Ŝi alparolis al la viro pentranta ŝin. 彼女は彼女を描いている男に話しかけた。
pentr-ant-a[分詞形容詞] 描いている←描く+〜している
のように表せます。pentranta sin という修飾句は la viro に係るので、この句の意味上の主語(pentri の行為者)は la viro です。再帰代名詞は「修飾句内の意味上の主語を指す」ので 1. の文の sin は la viro を指します。2. の ŝin は la viro からみた第三者の女性、つまり文全体(主節)の主語の Ŝi を指すことになります。

この他にもいくつか注意点があるので、少々混乱するかもしれないし、例文が少し難しいですが、別ページにまとめてみました。

目的語の叙述文 -- 目的語が不定詞句や従属節の場合

主語の叙述文つまり SVC の構文では、 S が不定詞句や従属節なら C は副詞になります。では目的語の叙述文つまり SVOC の構文でも副詞でよいのか、ということについてです。少しややこしいのでコチラにまとめています

接続詞

等位接続詞

等位接続詞は文法上対等の関係にある「 語と語 」 「 句と句 」 「 節と節 」 を結び付けます。等位接続詞には、kaj(〜と、そして)、aŭ(または、さもなくば)、sed(〜ではなく、しかし)、nek(〜でもない、〜もまた〜ない)の4つがあります。

krajon-o 鉛筆 / kajer-o ノート / plum-o ペン

park-o 公園 / lern-o 学習 / amuz-o 楽しみ / naĝ-i 泳ぐ / akv-o 水 / flug-i 飛ぶ / aer-o 空気

bird-o 鳥 / vizit-i 訪ねる / problem-o 問題 / solv-i 解く / dorm-i眠る

kaj, aŭ, nek は、kaj 〜 kaj 〜、aŭ 〜 aŭ 〜、nek 〜 nek 〜 のように繰り返す言い方ができます。

labor-i 働く / koler-iĝ-i 怒り出す←koreli 怒っている / ek-plor-i 泣き出す←始める+泣く / fum-i タバコを吸う(他動詞)、煙が出る(自動詞)/ drink-i 酒を飲む

kaj と aŭ は「そうすれば」「さもなくば」という意味でも使われます。

pen-i 努力する・苦労する / sukces-i 成功する / plor-i 泣く / plu さらに、もっと、引き続き / bat-i ぶつ・叩く

従属接続詞

従属接続詞は従属節を導きますが、従属節は主節と対等ではなく、主節の一部を構成する要素としてはたらきます。従属接続詞には下のようなものがあります。

apenaŭ
~するやいなや(時間的制約)
dum
~する間に(時間的制約)、〜する一方で(対比)
ĝis
~するまで、〜するまでに(時間的制約)、〜まで(場所)
ĉar
~なので(理由)
kvankam
~だけれども、〜にもかかわらず(逆説)、malgraŭ ke と同じ(malgraŭ は前置詞)
kvazaŭ
まるで~であるかのように(類比)
ol
〜よりも(ekz. pli 〜 ol 〜)、〜と較べて(ekz. alia ol, antaŭ ol)(比較)
se
もし~なら(条件・仮定)
ke
〜ということ(同格)
ĉu
~かどうか(同格)
tondr-i 雷鳴する(無主語)/ ek-pluv-i 雨が降り始める(無主語) / infan-o 幼児 / dorm-i 眠る / pian-o ピアノ / kontent-a 満足している / lern-i 学ぶ / prakt-i 実践する / pov-i できる / atend-i 待つ / reven-i 帰る / hieraŭ [小辞]昨日 / mal-san-a 不健康な / ir-i 行く / labor-ej-o 仕事場 / vid-i 見る、目に入る / scen-o シーン / golf-o ゴルフ / sci-ig-i 知らせる / kun-sid-o 会合 / hav-i 持っている / dub-o 疑念 / ver-a 本当の

*1 eĉ は se とともに eĉ se, se eĉ のように使われ、「例え〜であろうとも」という意味を表す。

数と前置詞 da

da は数量に関わる前置詞です。準備として数に関することをザッと。

数詞と数名詞

数を表すには 0 〜 9, 十, 百, 千 の数詞と千進単位の(千の階乗)の数名詞を使います。ここでは数量を表す単語のうち語根のまま使われる小辞を数詞 numeralo と呼び、千進桁を表す名詞を数名詞と呼ぶことにしました。

数詞

数名詞

実は数名詞は、辞書や文法書によって表し方が異なるようです。[参照]。前記参照サイトには一番右側が推奨されていると書かれていますが、誰が推奨しているのか分かりません。アカデミオの公式語根には milion(10002) と miliard(10003)が登録されているだけです。10004以上の数名詞については公式語根はありません。-ilion- や -iliard- といった接尾辞っぽいものも見られますが、これも公式の接尾辞ではありません。なんだか頼りないですが、これ以上のことははっきり言えないようです。大多数が支持する表記がいずれ定着するというのが自然な流れだと思うのですが、巨大な数字を扱う機会が少ないこともあってか、どの表記にするか確立していないようです。このあたりのことについてはあまり良く知らないのでご教示いただけると有難いです。

科学用語レベルのマクロやミクロの数字についても省略しました。[参照]

999,999 までの数字は、数詞を単純に繋げて表します。

al-iĝ-int-o 参加者←加入する+完了+人 / eno 円 / loĝ-ant-o 住民・住人

tricent (300), tricent mil (300,000), dudek kvar (24) のように cent と dek はスペースを入れないで表します。1桁、千の桁、千の階乗の桁はスペースを入れて表します。

1,000,000 以上の数は数詞と数名詞を組み合わせて表します。数名詞は名詞ですから必要に応じて複数形にします。

ちなみに、3桁ごとの区切り記号や小数点も各国で違っているようですが、これもどの方式が公式に採用されているのかはっきりしません。例えば「小数点」を Plena Ilustrita Vortaro という辞書で調べると、decimala punkto(小数点) decimala komo(少数コンマ)の両方が載っています。

日本・米国 123,456.789
ドイツ 123.456,789
フランス 123 456,789
数詞と語尾

数詞に名詞語尾を付けて名詞として使うこともあります。

long-ec-o 長さ

数詞に形容詞語尾や副詞語尾をつけると序数として使えます。形容詞で使うときは la を付けます。

mart-o 3月 / hor-o 〜時、1時間 / al-ven-i 到着する / unu-e 第1に、まず
前置詞 da

液体、気体、粒子状のものなど1つ2つと数えられない名詞(不加算名詞)は容れ物などを使って数量を表すことができます。この場合、前置詞 da を使います。可算名詞であっても、群れなどの集合名詞を使って数量を表すことができます。この場合も da を使います。

tas-o カップ / botel-o 瓶 / glas-o グラス / pec-o 切片 / mas-o 塊 / amas-o 群れ / kvar 4 / kilogram-o キログラム / akv-o 水 / kvin 5 / metr-o メートル / ŝtof-o 布 / kelk-a いくつかの / cent-o 10(名詞)/ jar-o 年 / dek-du-o ダース krajon-o 鉛筆 / mont-o 山 / or-o 黄金

上の例のように、「〜 + da + 名詞」 の 〜 の部分には普通、容れ物、切片、塊、群れ、集合名詞、単位、数量名詞(数詞に -o を付けたもの)などの名詞が来ます。ときに比喩的に使える名詞が来ることもあります。

「〜 + da + 名詞」の形をした句が目的語のとき、da の後ろの名詞は対格にしません。〜 の部分の名詞を対格にします。

botel-o 瓶 / bier-o ビール / gajn-i 勝ち取る、(運や偶然によって)手に入れる / mont-o 山 / or-o 金(きん)

「〜 + da + 名詞」 の 〜 の部分に、multe, kelke, sufiĉe などの副詞、iom, tiom などの副詞的小辞が来ることがあります。このときその副詞や副詞的小辞は名詞のように扱われます。つまり「数量を表す副詞・副詞的小辞 + da + 名詞」の形で主語や目的語、前置詞の目的語になります。ただしこの形の句が目的語であっても数量を表す副詞や副詞的小辞を対格にするということはありません。

mult-e[副]多く / kelk-e[副] いくらか / mal-mult-e[副] 少し / kelk-e[副]いくらか / mon-o お金 / tiom[副小]それほどの数量の / laŭd-o 賞賛 / rice-v-i 受ける / sufiĉ-e[副]十分な / klar-ig-i 説明する←明らかな+他動詞化 / mult-e[副]多く / vort-o 単語、言葉

なんだか話を戻すようですが、液体などは1つ2つと数えられないと書きました。しかし biero(ビール)とか vino(ワイン)を「種類」という点に着目すると実は複数形を使って数えることができます。

met-i 置く / sur[前]〜の上に / mult-a 多くの / vin-o ワイン

前置詞 je と対格

je はピッタリくる前置詞が無いとき汎用的に使える前置詞で、「汎用前置詞」とか「融通前置詞」と呼ばれます。長い年月をかけて je を使う場面は徐々に固定してきていますが、それでもあると便利です。

時点、回数、度量

ellitiĝi 起床する←中から+寝床+自動詞化 / hor-o 時刻、時間 / foj-o 回 / metr-o メートル / ŝtof-o 布地 / distanc-a 離れた / buso-halt-ej-o バス停←バス+止まる+場所 / pak-aĵ-o 荷物←梱包する+物 / pez-a 重い / kilogram-o キログラム

je を使うその他の表現

sen-ig-i 無くす、取り去る / arb-o 木 / foli-o 葉 / riĉ-a 豊かな / sopir-i 憧れる / bel-o 美 / kred-i 信じる / mal-san-iĝ-i 病気になる←反対+健康な+なる / sufer-i[自]苦しむ / kap-dolor-o 頭痛 / kontent-a 満足している / sort-o 運、巡り合わせ / okup-iĝ-i 専念している / kudr-ad-o 縫製 / brust-o 胸 / kapt-i 掴む、掴まえる / brak-o 腕

je 前置詞句は対格で言い換えることができます。例えば je la sepa horo(7時に) は la sepan horon と言い換えることができます。この対格は目的語とは関係ありません。下の例文に出て来る動詞はどちらも自動詞なので文中に目的語はありませんが、対格に語形変化した名詞があります。

sufer-i 苦しむ / kap-dolor-o 頭痛

冠詞

日本人にとって冠詞を使いこなすのは難しいことですが、実はエスペラントの原典といってもよい「エスペランの基礎」という本に下のように書かれています。

La personoj, kiuj ne komprenas la uzadon de la artikolo (ekzemple rusoj aŭ poloj, kiuj ne scias alian lingvon krom sia propra), povas en la unua tempo tute ne uzi la artikolon, ĉar ĝi estas oportuna sed ne necesa.

冠詞の使い方を理解できない人たち(例えば自国語以外の他の言語を知らないロシア人やポーランド人)は、始めのうちは冠詞を全く使わなくても構いません。なぜならそれは便利ですが必要ではないからです。

学習書や学習サイトでこのことに触れていないものが多いように思われます。しかし「エスペランの基礎」にこう書かれているのですから、だれでも承知しておくべきだと思うので書いておきます。

エスペラントの冠詞はがんじがらめの規則ではなく、物事を正確に伝えたり、あるいは冗長な言い回し、非効率な繰り返しをさけるるための便利な道具として使えばよい、という意味に受け取るべきではないかと思います。

私もうまく使えてはいないのですが、冠詞を使う場面を挙げてみます。

総称、典型、種類

名詞を省略する代わりに付ける。文脈や習慣から暗黙に了解できる名詞を省略したときに冠詞を付ける。

副詞的小辞

単語の中には語尾を付けないで語根のまま使われるものがあります。接続詞、前置詞、数詞などがそうです。こういった語はまとめて partikulo と呼ばれます。このまとめでは「小辞」と訳すことにしました。小辞の中には副詞的にはたらくものがあります。それを「副詞的小辞」と呼ぶことにします。学習書や学習サイトでは「本来副詞」「原形副詞」「語根副詞」などと呼ばれることが多いです。

副詞的小辞は、名詞も含めていろいろな語句に係って、それらに「強調」「否定」「疑問」「比較」「制限」「完全さ/不完全さ」「並立/包含」「無差別」... などといった様々な機能的な意味を持たせます。「機能的な意味」については「名詞に係るのになぜ副詞なのか?」で考察してみました。他に、時間、行為や出来事との時間的関係、時間的または空間的遠近などを示すものも少数あります。

下に一覧を示します。中には接続詞や間投詞としても使われるものがあります。ambaŭ は副詞でなく限定詞とする立場もあります。

例文を添えて少し詳しくコチラにまとめました。

副詞的小辞の一覧

空間・時間に関係するもの

ĉi
近いことを示す
for
離れている、不在の、消失した;消えろ、立ち去れ(間投)
ankoraŭ
今もなお;まだ;ankoraŭ ne 未だ
baldaŭ
まもなく
hieraŭ
昨日
hodiaŭ
今日
morgaŭ
明日
jam
すでに、もう
ĵus
たった今しがた、〜したばかり
nun
今、今や;さあ、今こそ(間投)
plu
さらに、引き続き
tuj
直ちに(時間);すぐ近く(場所)

その他の副詞的小辞

ajn
なんでも、どんな〜であろうと(無差別);たとえ何であろうと、たとえどんな〜であろうと(譲歩)
almenaŭ
すくなくとも;せめて
ankaŭ
~もまた
apenaŭ
かろうじて;するや否や(接)
do
それなら、だったら;では、じゃあ(間投)
~でさえ
ja
まさに、確かに、本当に
jen
ここに、そのとき;ほら(間投)
kvazaŭ
あたかも;まるで~のように(接)
mem
~自身
ne
〜ない(否定);いいえ(間投)
nur
たった・~だけ;ただの、〜に過ぎない;まだ、やっと(時間)
plej
最も(比較最上級);malplej(劣等最上級)
pli
より(比較級);malpli(劣等比較級)
preskaŭ
ほとんど(少し足りない);preskaŭ ne ほとんど〜ない
tamen
とは言え、それでいてなお、にも関わらず
tre
とても
tro
あまりにも、〜過ぎる
ĉu
〜か(疑問);〜かどうか(接)
ju pli ~ des pli 〜
~であればあるほどいっそう〜である(ju malpli 〜 des malpli 〜)

限定詞と解釈されるもの

ambaŭ
その2つとも、その二人とも
名詞に係るのになぜ副詞なのか?

中級レベルの者の考察なので適当に読み飛ばしてください。

副詞は名詞以外の語句を修飾します。しかし一部の副詞は名詞に係ることがあります。ここでいう副詞の意味は語尾が -e であるとかといったことと関係ありません。はたらきについての話です。

nur[副小]〜だけ / kon-i 知っている /eĉ[副小]〜さえ、〜すら

例文の nur と eĉ は明らかに名詞の the boy に係りますが、形容詞ではなく副詞ということになっています。なぜ副詞なのかということについて考えてみます。

形容詞が名詞に係るときは、その名詞の性質や状態を説明します。例えば「赤い花」とか「静かな海」とかです。nur や eĉ は名詞の性質や状態を説明しているわけではありません。これらは konas tion という述部が la knabo に限って言えるかどうか、あるいは la knabo も含めて他の人についても言えるかどうかを表すためのものです。あるいは eĉ は la knabo から他の誰かを思い起こさせるきっかけにもなっています。 つまりこれらは係っている名詞の性質や状態を説明をするのでなく、名詞に何らかの機能的な意味を付与しており、その意味をからめたものが文中の他の要素と関係を持つようになるといってよさそうです。この文の nur や eĉ について言えば、名詞が「制限」とか「含有」あるいは「類推」といった機能的な意味をともなって述部の konas it と関係を持つことになるということです。(う〜んもっとすっきり説明できないものか ^^; )

こういった「機能的な意味を付与する」語は、しばしば名詞に限らず動詞にも係ります。

動詞にも係ることがあるのだから、品詞としては副詞の範疇に含まれるということになります。

ところでこういった「機能的な意味を付与する」語は機能語とも呼ばれます。例えば機能語の1種である接続詞は、そもそも文と文を繋ぐという機能を持っていますが、同時に個々の接続詞が、連結・順接(kaj)、対立・逆説(sed)、理由(ĉar)、類比(kvazaŭ)、譲歩( kvankam)、比較(ol) ... といった機能的な意味を持っています。こういった機能的な意味は限られていますから、機能語は名詞や動詞のように無限に必要ということはありません(無限は言い過ぎですが)。これは語尾が不要ということに繋がってきます。つまりこういった副詞は語根のまま使われる小辞として存在することになります。実際こういったはたらきをする語は ĝuste(ちょうど)とか sole(〜だけ)など少数のものを除いてほとんどすべて語尾を持たない小辞です。ちなみに名詞に係る副詞は日本語の副助詞(も、だけ、こそ、ばかり、さえ、...)に当たるものが多いです。

造語法 -- 接辞

よく整理された、接頭辞・接尾辞・語尾はエスペラントの優れた点のひとつだと思われます。少ない語根から多くの単語が生み出されているので、1つの単語を知ればそれに付随して関連する単語群を同時に習得することができます。また、エスペラントの使用者は新たに合成語を作り出すことが許されています。

以下未稿。コチラに接辞の一覧をまとめています。


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